営業プロセスの見える化とは?効率化・標準化を実現する方法

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要約SUMMARY
  • 営業プロセスの見える化により営業活動が可視化して、属人的だった営業活動の標準化、最適化を実現できる。
  • 営業プロセスを設計するには、5ステップで進めることができる。
  • その後定期的な PDCA を行うことで営業活動の最適化を図る。営業活動の標準化のために、「型」を用意しておくことも重要。

営業プロセスとは、リード獲得~アプローチ~商談~アフターサポートなどの一連の営業活動のことですが、営業プロセスを見える化することで、営業活動の標準化・最適化が可能となり、効果的で効率的な売上向上といった目的達成が実現します。

本記事では、営業プロセスを見える化する重要性やメリット、作成方法を解説します。

見える化した後の最適化と標準化の方法も紹介しておりますので、ぜひご覧ください。

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営業プロセスの見える化が重視されるようになった背景 

最初に、営業プロセスの見える化が重視されるようになった社会的背景を説明します。

企業における営業やマーケティング領域では、SFA や CRM、MA などのツールが普及し、データを活用した効率的・効果的な企業活動を行う素地は10年前から整っています。以下のアンケート結果にあるように、自社の SFA、CRM ツールの定着度は経営・営業部門ともに8割を超え、主に「顧客管理」分野でその効果を享受しています。

一方で、以下の「SFA/CRMの導入効果」にあるように、「新規顧客・見込み客の増加」や「既存顧客からの売上拡大」などの成果には結びついておらず、これらの支援ツールの本来の機能を活用し切れていないことがわかります。

図:SFA/CRMは課題を解決してくれるのか(Magic Moment 作成)

このように営業支援ツールを導入しても活かしきれない状況では、営業プロセスを確立・見える化することによりデータを最大限活用して、営業活動を効率化することが必要になってきます。

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営業プロセスとは?見える化の重要性とメリット

この章では、前述した社会背景において営業プロセスを見える化させることの重要性やメリットについて説明します。

営業プロセスとは?

営業プロセスは、リード発掘・獲得からアプローチ、訪問・商談、ニーズ把握、成約、アフターサポートといった、営業活動全体の流れのことです。営業プロセスの各過程で、営業担当者がその都度個人の判断で行動すると、営業活動は属人化し、担当者がいないと顧客対応ができない状況に陥ります。

組織として効率的で効果的な売上増や生産性向上を狙うには、情報やナレッジを共有できる営業プロセスの見える化が必要となります。

営業プロセスの見える化の重要性

営業活動が可視化・共有されずに個人に一任されたまま属人化していると、各営業過程のベストプラクティスを標準化できず、組織として効率的な営業活動が難しくなります。

また、組織全体としての課題や正確な営業状況が把握できないので、的確な経営方針の意思決定などに支障が生じてしまいます。

現状では、営業のプロセスを明確に規定している企業であっても、従来のオペレーションを分解するに留まったままで、情報を見える化・共有して、組織全体で目的や目標達成の効率化に取り組んでいる企業は、未だ少ないです。

人材などのリソースが乏しく、データを活かし切れていない企業が、成約や売上増などの KPI・KGI を効率的・効果的に達成するためには、営業プロセスを可視化して、組織全体で標準化・最適化することが、成功への第一歩となるのです。

見える化はマーケティングにも重要

特にデジタルマーケティング施策を行っている企業では、獲得したリードを効果的に CV(コンバージョン)につなげるには、事前に営業プロセスの設計を行っておくことが必須となります。

例えば、以下は事前に営業プロセスを設計していない場合に懸念される事項をまとめたものですが、仮にデジタルマーケティング施策において、1,000万円の予算を使ってサイトの改善や刷新、広告出稿などを強化したとします。

これによりサイトへの訪問者は2倍に増えたものの、訪問者に対する適切なアプローチを行っていないので、資料請求やコンテンツダウンロードなどの CVR は期待ほど伸びませんでした。

また、訪問者が広告からの流入なのか、オーガニック流入なのかも判断できません。そのため、資料請求者向けのウェビナーや展示会などを用意しても、思うような参加数を得られず、具体的な商談・成約につながらないケースとなっています。

図2:プロセス設計がなぜ重要か?(フロー図)

これは、顧客の購買プロセスを考慮して各購買フェーズに対する営業プロセスの設計を事前に行っていないために、サイト訪問者や資料請求者に対する適切なフォローができなかった失敗例です。

営業プロセスの設計方法について詳しくは後述しますが、予算をかけて施策を行っても、その効果を最大化する対策を会社として行わないと、投資が無駄になることを理解しておきましょう。

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営業プロセスを見える化するメリット 

営業プロセスを可視化すると、以下のようなメリットが得られます。

進捗状況の把握

営業一人ひとりの各案件の進捗状況や今後の行動が明確になるので、効率的な営業活動・管理業務が実現します。また、営業担当者同士がフィードバックし合ったり、悩みを共有・解決することで、より効果的な営業プロセスにブラッシュアップされます。

営業活動の最適化

営業プロセスを見える化・共有することで、属人的な営業ノウハウや行動パターンなどの定性的な情報も可視化されるので、各営業の課題テーマや全体のボトルネックなどが明確になり、的確な改善アクションをスピーディーに行えるようになります。

営業活動の標準化

優秀な営業マンの営業スキルやナレッジ・知見を共有できるので、組織全体のパフォーマンスの底上げにつながります。また、営業の担当変更があってもスムーズに引き継ぐことができ、新人教育・人材育成などにも活用できます。

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営業プロセス設計の方法:5つのステップ

続いて、具体的な営業プロセスの設計方法を、5つのステップに分けて説明します。

Step.1 顧客体験仮説設定

営業活動の効果を最大化する営業プロセスを設計する最初のステップは、顧客にどのような体験をしてもらい、どのようなニーズを満たすのかという「顧客体験」の仮説を、的確に設計することです。

以下の購買プロセスそれぞれのステージごとに、顧客がどのようなベネフィットや体験価値を望んでいるかの仮説を立てます。その仮説に基づき、ステージ別に適切な自社のアプローチ方法と営業活動を明確にすることが、営業プロセス設計の第一歩です。

図3:顧客の購買プロセスに合わせた営業プロセス例(Magic Moment 作成)

こうした顧客起点の一貫した営業プロセスの構築が、効果的な営業やマーケティング活動を実現し、顧客の LTV 最大化につながります。

Step.2 ビジネスプロセス設計

続いて、Step1で整理した顧客の各ステージ別に、具体的に自社でどのようなアクションを行うかを整理します。あくまでも顧客視点で、顧客の体験価値を最大化することを目的に、設計していきます。

また、営業やマーケティングセクションなどの販売部門だけではなく、業務の効率化を図るためにも、経理や法務などバックオフィス部門との連携や体制構築も行っておきます。どのようにデータを共有するかのシステム構築や、担当者及び自社に合った運用方法などの体制整備も、具体的に決めておくとよいでしょう。

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Step.3 データ設計

次に、効果的な営業活動を行うために必要なデータや、既存の MA ツールや CRM で得られるデータとの連携方法、社内の各セクションとスムーズな共有ができる方法などを決めていきます。データは、顧客行動や顧客からの利益、営業活動の流れや課題、次のアクション、生産性などが確認・共有できるような設計・構築を行います。

Step.4 オペレーション構築

続いて、Step2で行ったビジネスプロセスと役割分担に従って、人が担うパーツと、ツールで対応するパーツを分けて、実際の営業やマーケティング活動で活用できるようなオペレーションに落とし込んでいきます。この際には、全員の情報・ナレッジを見える化して、標準化することを意識して構築します。

Step.5 成果の評価とオペレーションの改善

設計した営業プロセスに沿って実際に行った営業活動の成果を分析して、一番最初に立てた仮説の見直し、改善を図ります。オペレーションやデータプラットフォームを改善していくことで精度を高め、より実践に合った効果の高い営業プロセスに仕上げていきます。

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営業プロセスを見える化した次のステップ:最適化と標準化

営業プロセスを可視化しただけでは効果的な営業活動の持続にはつながりません。ここでは、営業プロセスを可視化した後の、具体的なアクションについて解説します。

営業活動を最適化するための PDCA サイクルの実施

営業プロセスが的確に設計されていると、営業活動の各段階におけるボトルネックや改善すべきアクションが明確になり、定期的な PDCA を行い、振り返りを通じて改善を行うことで営業活動の最適化が実現します。

以下は、営業プロセス各段階の担当者別の活動成果を図る指標ですが、それぞれ定量的な側面と定性的な要素を含んでいます。正しく成果を把握するには、定量・定性の両方の指標を確認・分析する必要があります。

図5:営業組織の PDCA で見るべき指標(Magic Moment 作成)

これらの定量・定性の指標を活用して営業活動の最適化を行うには、プロセス全体を見通して、コントロールすべき指標を特定します。

図5:事業目標からコントロールすべき指標の逆算(Magic Moment 作成)

例えば、事業目標から逆算すると、コントロールできるのは定量的な指標である「商談数」と「架電・アプローチ数」となります。そのため、商談可能な数(1人あたりの上限×人数)が実施できる商談数の上限となり、最初にこの指標を設定することで、目標達成のための営業プロセス全体の最適化が可能となります。

営業活動を見える化、標準化するには

営業プロセスの策定により営業活動が標準化されると、トップセールスの情報やスキルが共有されるので、組織全体の生産性の向上につながります。また、低パフォーマンスの人材も成果が上がることでモチベーションが向上し、離職率の低下につながります。営業プロセスやアプローチ方法が可視化・言語化されることで、新卒人材の育成や中途人材のキャッチアップなどにかかる時間や手間の短縮も実現します。

このような標準化された「型」がある組織とない組織では、社内の営業ノウハウ、営業人材の育成、営業人材の評価、個別案件の状況把握、現場の営業姿勢、部門間の案件情報共有、営業成績などの面で、下記のような違いが生じます。型がある企業では、どのフェーズにおいても、効率的かつ効果的な営業活動が可能となります。

型で変わる営業組織

図6: 「型」がある組織とない組織 (Magic Moment 作成)

営業活動を標準化させるには、以下のような流れで型を作成します。作成には、トップセールスや成果を出している営業マンのアドバイスも参考にするとよいでしょう。

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型の作成方法

最初に、今までの評価・反省も踏まえ、最終的な KPI に合わせて、営業プロセスの段階・フェーズを決め、それぞれの達成目標を設定します。

次に、受注するために必要なヒアリング項目の洗い出しや商談の流れ、顧客との合意項目などを整理します。実際に商談の場をシミュレーションして精査するのもよいでしょう。

続いて、商談で参考になるスクリプトを作成します。録音した商談や電話内容を振り返って最適なトークを作り上げるほか、トップセールスのノウハウなどを加味して仕上げていきます。

ここまでできたら全体を見直し、実際の営業活動をするにあたって過不足がないかを確認します。

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営業プロセスを見える化し、型にすることが重要

  • 営業プロセスの見える化により営業活動が可視化して、属人的だった営業活動の標準化、最適化を実現できる。
  • 営業プロセスを設計するには、①顧客体験仮説設定 ②ビジネスプロセス設計 ③データ設計 ④オペレーション構築 ⑤成果の評価とオペレーションの改善 の5ステップで進める。
  • 営業プロセスを見える化したら終わりではなく、定期的なPDCAを行うことで営業活動の最適化を図る。また、営業活動の標準化のために、「型」を用意しておくことも重要。

SFA や CRM ツールを活かしきれていない企業や、人材・スキルなどのリソースが不足している企業にとっては、営業プロセスを確立・見える化して営業活動全体を可視化することで、属人的だった営業活動を型(一定の勝ちパターンの集積)に基づいて標準化しやすくなります。

これにより、組織全体のパフォーマンス向上につながり、効率的・効果的な成約や売上向上につながります。営業プロセスの確立、また、自社に最適な営業プロセスの確立には、顧客視点に立った購買プロセスを意識して、自社のリソースや環境などに合わせた内容で構築していきます。

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