売上高増加率とは?活用法から売上を上昇させる方法・ステップを解説

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要約SUMMARY
  • 売上増加率とは、ある特定の期間において事業がどれ程の売上を上昇させることができるを示す割合を指す。
  • 売上増加率は一般的に大企業では 5〜10 %、中規模・小規模の企業では 10% 以上が望ましいと言われている。実際には対象の企業がどういった環境に置かれているか、外部環境など様々な情報を総合的に考慮する必要がある。
  • 売上が上昇しない原因は、外的要因と内的要因に分けられる。売上の上昇には、内的要因にフォーカスをするべきである。
  • 売上を上昇させるための方法は、コントロール可能な指標をいかにコントロール下に置くかが大切になる。
  • 売上上昇のためには、透明性のあるデータ活用・顧客エンゲージメントを高める営業組織を創り上げる。

持続的な売上の上昇は、利益を生み出し株主に利益を還元する上であらゆるビジネスにとって非常に重要です。

売上を上げることで得られた利益を用い、継続した成長のために新たな商品・サービスや設備投資に回す資金を確保することもできます。そのため、自社の売上の伸び率やどういった要因によって成長が妨げられるのかをつぶさに把握することが非常に重要です。

本記事では、売上高増加率や年平均成長率から読み取れることや、比率を活用した売上を上昇させるための方法を詳細に解説します。

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売上高増加率(売上高成長率)とは

売上高増加率とは

売上増加率とは、ある特定の期間において事業がどれ程の売上を上昇させることができるかを示す割合のことです。

売上増加率を求める際の注意点や導き出せるインサイトは以下の通りです。

  • 比較対象期間の条件を揃える必要がある
  • 利益などの伸びは別途異なる指標をもとに試算が必要
  • 自社の売上高増加率を業界や過去、市場平均の増加率と比較可能
  • データドリブンな原因の追求・意思決定ができる

売上高増加率を活用することで、事業全体的な視野での競争力や市場での自社サービスの競争力を把握できます。ただ、利益をどれ程出しているのかであったり、本業で売上が伸びているのかそうではないのかといった詳細は見ることができません。

本業での利益を示す営業利益売上高営業利益率経常利益などの指標と合わせて見ることで事業の中身をより詳細に知ることができます。

売上高増加率の計算方法

売上増加率 =[(今期の売上高−前期の売上高)÷ 前期の売上高]× 100 

計算自体はシンプルです。

今期の売上高と前年同期間の売上高を上記の計算式に当てはめるとどのくらいの割合で売上が伸びたかを簡単に算出できます。ただ、単純に前年や前四半期の売上高増加率の比較だと細かい数値は取れないからあまり意味がないと思われるかもしれません。

年平均成長率(CAGR)

そこで、期間を長く取ることで年平均売上高成長率(CAGR)を取ることもできます。営業利益や売上高で計算する年平均成長率は投資家等のステークホルダーにとっても、企業の中長期的な成長性や将来性を見る上で大きな重要性を持ちます。

年平均成長率(Compound Annual Growth Rate)は Compound とある通り、複利の考え方です。仮に4年間で1000万円の売上高が1800万円のケースにおいて、80% ÷ 4 で20%とはなりません。

CAGR は、過去のある期間N年の成長率の幾何平均(相乗平均)で求めます。幾何平均は伸び率といった比率での平均値を求める際に使用します。

つまり、ある同じ成長率を n年分掛けた時に、各年の売上高増加率の積と同じ値になるには、どんな値を取れば良いか?と聞かれています。

これは各年の売上高増加率の積に対して、その年数を n乗した結果、その積と同じになる累乗根を求めることで分かります。

分かりやすくするためにも、具体的な計算事例を見ていきましょう。

具体的な計算事例

売上高増加率

Yahoo! finance によると H&M社は、2020年中に巨額の損失を出してしまい、その赤字を黒字化できないのではないかという不安が残っていました。最終的に2020年と2021年の第1四半期の売上成長率がどのような結果に至ったか試算してみます。 1)

H&M:第1四半期売上高 2020年:97.5億ドル

H&M:第1四半期売上高 2021年:101億ドル

つまり、[ (101 億:今期の売上高 – 97.5 億:前期の売上高) ÷ 97.5 億(前期の売上高)] × 100 = 3.5%となります。

年平均成長率(CAGR)

Apple社を例として計算してみましょう。各年の売上高成長率は以下の図のようになります。

出典:Yahoo! Finance よりMagic Moment 作成

Apple 社の3年間の成長率は、1.055 × 1.333 × 1.078 = 1.51600… なので、3年間の成長率は51.6%です。

この成長率は各年の売上高増加率の積であり、3年なので n は3です。つまり、同じ数を3乗して、1.51600 になる累乗根を求めれば大丈夫です。

計算は以下の通りです。

これで、Apple 社の年平均成長率は約15%であることが分かりました。

最後に、3年連続で15%で成長した場合の3年間の成長率が51.6%になるかを確かめてみましょう。

平均値からのバラツキ

平均約15%ではあるものの、上の図が示す通り、その平均からのバラツキは大きなものがあります。

2020年のコロナショック、金融緩和による急激な回復があった2021年、急激なインフレによる FF金利の急な引き上げのあったマクロ経済環境では、この大きな環境変化により全体としてのバラツキは大きくなりました。

年平均成長率を考察するうえで、このバラツキは念頭に置いておきましょう。この平均値と各年の売上高増加率を比較することで平均からのバラツキを把握し、その要因の推定をすることもできます。

例えばコロナ禍において、Apple 社の売上高増加率は年平均成長率を大きく下回りますが、これにはコロナショックという背景があります。定常的に再現性を持つ悪材料ではないとの評価もできるでしょう。

売上高増加率の平均・目安

大企業:5〜10%  中規模・小規模の企業:10%以上

売上増加率は一般的に大企業では5〜10% 、中規模・小規模の企業では10%以上が望ましいと言われていますが、あくまでもこれは目安です。

実際には対象の企業がどういった環境に置かれているかなどの様々な変数の影響を受けます。

売上高増加率を考慮する際に注目すべき点

売上高増加率の平均・目安は企業の規模や業界によっても異なります。そのため、増加率を読み解く際には以下の3つの点を考慮するといいでしょう。

会社の規模

一般的に信じられている通説とは異なり、中小企業の方が大企業よりも売上高増加率が高くなる傾向があります。

これは大企業の成長が停滞した後、M&A に注力する傾向にあるからという理由もありますが、中小企業の方があらゆる成長の要素を受ける影響が大きいからです。

例えば、大企業が20億円から21億円に売上を伸ばした場合、売上成長率は5%になります。一方、 3000万円から5000万円へ売上を成長させた中小企業の場合、増加率は約66%になります。

大企業は1億円の売上高の増加に対し、中小企業は2000万円の売上増ですが、増加率の観点では中小企業の方が高い伸びを記録したのです。

要は、どこにフォーカスするかです。

競合他社との比較

企業はどの会社よりも高い売上高増加率を叩き出す必要はなく、直接競合している他社よりも高い成長率をあげればよいのです。

例えば、Yahoo! finance によると急速なインフレと金融引き締めの最中だった2022年の第3四半期に Tesla は約27%の売上高増加率を記録しています。2)同時期に Amazon は約5%を記録しています。 3)

単純に Tesla と Amazon を比較すると、Amazon にとっては残念な結果に見えるかもしれませんが、これらの企業は同じ市場で競争しているわけではありません。仮に Amazon の競合にあたる ebay の同期間の売上高増加率が約-2%だったことを考慮すると、株価収益率(PER)の下落が著しかった同期間の Amazon の成長率は悲観するものではありません。 4)

同じ e コマースサイトとして、Amazon と ebay は少なからずお互いに影響を与えてます。Tesla の売上高増加率には敵いませんが、 Amazon の増加率は直接のライバルよりも大きな成長を反映しています。

eコマース市場での CAGR と相対視することも、対象企業を評価するに有効です。

企業の目標・KPI

例えば、営業パイプラインの案件が少なく、受注率が低いケースでは、該当の四半期にてリードの質の向上やパイプラインの改善に注力することになるかもしれません。

その施策が将来の売上の上昇につながる状況であれば、会社の将来にとって非常に有益なことです。ただ、該当の四半期の売上高増加率は低下する可能性が高いと言えます。

売上高増加率が停滞する要因とその備え

売上を上昇させることができない原因は外的要因から内的要因まで多岐にわたります。

外的要因

外的要因は多数ありますが、例えば以下の4つが考えられます。

  • サプライチェーン問題
  • 消費者の動向変化
  • 経済状況の変化
  • 競合他社の動向

これらに共通する特徴として自社でのコントロールが困難であるという点です。

製造業では、原材料不足による価格高騰や自然災害により配送が困難になれば供給が滞る可能性もあります。競合の参入を予期するのにも限界があります。

また、生活必需品以外の一般消費財を扱う業界では、デフレにより需要が減速します。不況により銀行が貸し渋れば、キャッシュフローの悪化した消費者や企業は購買活動を消極化させるでしょう。

特にこうした景気の動向や地政学的リスクでは、予想し得ないことも起きます。そういったリスクに対して安全域を設けることが大切です。

つまり、売上高増加率の予測やそれに基づく売上目標の設定や計画の策定に際して、計画通りにいかないことを想定した計画とするようにしましょう。考慮すべき要因は上記の外的環境はもちろん、予期できないことを知っておく心構えが大切です。

内的要因

一方で、内的要因としては以下ものが考えられます。

  • 目標が浸透していない
  • 自社の商品がマーケットにフィットしていない
  • 売れる原因・売れない原因がわからない
  • 報酬・インセンティブのモデルが不透明
  • 競合の動向に無関心
  • 顧客のフォローを怠ってしまう

上記のような内的要因は外的要因とは異なり、自社で努力をすることによって改善できる余地が残されている領域です。外的要因は天気と同じで、それに対して受け身で対応するしかありませんが、内的要因は積極的な対策が可能な領域と言えます。

例えば、目標が現場レベルまで浸透していない、報酬体系が不透明で客観性を担保していない企業では社員のモチベーション維持が困難になり離職率が高まる傾向にあります。

これら対策として、客観的な定量・定性的な報酬モデルを全社員に明示する。「なぜこの目標を達成するべきなのか?」の背景をチームに浸透させるなどの施策は自社でコントロールが可能です。

売上を上昇させるための方法

内的要因にスコープを絞ると、売上高を増加させるためには、自社でコントロール可能な指標を見つけ、その改善のステップを踏んでいくことが大切です。これは、戦略の策定においても、実行フェーズにおいても同様のことが言えます。

以下のステップを踏み、インサイトの抽出から PDCA を回すように意識しましょう。

  1. 定量的/定性的な指標を決める
  2. 指標間の影響度(相関性)を検証する
  3. 自社でコントロールが可能な指標(外的要因の影響を受けない)はどれかを把握する
  4. 3 のうち、どの指標がもっとも成果に寄与するかを検討する
  5. 指標を計測するための変数を分解する
  6. 変数改善のためのドライバーを知る
  7. その施策にはどれくらいのリソースや費用がかかるかを想定する
  8. どれほどの期間で達成するべきかを決める

例えば、リード獲得から受注までのプロセスを分解し、指標化すると以下の図のようになります。このうち、事業目標から逆算すると、1人当たりの数である「架電・アプローチ数」「商談数」が自社がコントロール可能な指標になります。

つまり、1人当たりの数×人数の上限までアプローチ数を上げることで、獲得効率の向上を目指します。

大切なのは、行動と結果との相関性を見出すことです。この相関性が可視化されていれば、改善点の抽出ができ、何をすれば良いか(どの数値を改善すれば良いか)が明確になります。

また、指標の策定や相関性の確認、計測には正確かつリアルタイムなデータが欠かせません。いわゆるデータガバナンスやデータリテラシーと呼ばれる領域です。

このデータ管理から分析、活用までのステップの先端ステップを以下の記事から知ることができます。

あわせて読みたい:【徹底解説】Gartner が示す営業データ分析の戦略的ロードマップと来るべき5つの未来

データを起点に顧客へインサイトを提供する

インターネットの発達により、顧客は問い合わせをする前にあらゆる情報収集を事前に行うことができるようになりました。

今までであれば、顧客は情報の非対称性において劣後した状況に置かれていたと言えるでしょう。顧客はサプライヤーの提供する情報を鵜呑みにするしかなく、提供される情報の真偽判断に苦慮していました。

下の図で示すように、 McKinsey&Company 社の調査によると、BtoB において顧客との接点はデジタルに急速にシフトしており、特に情報収集やサービスの比較検討はネットで済ませてしまうことが指摘されています。 5)

つまり、サプライヤーは顧客にとって真に価値のある提案をしないといけない状況になっています。一方で顧客にとっては本当に必要なツールやサービスを十分に検討し、導入後のミスマッチを最小限にできるようになったため、顧客にとって非常に良い状況となっています。

このような状況を鑑みると、営業担当者はデジタル上で得られる顧客の行動データなどから顧客が解決すべき問題を分析していくことが大切になります。売上・利益のアップ、コスト削減の方法など、顧客が気づいていないインサイトを提供することが必要不可欠です。

そして、提案している商品・サービスを導入すると、顧客がどう変わることができるのかを訴求し続ける必要があります。

LTV を重視するエンゲージメント型の営業組織へ

継続して売上を上昇させるためには、単発的な新規案件の獲得を目的とする獲得型営業組織からエンゲージメント型の営業組織への変革が重要です。

エンゲージメント型の営業組織では、LTV の最大化を目指します。

新規獲得だけではなく、顧客からの継続的な受注と既存顧客からのアップセルに注力し、売り上げ向上に繋がる活動を主としています。そのため、エンゲージメント型の営業組織へ変革することで、継続的な売上の上昇を実現することができます。

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《引用文献》

1)Yahoo! finance. https://finance.yahoo.com/, (参照 2023-01-23)
2)Yahoo! finance. Tesla, Inc. (TSLA). https://finance.yahoo.com/quote/TSLA/financials?p=TSLA, (参照 2023-01-23)
3) Yahoo! finance. Amazon.com, Inc. (AMZN). https://finance.yahoo.com/quote/AMZN/financials?p=AMZN, (参照 2023-01-23)
4) Yahoo! finance. eBay, Inc. (EBAY). https://finance.yahoo.com/quote/EBAY/financials?p=EBAY, (参照 2023-01-23)
5) McKinsey&Company. “These eight charts show how COVID-19 has changed B2B sales forever”. 2020-10-14. https://www.mckinsey.com/capabilities/growth-marketing-and-sales/our-insights/these-eight-charts-show-how-covid-19-has-changed-b2b-sales-forever, (参照 2023-01-23)