営業チームの課題を見える化する 営業パイプラインの分析方法

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「営業が売上を立てないと収益が上がらない」というプレッシャーを抱えながら、アポイントの取得などに苦戦する営業担当者は少なくないでしょう。そして、営業責任者は、そのような営業担当者に対して次のKPIを設定したり、能力改善のサポートに回るなど、多くのマネジメント業務に追われていることだと思います。営業チームは、これらの日々の業務の煩雑さに加え、絶えず急速に変化する市場やクライアントのニーズを理解し、対応していかなければなりません。そこで、常に営業活動をデータで管理し、より業務を効率化させるための手段として、営業パイプライン管理というものがあります。営業活動におけるリード獲得から、顧客獲得までの一連の流れである営業パイプラインで何が起きているのかを分析することでチームの抱えている課題を見つけやすくなります。

営業パイプライン分析の方法

分析対象となるメトリクスを設定する

営業パイプライン分析の目的は、パイプラインの中で改善すべき点を見つけ出すことです。つまり、これからの営業チームの方針を大きく左右する重要な作業であると言えます。そのため、営業パイプラインの中で分析対象となるメトリクスを適切に設定することが重要になります。分析すべきメトリクスとしては、以下のようなものがあります。

  • リード数
  • リードの案件化率
  • 成約率
  • 案件の商談化率
  • 商談化できた案件の大きさ(平均取引額)
  • 営業活動サイクルの長さ(平均商談期間)
  • 実際に着手している案件数

ツールの導入によるメトリクスの計測

上記のようなメトリクスの計測には、CRMやSFAなど顧客情報や営業活動情報を管理するツールを活用することが不可欠となります。これらのツールによるメトリクスの計測を確実に行うためには、各メンバーが顧客情報や、営業活動の状況を確実に入力する必要があるため、情報入力のためのオペレーションを構築しておくといいでしょう。

営業メンバーがCRMを入力し、確実にCRMを活用するための具体的な方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

各メトリクスの分析によるインサイトの抽出

各種メトリクスがありますが、複数あるメトリクスの中でもっとも注目すべきメトリクスとして、リード数・成約率・平均取引額・平均商談期間の4つの要素からなるセールスベロシティがあります。セールスベロシティによって全体の営業効率を向上させることができます。このメトリクスは、リード数・成約率・平均取引額の積を、平均商談期間で割ることで算出する数値です。

では、セールスベロシティが低い根本的な原因を探すには、どのような観点で各メトリクスを分析すべきなのでしょうか?

リード数が少ない

リード数が少ないと、営業の案件数も少なくなってしまいます。案件数が少ない原因を探るためには、ファネルのステージごとのコンバージョン率を確認しましょう。セールスベロシティの算出時には、その案件が新規のものであれ、クローズ間近のものであれ関係なく全て同等に扱われるため、各案件がファネルのどのステージにあるのかを把握し、多くの案件を失注しているステージがないかをチェックしましょう。もしどこかのステージで失注が多くなっていれば、見込み顧客をどのように購入の意思決定まで進んでもらうかの見通しの立て方が甘い可能性があるため、購入適格の状態にするまでのプロセスの見直しに取り組む必要があることが分かります。

成約率が低い

成約率が低い場合、失注の原因を探ることが効果的です。そのためには、CRMに、失注の原因を項目として設置しておくといいでしょう。設置する項目の例としては、「タイミングのずれ」や、「ニーズが合わなかった」などがあります。例えば、とある企業の年間案件数を分類すると、下記の図のようになります。この例では、タイミングのずれに大きな原因があったことが分かるため、アプローチプロセスの改善に取り組むべきだと判断することができます。

図1:案件の失注理由(Magic Moment作成)

平均取引額が小さい

平均取引額の底上げを測りたい場合、どれくらいの金額の案件がいつ何件程度あるのかを整理しましょう。期間によって取引額に差が生まれている場合、次の売上の予測可能性が低くなってしまいます。このような状況を踏まえて、取引額のばらつきを小さくし、平均取引額を大きくするためには、取引額の大きい案件を増やす必要があります。つまり、ターゲティングの見直しが必要だと判断することができるでしょう。

平均商談期間が長くなっている

平均商談期間が長くなっている場合、それぞれの商談にどの程度時間がかかっているのかを把握し、各メンバーの営業サイクルの長さを可視化しましょう。それにより、平均商談期間が長くなってしまっている原因はどこにあるのかを見つけ出すことができます。例えば、ここで営業サイクルが長すぎるメンバーがいれば、そのメンバーは自分の処理能力を越えた仕事を抱えているか、能力改善の余地があると考えられます。このような場合には、個別の課題に合わせた指導を行うべきだという結論が導き出せるでしょう。

セールスベロシティを向上させるために具体的に何をすべきかについては、こちらの記事で解説しています。是非ご覧ください。

まとめ

これまで方法を紹介してきたような営業パイプライン管理によって、営業活動が可視化されます。そのように営業活動を分析する中で継続的に数字の改善が見られないものがあれば、そこに関係する営業活動にプロセスやメンバーのスキルなど、何かしらの問題があると判断することができるため、対策を打つための意思決定ができます。可視化しづらい日々の営業活動も、ツールの活用によってデータ化し、それらを分析することでより良い意思決定が可能となるのです。

米国では、このようなツールを活用したデータ分析によるインサイトを担ってくれるSales Opsという役割が存在します。Sales Ops営業部門とは独立して営業組織のオペレーション管理やチームメンバーの能力向上も担います。こちらのe-Bookでは、Sales Opsが注目されるようになった背景とその役割について詳しく説明してますので、ぜひご覧ください。