セールスオペレーション(Sales Ops)とは?その役割と注意点、導入ステップまで解説

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現在、米国を中心にセールスオペレーション(以下 Sales Ops )が注目されており、企業での導入も進んでいます。Sales Ops とは、データやテクノロジー、ツールとそれを活用できる人材を集め、データ分析から営業支援までを行うことで営業活動における生産性を向上させ、営業チームの成果を最大化させるための役割のことです。

日本ではまだマイナーなので、初めて聞いたという方も多いのではないでしょうか。しかし、今後の日本での導入も進んでいくと思われます。導入するにあたり、Sales Ops の役割や重要性の他に、成功させるために具体的にすべきことについて知っておくことも重要です。

そこで、本記事では Sales Ops の役割や重要視される理由、導入する際に注目すべきポイントを解説します。

セールスオペレーションとは

まず、セールスオペレーションとは何かについて、その現状と注目されている背景を合わせて解説します。

セールスオペレーションとは

セールスオペレーション(以下 Sales Ops )は、システムやテクノロジー、データを用いて、顧客情報の管理やデータの分析を行います。

それらを元に戦略立案や営業支援を行うことで営業活動における生産性を向上させ、組織全体の成果を最大化させるための役割です。

Sales Ops は、日本企業における営業推進や営業企画のようなイメージで、営業チームを包括的に支援する役割を担います。

日本での知名度はまだ低いですが、アメリカでは注目度が高く、導入も進んでいます。

米国での関心が高まる Sales Ops

1970年代にアメリカで設立された Sales Ops が現在になって関心が高まってきており、「 Sales Ops」という独立した部門を立ち上げる企業も増加しています。

米国の Miller Heiman Group 社 のリサーチ部門である、 CSO Insights が2018年に行った”

“2018 Sales Operations Optimization Study” という Sales Ops の最適化に関する調査では、すでに Sales Ops の専門チームを立ち上げている企業は63.9%、Sales Ops が複数のチームにまたがっている企業が36.1%という結果でした。

さらに、このうち7.5%の企業は今後12ヶ月以内に設置する予定であると回答しています。

Sales Ops の専門チーム設置について、業界横断的に見ると、テクノロジー業界ではすでに80.5%の組織が設置しているという結果も出ています。

Sales Ops の関心が高まった背景にある3つのトレンド

現在 Sales Ops への関心が高まっている背景には主に3つのトレンドがあり、今後導入するにあたり、そのトレンドを理解しておくことが大切です。

テクノロジー

近年、営業活動においてデータを活用するテクノロジーへの関心が高まっています。

テクノロジーの例として、CRM や SFA、MA などがあり、これらのツールを用いることで、データを集約、構造化し、リアルタイムに活用可能な状態で蓄積することができます。さらに、蓄積されたデータを分析し、営業担当者に対して次のアクションとして最適な案件や見込み度の高い顧客の提示や、営業責任者に対して意思決定の支援を行うこともできます。

また、フィールドセールスからインサイドセールスへの営業スタイルの変化に伴い、データ分析だけではなく、電子メールの送信やリード管理など反復的な作業の自動化という点においてもテクノロジーが重要視されています。

データ分析

先ほど挙げた CRM や SFA、MA などのテクノロジーはデータを自動で分析できます。

分析されたデータを用いて、売上予測やターゲティング、パイプライン管理を行い、営業チームのリーダーはこれらの情報を元に戦略的な意思決定を行うことができます。

営業オペレーション

営業オペレーションは、データを収集し、テクノロジーにより良い判断をさせるための支援という役割を持っており、具体的には、Sales Ops が収集するデータ項目、構造、タイミング、入力フローやルールなどを決めます。

近年、営業・マーケティング・カスタマーサクセスの3つの部門を連携させることが重要視されるようになってきています。

その理由として、LTV (顧客生涯価値)を向上させるためには、一貫して良い顧客対応が取れる体制が重要ということが挙げられます。

さらに、売上や収益を向上させるためには、顧客が自社の商品やサービスに満足していて、継続的に購入してくれることが必要です。

そして、一貫した顧客対応の実現には、正確性が重要であり、リアルタイムかつ顧客起点のデータ入力と部門間での共有がされている状態が理想的です。

米国の Sales Enablemant PRO 社 が2022年に複数の国や業界を対象に行った調査レポート”State of Sales Enablement Report 2022” によるとセールスイネーブルメントとセールスオペレーションを連携した時、データを極めて効果的に活用した場合、営業における成果が期待値を上回る可能性が57%高まるとしています。

さらに、この調査レポートでは、セールスイネーブルメントが部門横断的なチームと協力することの重要性を主張しています。そして、この協力関係の最適化には、データ主導の考え方が必要です。

その例として、セールスイネーブルメント部門がデータを効果的に活用することで、マーケティングオペレーションとの競業では85%、Sales Opsとの協業では57%期待以上の成果を上げる可能性が高まるということが示されています。

す。

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営業活動を最適化するためのアプローチが異なるセールスイネーブルメント

セールスオペレーション(Sales Ops) と類似する言葉として、「セールスイネーブルメント(Sales Enablement)が挙げられます。

Sales Ops を導入するにあたり、セールスイネーブルメントの特徴や Sales Ops との違いも理解しておきましょう。

セールスイネーブルメントとは?

セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とは、営業チームがより多くの取引を成立させるための、テクノロジーを活用した営業の最適化のことを指します。

このテクノロジーには、製品やサービスを顧客に効果的に販売するためのコンテンツやツール、データなどが含まれ、より多くの見込み客や視聴者を顧客に変えるために役立つものである必要があります。

セールスイネーブルメントでできること

セールスイネーブルメントができることは大きく分けて2つあります。

1つ目は営業スキルの標準化です。

担当者間で営業スキルに差が生まれてしまうのは、情報が共有、可視化されず、営業活動が属人化している状態であるためです。

この状態が続くと、売上予測を出すことや営業責任者が意思決定を下すことが困難になり、営業計画や営業プロセスの構築が行えなくなることがあります。

このような状況に対して、CRM や SFA などの顧客・営業管理ツールを用いることで、顧客や取引に関する情報を集約、分析することができます。

これにより、顧客とのコミュニケーションの目的や手段、方法を組織内で共有することが可能になったことで、営業担当者のスキルを底上げし、標準的な営業担当者を増加させることができます。

2つ目が、営業活動の仕組み化です。

営業成績のいい営業担当者の過去の顧客情報や取引履歴などを分析することで、効果的な営業プロセスの傾向を見つけ、そのノウハウを誰もが実行可能な形で仕組み化することができます。

この仕組み化されたノウハウを組織内で共有し、営業担当者に実行させることで、個人の営業成績と営業効率が改善し、全体的な生産性の向上にも繋がります。

さらに、このノウハウを新人教育に使用することで、成果の出せる人材を今までより早く育成できるようになります。

セールスイネーブルメントとセールスオペレーション(Sales Ops)の違い

一見似ているように見えるセールスイネーブルメントとセールスオペレーションですが、その事業と関わる範囲が異なります。

セールスイネーブルメントは、CRM や SFA、MA などのテクノロジーを用いて、顧客情報や取引履歴などのデータを蓄積、分析します。そして、そのデータを元に営業活動を仕組み化することで、個人の営業スキルの向上や標準化に繋げます。

これにより、組織全体のパフォーマンスを向上させ、効率的かつ効果的な成約、売上の向上だけでなく、顧客満足度の向上も期待できます。

さらに、仕組み化された営業ノウハウを新人研修に利用することもできます。

このようにセールスイネーブルメントは、営業部門だけでなくマーケティングや人事など広い範囲の事業に貢献します。

一方で、セールスオペレーションは、テクノロジーやデータを活用することにより、営業活動全体の生産性を向上させ、営業チームの成果を最大化することができます。

具体的には、CRM や SFA などのツールを用いて顧客の個人情報や行動データ、取引履歴を管理し、それらの情報を活用した営業活動により顧客満足度を向上させることで、解約率の低下につなげることができます。

また、AI を活用した最新のツールを用いてデータを分析し、営業担当者に対して見込み度の高い顧客の提案を行ったり、営業責任者の意思決定をサポートしたりすることも可能です。

このように、セールスオペレーションは営業部門に対してテクノロジーやデータを活用して、営業活動全体の生産性を向上させることを目的としています。

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Sales Ops ができることを役割別に解説

Sales Ops の4つの役割

では、具体的に Sales Ops は何ができるのでしょうか。

構造や機能は企業によって異なりますが、Sales Ops を構成する主な役割には、ストラテジーテクノロジーオペレーションパフォーマンスの4つがあります。

ストラテジー

営業組織のビジョンを定義し、それらの目標を達成するための戦略の立案から実行を行います。

具体的な機能には以下のようなものがあります。

  • 営業プロセスの最適化
  • セールステックツール導入と営業施策の評価
  • 販売領域を定め、担当エリアを割り振る
  • 計画と目標設定
  • データの分析
  • 売上予測

テクノロジー

この数年間で、企業での SaaS アプリケーションやその他セールステックツールの導入が進み、ツールの数も増加しています。

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これらのプラットフォームやツールは複雑で、営業担当者が新たなツールの使用方法を学び、それを活用できるようになるまでには時間がかかります。

そのため、新たなツールの導入は業務効率の低下をもたらす可能性もあります。

Sales Ops は、以下のようにセールステックツールを管理するため、営業担当者は業務に集中することができます。

  • アプリとツールの統合
  • CRM の導入とカスタマイズ
  • コミュニケーション管理
  • データ管理とレポート
  • 営業業務の自動化

オペレーション

営業担当者の負担となっている管理および運用タスクを引き受けることで、営業チームが営業活動に集中し、パフォーマンスを高めることができるように支援する役割があります。

また、Sales Ops がデータ分析やプロセスの最適化などを通じて、トレーニング、採用、知識管理を主導することで、営業担当者が活用できる情報とスキルを確保することができます。

  • 営業研修
  • プロダクトトレーニング
  • 優秀な人材の採用とオンボーディング
  • 市場理解のサポート
  • 契約とサービス品質保証

パフォーマンス

営業活動におけるパフォーマンスと生産性を向上させるためには、営業担当者の障壁を排除し、プロセスを合理化することが大切です。

営業担当者は以下のパフォーマンスの優先事項を重視します。

  • KPI と販売指標の特定
  • リード管理
  • 報酬やインセンティブ計画の作成
  • 営業施策とベストプラクティスの導入

Sales Ops が重要視される4つのポイント

前の章では Sales Ops の4つの役割とできることについて解説しました。

では、なぜそのような役割を持つ Sales Opsが重要視されているのでしょうか。4つのポイントから解説していきます。

データ活用の重要性

営業活動においてデータを活用することには、売上予測を立てることができる、営業スキルを均一化できるなどといったメリットがあります。

売上予測を立てることで、営業責任者は目標達成に向けた戦略立案を行うことができ、営業スキルの均一化を行うことで、業務品質が統一され、営業活動が効率化されます。

近年、テクノロジーが発達し、SFA や CRM などのツールを用いることでデータが容易に活用できるようになっている中で、このデータを最大限に活用するためには Sales Ops の導入が有効的です。

その理由としては、データを活用するためには、まず活用できるデータが必要であり、それを Sales Ops が管理、分析した上で戦略策定や意思決定支援に繋げていけるからです。

活用できるデータというのは、正確性、リアルタイム性、顧客起点の3つの要件をクリアしたものです。さらに、このデータは SFA や CRM などのツールを活用することで入力され、管理、共有されることで、社員全員が現状を把握することができます。

その中で、Sales Ops は、データを分析し、ビジネスの現状を踏まえて、戦略策定や営業責任者の意思決定の支援に特化しています。

営業担当者の活動支援

Sales Ops は、営業担当者に対して SFA などのセールスイネーブルメントプラットフォームや AI を活用したツールを利用して、営業活動を支援します。

例えば、データ分析を行うことで、確度の高い顧客を営業担当者に提案することや、販売をより簡単かつ迅速に行うことができ、営業活動の効率化と生産性向上に繋がります。

SFA などの営業業務に優れたツールを提供することで、営業担当者や営業責任者に対してより豊富な洞察と方向性を示すことができ、営業担当者はデータに基づいた洞察を生成した上で、それを戦略立案に活用できます。

営業責任者の意思決定支援

Sales Opsは営業担当者だけでなく、営業責任者に対してもターゲットの策定や売上予測の提示などのサポートを行うことで営業部門全体の戦略と生産性の高い業務を推進します。

SFA や CRM などの他に、パフォーマンスダッシュボードや自動予測など、営業責任者の重要な意思決定をサポートするツールを利用します。

それらのツールを利用し、営業データを分析し、成果に結びついている要因をリスト化することで、営業責任者の意思決定や戦略策定を支援することもできます。

顧客離れ防止

営業利益を維持・向上させるためには、新規顧客の獲得の他に、既存顧客の解約リスクを早期に発見し、解約率を下げる戦略やカスタマーサクセスに最適なオペレーションの整備を行うことが大切です。

これまで提示した、データとテクノロジーの活用と営業プロセスの最適化・効率化は、顧客体験の向上につながる他、時間と人のコストを削減し、営業全体的な生産性の向上にも寄与します。

Sales Ops がもたらす3つの利点

Sales Ops の役割と重要性を踏まえた上で、Sales Opsは営業組織にどのような利点をもたらすのでしょうか。

Sales Ops を導入する大きなメリットは営業チームの能力を最大化できることですが、この他にも様々な利点があります。

ここでは、Sales Ops の3つのメリットについて解説します。

最適な意思決定ができる

CRM などのツールを用いて顧客の連絡先や行動、顧客とのやり取りなどの情報を収集、統合、可視化することで事業の現状を正しく把握した上で、分析することができます。

この分析された情報は、営業責任者が正しい意思決定を行うために必要不可欠なものです。

また、情報を元に正確な売上予測を立てることで、営業チームは潜在的な課題を洗い出し、営業計画や営業プロセスを考えることができます。

情報を分析し、意思決定や営業計画の立案に活用するためには、正確かつ、リアルタイムな情報が必要とされるので、Sales Ops はツールをしっかりと管理する必要があります。

データドリブンな営業フローの構築

Sales Ops においてデータの活用は最も重要なポイントです。顧客や売上に関するデータを集約、構造化し、活用可能な状態で蓄積した上で、データ分析を行い、インサイトを出せるようにする必要があります。

この分析されたデータを元に、営業活動において、どのフェーズでどのようなアクションを取るべきかという営業フローを具体的に構築します。

さらに、データ分析から営業担当者に対して、見込み度や確度の高い顧客の提案なども行います。そうすることで、営業担当者はより少ない時間で、多くの顧客を獲得できるようになり、営業活動の生産性を向上させることができます。

利益の最大化

CRM や SFA などのテクノロジーを用いてデータの収集、分析を行い、そこからインサイトを出し、営業活動を支援します。

また、データを収集、統合、分析した上で、その結果をもとに確度の高い見込み客を営業担当者に提案することで、業務の効率化や成約率の上昇を可能にし、人的コストを削減することもできます。営業責任者は、正確なデータを用いて分析された結果を元に最適な意思決定を行うことで、営業全体の生産性を向上させることができます。

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導入時の注目ポイントを解説

ここまで、Sales Ops の役割や利点について解説してきました。

では、実際に Saels Ops を導入する際には何が重要なのでしょうか。Sales Ops に求められる3つのポイントについて解説します。

Sales Ops 導入に不可欠なデータ分析と営業プロセスの知識と理解

データ分析

Sales Ops はデータを扱う業務を行うので、データの内容を理解した上で、活用できるデータを選び、分析し、洞察を引き出すことのできるハイレベルのデータリテラシーが必要です。

データを集約、分析した上で、そのデータを用いて売上予測、ターゲティング、パイプライン管理を行う必要があるため、Sales Ops にはデータを正しく分析できるスキルが必要とされます。

さらに、データを正しく分析できるだけではなく、データを用いて営業担当者や営業責任者に洞察と提案を行えるスキルも大切です。

このように、データから得られた結果を正しく分析し、その情報を元に生産性のある行動の提案を行うことが Sales Ops に求められます。

営業プロセスに関する知識

営業担当者や営業責任者に対して提案を行う上で、Sales Ops も営業の仕組みについて理解している必要があります。

そのため、リードの発掘・獲得から契約までの営業プロセスに関して、網羅的な知識が求められるため、営業経験者が望ましいとされています。

営業の経験がなくても、営業プロセスの理解の他に、最新の動向や現場の状況を俯瞰して見て、それを踏まえた上で、最適な営業戦略を立案できるスキルが必要とされます。

システム・ツール

Sales Ops では、CRM や SFA などのツールを用いて、データの取得や管理を行うため、ツールの使い方や効果について理解した上で、正しく活用するための知識やスキルが必要とされます。

さらに、セールステック は急速に成長しており、新たなツールも増加しているので、常に現在の動向を把握した上で最新のツールを検討し、その時使える最適なツールを選択する必要があります。

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Sales Ops の導入により成功するためには

ただ Sales Ops を組織に導入しただけでは、期待する効果を得ることはできません。

では、Sales Ops を導入し、組織を成功へと導くためには具体的にどのようなことをすれば良いのでしょうか。

現状を把握し、目的を定義する

Sales Ops の導入を始める前に、まずは組織の現状として、年間業績、予算、営業部門の営業担当者数などを把握する必要があります。

現状を把握した上で、なぜ Sales Ops が必要なのか、どのような形態で導入するのが適切であるか、営業チームと営業オペレーションの連携などについて考えます。

また、組織で目的や目標を定めたミッションステートメントを作成し、全社的に共有することも大切です。全員がミッションを認識することで、意思決定や戦略策定の際の指針となり、組織全体が統一されます。

人材の選定

前の章で解説した、Sales Ops を導入する際に求められるポイントで示した項目を元に、最も最適な人材を社内から選定します。もし、社内に最適な人材がいない場合は、新たに募集をかけます。

Sales Ops にはいくつかのポジションがあります。今回はそのうち2つについて役割と必要とされるスキルを説明します。

セールスオペレーションマネージャー

Sales Ops 部門の監督者であるため、営業活動プロセスの知識・理解や営業経験だけではなく、リーダー経験も持ち合わせている必要があります。

正確なデータ分析を行い、そのデータを元に戦略の構築や提案するためのデータのモデリングと分析のスキルも必要とされます。

セールスオペレーションアナリスト

このポジションにおいては、3年以上のセールスオペレーションの実務経験が必要とされ、Sales Ops 部門での業務経験があることが望ましいとされています。

また、製品、マーケティング、分析、テクノロジー、データなどを含む複数の希望を横断して作業するためにこれらの知識やスキルも必要です。

さらに、データに関する豊富な知識とデータを扱える高度なスキルが必要であり、その他にもセールステックやツールに関する知識も大切です。

最適なツールの選定

データを扱う上で、そのデータを集約、管理するためのシステムやツールを導入する必要があります。そして、これらのテクノロジーを活用することで、業務を自動化・効率化し、営業活動の生産性を向上することができます。

システムやツールを導入するにあたり、営業活動の現状を把握することが大切です。

現状を踏まえて、営業プロセスの中でツールを導入することによって自動化できる箇所や効率化できる箇所を認識し、それに適したツールの導入をする必要があります。

ツールにはいくつか種類があり、目的によって導入すべきツールが異なります。

顧客情報を管理・一元化し、営業活動の属人化を防ぎ、集約したデータを活用し顧客満足度の向上させたい場合は CRM を、営業プロセスにおいて、メール送信や担当者割り当てなど自動化されたワークフローを設計することで業務効率を上げたい場合は SFA を導入することが推奨されます。

各種トレーニングの実施

Sales Ops 部門を作成し、適切な人材を配置した上でチーム編成まで完了したら、次はメンバーの知識やスキル強化のためのトレーニングを実施することが必要です。

トレーニングを実施するための媒体は、コース受講やビデオ視聴、ポッドキャスなど様々あります。

日本では、Sales Ops の経験者が少ないため、個人のレベルや目的に合わせてトレーニングを行う必要があります。

Sales Ops 部門だけではなく、連携する営業担当者に対しても効率と影響力を高めるために、Sales Ops 部門がリードの提供、取引の管理、契約の作成、時間管理スキルなどのトレーニングを提供することも推奨されています。

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Sales Ops のこれから

現在急成長中の Sales Ops ですが、今後どうなって行くのでしょうか。

顧客ロイヤルティの向上に特化した新たな役割の登場

今後、Sales Ops はどのように変化していくのかを、どのような役割が求められるようになっていくのか、や Sales Ops に影響を与えられると予想されているトレンドに着目して解説していきます。

カスタマーオペレーション

現在、多くの企業で LTV (顧客生涯価値)が重要視されています。図2) 

LTV 向上には、解約率の低下や、顧客ロイヤルティの向上が大切で、そのためには顧客を理解し、そのニーズや期待に答えることにこれまで以上に重点をおく必要があります。

そこで、今後は、Sales Ops から派生して、カスタマーオペレーションという役割が必要とされるようになります。

カスタマオペレーションは、企業と顧客の最初のタッチポイントから契約まで、企業が顧客サポートするために使用する全てのプロセスを管理する役割を担います。

この部門では、顧客が初めて商品やサービスを知った時から契約に至るまでの、顧客と見込み顧客の体験が満足いくものであることを確認します。

さらに、マーケティング、営業、カスタマーサービスの各チームと緊密な連携を行い、既存の顧客だけではなく、新規顧客を惹きつけるための戦略を立案します。

今後 Saels Ops に影響を与えるトレンド

Sales Ops に影響を与えると予想される2つのトレンドについて解説します。

コンサルティングセールス

近年は以前に比べ、自分でサイト訪問やセミナー視聴などのコンテンツを用いて情報収集を行っている顧客が増加しており、顧客は営業担当者と接触する前に購買プロセスの67%を終えています。(図1 

さらに、顧客の抱えている課題を解決するために、営業担当者は顧客にパーソナライズされた提案をリアルタイムで行う、コンサルティングのような営業が必要になります。

Sales Ops 部門では、豊富な知識や情報を持っている人が、顧客の現状や課題を元に、顧客が必要としている情報や顧客にパーソナライズされた戦略を営業担当者に提案することで、営業担当者は顧客が満足のいく決断をするためのサポートを行うことができます。

このように、今後は顧客に商品やサービスに関する情報を提供するだけでなく、顧客自身が自分の決断に自信を持ち、購買を促進するようにサポートすることが営業担当者の役割になると予想されます。

AI ベースの営業

AI が急成長している中で、営業活動においてもAIを活用する事例が増えてきており、今後も AI ベースの営業ツールが多くの企業で導入されると予想されています。

現在、営業担当者は、常にノルマを追いながら、多くのタスクと責任を持っていますが、AI を活用した提案型の営業を導入し、データ駆動型のアプローチで業務の効率化を支援することで営業担当者のタスクを軽減し、生産性の向上に繋げることができます。

具体的には、AI が意思決定につながるパターンを特定し、情報蓄積、仕組み化することにより収益創出に貢献します。

さらに、データ駆動型の AI は、顧客情報を管理、分析した上で、営業担当者に対して最適なネクストアクションの提示を行うことも可能です。

また、今後は AI の活用により、顧客情報だけでなく、営業担当者の営業活動データを蓄積し、インサイトを出すことで、営業責任者が案件の適性を判断することができるようになります。

このように、AI は営業プロセスを効率化するためのリード指標を特定するための洞察を提供することにより、営業担当者の生産性の向上にも寄与します。

Magic Moment では、AI が最適な次のアクションを提示することで営業担当者を支援するAIツール Magic Moment Playbook を開発・提供しています。

以下の記事で、Playbook について詳しく解説しています。ぜひ、ご活用ください。

併せて読みたい:5分でわかる「 Magic Moment Playbook 」