営業組織がスケールするためになぜ「型」が必要なのか

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要約SUMMARY
  • コロナ禍でリモートワークが進む中、部下の育成とオンライン営業の強化が大事となる
  • 組織内で営業の型化を進めることが、これらの課題を解決する
  • 世の中に存在する営業フレームワークを上手く活用し、自社独自のノウハウを組み込んだ営業の型化( Playbook の作成)が今求められている

「顧客の購買行動」「 IT や DX の進展」などを背景に、営業を取り巻く環境が以下のように大きく変化しています。

  • 顧客の要望が細分化しており、ニーズを捉えるのが難しい
  • 顧客が自ら製品やサービスに関する情報をインターネットを通じて情報収集しているため、従来の「提案型営業」が通用しなくなっている
  • ITテクノロジーの進展により業界内だけでなく、業界外からも競合が現れている

加えてコロナ禍により働き方も大きく変わっています。そして、リモートワークの進展は商談などの営業活動にも大きく影響を及ぼしています。

  • リモートワークでの営業活動
  • 商談のオンライン化
  • フルリモートワークの中での部下の育成

こうした営業を取り巻く環境の変化の中、多くの管理者が部下の育成に課題を感じています。以下は人材育成サービスを行っているラーニングエージェンシーが2019年12月から2020年3月にかけ、管理職1,070人を対象に行った調査結果です。

出典:ラーニングエージェンシー「【管理職1,070人の意識調査】」

この結果を見ると、部下の育成に課題と感じている管理職が多いことが伺えます。しかし、コロナ禍でフルリモートでの営業活動を行う必要がある中で離れた場所で部下を育成するのは難しいのが現状です。

また、リモートワークではメールやチャットといった文字でのコミュニケーションが中心となります。文字でのコミュニケーションでは「指示や意図が伝わりにくい」などがあり、営業の生産性が低下しかねません。

このため、リモートワークの状況下でも営業生産性を高める仕組みが必要です。

営業のフレームワーク

では、「営業の生産性向上」のためにはどのような方法があるのでしょうか?それは、「営業のフレームワークを活用して型化( Playbook の作成)を行うこと」です。

「型化」とは見込み顧客へのアプローチからクロージングまでの各営業プロセスにおいて、取るべきアクションや押さえるべき情報などの基準を設け、組織内で共有することです。

また、Playbook とは演劇における「脚本」を表す英語です。営業活動では「組織内で使用するトークスクリプトや価格表などのドキュメント」を表します。組織内での共通の認識が生まれ、ナレッジやノウハウの共有ができるようになります。

型化を行い、Playbook を作成するにはフレームワークを活用するのがよいでしょう。フレームワークとは意思決定や戦略立案などを行うための「枠組み」です。営業活動に関するフレームワークも沢山あります。その中で代表的な営業のフレームワークを3つ解説します。

BANT

1つめは BANT です。BANTは BtoB 営業で利用されるフレームワークの1つです。

フレームワークの概要

BANT とは「 Budget (予算)」「 Authority (決裁権)」「 Needs (ニーズ)」「 Timefre\ame (導入期間)」のそれぞれの頭文字をとったものです。法人営業における営業担当者としてヒアリングすべき事項を表しています。

出典:Keywordmap ACADEMY「【事例あり】BANTとは?~営業の効率や成果が上がるヒアリングテクニック」

目的

BANT の利用目的は成約に至るまでのハードルを分析するのに役立ちます。例えば、「顧客の予算に合った金額で提案可能か?」「顧客が要望する納期で納品できるか?」などです。

活用方法

営業組織全体でBANT 条件を共有し、BANT を活用することで、成約に至るための戦術や行動を組織内で決めることができます。そうすることで組織全体で成約率向上につなげることができるでしょう。

活用のポイント

BANT の活用のポイントは「いかにBANT 条件をそろえるか?」です。

法人営業ではBANT が揃わないと成約に至ることができません。例えば、「私は御社のサービスが良いとは思うけど、私だけでは決めることができない」といったケースです。これは、BANT のうちA (決裁者)が欠けているからです。

このようにならないためにも、顧客とのヒアリングを通じてBANT の内容を把握し、営業組織内で共有しながら商談を進めることが大切です。

MEDDIC

2つめはMEDDIC です。MEDDICはJack Napoli氏が考案したフレームワークです。

フレームワークの概要

MEDDICとは「 Metrics (測定指標)」「 Economic Buyer (決裁権者)」「 Decision Criteria (意思決定基準)」「 Decision Process (意思決定プロセス)」「 Identify Pain (抱えている問題)」「 Champion (自社サービスの擁護者)」のそれぞれの頭文字をとったものです。

先に紹介した BANT に近い指標がありますが、このフレームワークは、購買プロセスが複雑な案件に向いています。

目的

MEDDICは「見込み客が顧客として要望かどうかを見極める」ことを目的としたフレームワークです。MEDDICで掲げている指標を全て押さえることで相手企業の購買プロセスを理解し、有望な顧客になるかどうかを見極めます。これにより、「更に営業努力を続けるべきかどうか」など、無駄な時間を費やすことなく受注を高めることに役立ちます。

活用方法

MEDDICは案件の内容理解と仮説構築に役立ちます。

例えば、「 Identify Pain (抱えている問題)」や「 Metrics (測定指標)」を把握することで、問題解決の方法や期待できる効果を具体的に提案できます。

また、「 Economic Buyer (決裁権者)」「 Decision Criteria (意思決定基準)」「 Decision Process (意思決定プロセス)」「 Champion (自社サービスの擁護者)」を押さえることで、商談の進め方やアプローチを決めることができます。

活用のポイント

MEDDIC活用のポイントは「MEDDICを顧客の課題を明確化し、成約に至るプロセスを明確にする」ことです。

顧客がなぜサービスの導入を検討しているのかというと、「組織が抱える問題を解決するため」です。このため、顧客が抱える問題を明確にし、問題解決に至るプロセスを提案することが必要です。

そして、成約に至るためにMEDDICの項目を用いて成約に至るプロセスを明確にします。これらを組織内で共有し、後押しすることで成約率向上につなげることができるでしょう。

SSM

3つめはSSM です。SSMは世界的なクラウドサービスの会社であるSalesforceで活用されているフレームワークです。

フレームワークの概要

SSMは営業担当者が顧客と商談を進めるにあたり、ヒアリング対象や検討対象項目としてまとめたフレームワークです。特にSalesforceなどの外資系企業で用いられています。対象項目は以下の14個です。

出典:Yuki Ishii(DJ141)/株式会社digsas CEO「Salesforceの上位20%の営業がヒアリングしていた項目“SSM”を更にバージョンアップさせました」

目的

一定金額以上の大型案件や今後も大口取引につながりそうな大企業からの案件を確実に受注するために活用します。

活用方法

営業担当者が商談を進めるにあたり、不確実要素をなくすためのチェックリストとして活用できます。また、受注にむけた次のアクションを明確にするなど、営業担当者の行動を明確にするためにも使用します。

活用のポイント

SSMであげられている14項目のうち、特に重要なのが「コンペリングイベント」です。コンペリングイベントとは「顧客が受注予定日までに買う理由」であり、「そのサービスを買う必要がる何か差し迫った状況」です。

顧客は問題解決のために商品やサービスを購入します。その理由を明確にすることで、他の項目と関連しながら行動計画を立て、受注につなげていきます。

型化(=Playbook作成)のメリット

ここでは「型化( Playbook 作成)のメリット 」について解説します。

先に紹介した BANT や MEDDIC などのフレームワークをテンプレートとしてPlaybookを作成し、組織内で共有することで、能力の違いによる成果のばらつきの是正や営業生産性の向上につながるメリットがあります。

世界有数の CRM システムの1つである HubSpot では、トークスクリプトや価格設定用ガイドラインなど、営業活動に必要な Playbook をシステム内に登録できます。そして、営業担当者は HubSpot 内に登録された Playbook を参照することで、「型」に従って営業活動や商談を進めることができます。

また、セールスイネーブルメントツールのHighspotを使用して Playbook を作成し、営業担当者と共有することで、チームパフォーマンスの向上が期待できます。「成功するセールスプレイブックテンプレートの7つの基本要素」には、同社が推奨する Playbook の要素について公開されています。

営業マンのトーク事例

Playbook としてトークスクリプトが用意されているのと用意されていないのでは会話にも差が発生します。以下で Playbook がある場合とない場合の具体例を示します。

  • Playbook がない場合

「この度はお問い合わせいただきありがとうございます。弊社の最新ソフトは○○が特徴です。一度お話をさせていただけないでしょうか?」

  • Playbook がある場合

「この度はお問い合わせいただきありがとうございます。御社では人事領域で新たな取り組みをお考えでしょうか?弊社のソフトを利用することで○○の効果があると考えますがいかがでしょうか?」

Playbook が用意されていない場合は、トークが以下の流れになりやすい懸念があります。

  • 機能に関するアピールが多い
  • 顧客にお願いする流れになりやすい

また、Playbook が用意されていない場合は営業担当者のスキルの差が顕著に表れます。Playbook には社内に蓄積されたノウハウを組織内で共有できる効果もあります。

一方、Playbook が用意されている場合は以下の流れでトークを進めることができます。

  • 顧客を知り、仮説を持っている
  • 顧客が提案を歓迎する流れになりやすい

このことからも、顧客の問題解決につながるトークになりやすく、顧客からも歓迎される流れになりやすいことが分かります。

若手営業担当者がベテラン営業担当者のノウハウを活用しながらトークを進めるためにも、Playbook を用意することをおすすめします。

Playbook が営業組織にもたらす効果

Playbook がない場合とPlaybookがある場合とでは、ノウハウの共有、人材育成、営業活動の進め方など、様々な局面にて違いが現れます。以下の図は Playbook がない場合とある場合の違いを局面毎にまとめたものです。

「 Playbookを見ると状況を把握できる」「担当者に聞かないと分からない」など、特に情報共有において大きな差が現れていることが分かります。

また、Playbook を作成することで、以下の効果を営業組織にもたらします。

  • ハイパフォーマンスな営業担当者のノウハウを結集した営業オペレーションの標準化の実現
  • 個人スキルの底上げによるチームの営業生産性の向上
  • モチベーションの向上による離職率の低下
  • 新卒人材の育成、中途人材のキャッチアップの高速化

その中でも、特に高く評価されているのが「個人スキルの底上げによるチームの営業生産性の向上」です。以下のグラフはセールスイネーブルメントの効果を表したものです。

出典:Docurated社「2018-2019 Sales Enablement Trends Report」よりMagic Moment作成

上記の結果を見ると、営業生産性に関しては71%が「向上した」と回答しています。

このように、 Playbook の導入によって「型」を用いながら営業活動や商談を進めることで、「営業生産性の向上」をはじめとした多くの効果を営業組織にもたらします。「営業の型」をつくることで得られる効果も詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。(会員登録いただければご覧いただけます。)

型化(=Playbook作成)のステップ

では、 Playbook にはどのような要素を盛り込めばよいのでしょうか?まだ、どのようなステップで作成すればよいのでしょうか?

ここでは「 Playbook の要素」と「作成ステップ」について解説します。

Playbookの要素

Playbook には以下の要素を含めます。

Playbookの要素

Playbook には以下の要素を含めます。

  • フェーズとゴール
  • 達成項目
  • 合意形成項目
  • ヒアリング項目・ToDo項目
  • スクリプト

それぞれの項目について解説します。

1.フェーズとゴール

1つめは「フェーズとゴール」の設定です。ここでは、営業プロセスを各フェーズに分けて可視化し、各フェーズの状況を定量的な指標で分析・管理できるようにします。このとき、各フェーズのゴールを明確にします。ゴールとは「該当フェーズを完了すべき目標と完了基準」です。ゴールを明確にすることで各フェーズでやるべきことが明らかになります。

2.達成項目

2つめは「達成項目」の設定です。達成項目とは「各フェーズのゴールを達成するための細分化したゴール」です。例えば「ナーチャリングフェーズでは、まずは信頼関係を構築する」などです。これを決めることで、各フェーズのゴールに至るための詳細な行動計画を立てることができます。

3.合意形成項目

3つめは「合意形成項目」の設定です。ここでは、商談を前に進めるにあたり、顧客と合意形成すべき項目をあらかじめ決めておきます。例えば「顧客の課題は何か?その中でも優先課題は何か?」などです。顧客との合意形成項目をあらかじめ決めておくことで各フェーズで行動すべきことが明確になり、フェーズのゴール達成につながります。

4.ヒアリング項目・ ToDo 項目

4つめは「ヒアリング項目・ ToDo 項目」の設定です。顧客のニーズ・課題・状況などを確認するためにあらかじめヒアリングすべき項目を明確にします。また、商談を進めるうえて確認が必要な項目も対象となります。

5.トークスクリプト

5つめは「トークスクリプト」の設定です。ヒアリングや商談などで顧客とのトークやコミュニケーションの進め方を、具体例を交えながらまとめます。これにより、経験が浅い若手の営業担当者も、顧客とのコミュニケーションの取り方をイメージできるようになります。

作成ステップ

では、 Playbook はどのようなステップで作成すればよいのでしょうか?ここでは、 Playbook の作成ステップについて解説します。

Playbook は以下のステップで作成します。

  1. フェーズ/ゴール/達成項目の定義

営業プロセスを分離し、受注するために必要なフェーズ・タイミングで目指すべきことを定義します。

  1. 合意項目/ヒアリング/項目の精査

受注する為には、どのような内容をヒアリングや合意する必要があるかを精査します。

  1. スクリプトの作成

商談にて参考となるスクリプトを作成します。

  1. 確認

実際の営業活動を行うにあたり、 Playbook に過不足ないかを最終確認します。

  1. 運用・改善

Playbook を用いた営業活動を実施します。そして、定期的に見直しを行いながら改善します。

上記5つのステップの中で最も重要なのが「運用・改善」です。Playbook 作成当初は過去の商談などを元に各項目を整理します。とはいえ、実際に運用を開始すると当初の想定と異なる点や運用上不都合な点が発生します。このため、見直しと改善が必要です。定期的に見直しを行うことで Playbook が使くなるとともに、営業担当者の育成、ひいては営業生産性の向上にもつながります。

まとめ

  • 多くの管理職が部下の育成に課題を感じる中、コロナ禍でも成果をあげるためにはオンライン営業の強化が必要
  • オンライン営業の強化には「  BANT 」「 MEDDIC 」「 SSM 」などのフレームワークを用いたPlaybook (型化した営業プロセスやドキュメント)の作成が有効である
  • Playbookを作成することで、能力のばらつきの是正や営業生産性の向上につなげるメリットがある
  • Playbook の作成は、「1.フェーズ/ゴール/達成項目の定義」「2.合意項目/ヒアリング/項目の精査」「3.スクリプトの作成」「4.確認」「5.運用・改善」で行う

 

本記事では、営業組織をスケールさせていく強力な施策のひとつとして、自社の営業組織に最適なPlaybook を作成する取り組みをご紹介しました。

ただいま、Accel を運営するMagic Moment では、自社に最適なPlaybook を作成するための手順をこちらに纏めておりますので、是非、ご活用ください。

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