サブスクリプションサービスの分析と戦略提案

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要約SUMMARY
  • サブスクリプション型のサービスを提供する企業が増えていますが、売り切り型のビジネスを行っている企業も新規事業として始めるケースも増えています。今後サブスクリプション型のサービスを契約する可能性のある方、始めようと思っている企業の方々はそのビジネスモデルを理解することが重要です。本記事では、ベンダー側、ユーザー側のメリットから、サブスクリプション型のビジネスモデルが他のビジネス形態とどう違うのか、課題や市場の動向まで幅広く解説していきます。

サブスクリプションサービスというと Netflix や YouTube といった動画配信サービスのイメージを思い浮かべる人が多いと思います。

しかし、サブスクリプションサービスのビジネスモデルは、業界の壁を超えて多くの大手企業や投資家が目をつけており、新規事業としてサービス提供を始める会社も増えています。メルセデスベンツもその一社で、電気自動車の速度加速サブスクリプション型のサービスを発表したと、2022年に BBC が取り上げています。

このように、あらゆる業界に展開を見せているサブスクリプションサービスとは一体何か、他のビジネスモデルと何が違うのか、サービスを展開する上で見落としがちな課題などを本記事では解説していきます。

サブスクリプションを立ち上げる際に、失敗しないために必要な考え方は下記の資料でもご紹介しています。計27枚のスライドで詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧ください。

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サブスクリプションサービスとは?

サブスクリプションとは、定額課金型のモデルであり、ユーザーは契約している間だけ一定期間内、契約範囲内の商品やサービスを使用できる権利を提供するサービスです。具体的には、皆さんの身近なものでは、 Netflix や YouTube といった動画配信サービスから定額制の食材配信サービス、Microsoft365 といったソフトウェアライセンスもサブスクリプションサービスであり、生活を行う上で様々なサブスクリプションサービスを利用しています。

ユーザーは、これまでサービスを利用する時に売り切り型の商品・サービスを採用していました。しかし、この売り切り型のモデルの場合はサービスを利用する際に初期コストが多くかかったり、サービスの維持やセキュリティ担保の面でもデメリットがありました。

SaaS ではサーバーや開発環境を用意するなどの初期コストが不要で、いつでも解約することができるというメリットがあります。したがって、ユーザーにとっては小さく始めることができます。

サブスクリプションサービスの仕組みは以下の図の通りです。

図1:サブスクリプションサービスの仕組み(Magic Moment 作成)

ユーザーは月額や年額で一定料金を支払い続けて、その期間にサービスや商材を利用できる権利を得ます。一方プロバイダー(サービス提供者)は、利用するユーザーのニーズを把握し、それを満たす「価値」を提供します。

定額制の名の通り、ユーザーが料金を払い続けるには、ユーザーが快適かつ求めているものに沿ったサブスクリプションサービスをプロバイダーは提供し続ける必要があります。

そのような状況を創出し、ベンダー側は顧客に対して継続利用を促すことで、収益を得るモデルとなっています。

サブスクリプションサービスの買い切り型との違い

サブスクリプションの特徴

  • 収益発生タイミング:契約が継続された時 or アップセル、クロスセルした時
  • 利益発生タイミング:収益が損益分岐点を超えた時
  • サービスのアップデート:ユーザーのニーズを吸い上げて優先度の高いものからアップグレードされる場合や、バグや競合サービスの動向に応じてもアップグレードされる
  • 解約のしやすさ:(オンライン上で解約手続きができるので)購入に比べて解約しやすい

サブスクリプションとその他サービスの違い

サブスクリプションとその他のビジネスモデル(レンタルやリース、リカーリング)との違いを理解していない人が多いので、本章ではその違いについて解説します。

レンタルとの違い

レンタルサービスとは:短期間、場所や商品を借りることに対して金額を支払うサービスであり、一時的なサービス利用のことを指します。長期レンタルというワードもありますが、レンタルは基本的には数日から数週間、長くても数ヶ月の期間を指すことが一般的です。

身近な例を挙げると、旅行期間中だけ数日間だけ借りるレンタル Wifi 、モバイルバッテリー、レンタカーなどがイメージがつきやすいでしょう。

期間が短期間で、コンテンツの種類は限られてしまうレンタルサービスとは異なり、サブスクは、(ユーザーが「利用する権利」を有している間は)期間やコンテンツの種類にとらわれずにサービスや製品を使用できる点が特徴です。

例を挙げた Netflix や Microsoft のライセンスなど、契約が完了し利用する権利を得ると、契約範囲内のすべての動画コンテンツや Officeサービスを利用できます。

また、サブスクリプションは借りる前提のレンタルとは異なり、サービスを必要な期間使い続けることを前提としているため、利用中のサービスがアップグレードされたり、利用範囲が変更になることもあります。

リースとの違い

リースとは?:長期契約で高額な商品を借りることに対して支払うことを指し、定義としては「企業に対して機械や設備を長期間賃貸する」意味を持ちます。

社用車、コピー機、医療機器など高額かつ大型の精密機器などを借りますが、利用期間も数年に及ぶことも多く、保証の内容もレンタルとは大きく異なります。

レンタルの場合、一般的に決められた期日内に返却されないと延滞料がかかりますが、リースの場合は、利用期間が長期にわたるため、利用期間中の保守サポートなどもサービス内容として求められます。

また、リースの場合対象のサービスが購入するには高額なため、リースファイナンシングのような割賦払いで企業のバランスシートにインパクトを与えすぎないような支払い形態が取られています。

リースの契約期間は長期間の複数年契約が一般的であり、一度契約してしまうと途中解約ができないケースがほとんどです。仮に途中解約できても違約金が発生します。

一方でサブスクは、短期間(数ヶ月から1年単位の契約がメイン)でも比較的自由に解約ができるため、ユーザー側にとっては始めやすく解約しやすいという特徴があります。

リカーリングとの違い

リカーリングとは?:一定期間内にサービスを使用した量に対して金額を支払うことをさします。従量課金制という表現もありますが、決められた単位のサービスをどのくらいの量や期間で利用したかで算出されます。

身の回りの例でいうと、携帯電話の使用料、電気代、ガス代など光熱費もこのカテゴリーに分類されます。全く利用しないとプロバイダー側に一銭も利用料が支払われないため、最低基本料金を設定している場合もあり、その上であとは使った量だけ課金されます。

リカーリングは使用した量によって金額が変動するため、必ずしも金額が一定ではないため、請求書ベースで支払いが発生することが往々にしてあります。一方でサブスクは、サービスや機能、料金の異なるプランが複数用意されており、ユーザーが購入したプランに応じて毎月決まった金額を支払うため、予算の申請等が計算しやすくなっています。

また、プロバイダー側は最低利用期間を1ヶ月や1年とサブスクリプションの場合は定めている場合が多く、株主への説明責任という点でも計算がたちやすいという側面があります。

下記の記事も参考になりますのでぜひご覧ください。

あわせて読みたい:サブスクリプションシフト 売り切り型から変わるべき営業プロセス【ウェビナーレポート】

市場の動向

『株式会社矢野経済研究所の調査』によると、サブスクリプションサービス国内市場規模(消費者支払額ベース)は 2024 年度には 1 兆 2,422 億 4,000 万円になると予測されています。また、 2021 年度のサブスクリプションサービス国内市場規模は前年度比 10.6 %増の 9,615 億 5,000 万円であり、大きな成長を遂げています1)

具体的な内訳をみると、前年度と比較して成長した市場は「衣料品・ファッションレンタル」「外食サービス」「生活関連サービス」「多拠点居住サービス」「デジタルコンテンツ」「定期宅配サービス(食品・化粧品類)」の 6 市場全てでした。

つまり、 IT サービスだけではなく他の市場全てにおいてサブスクリプション型のビジネスモデルが浸透してきており、サービス形態が買い切り/売り切り型のモデルから大きく変化していると言えるでしょう。

三菱 UFJ リサーチ&コンサルティングの調査』によると、最も伸びている市場は動画定額配信サービスであり、その次が音楽定額配信サービスという結果が出ています2)

以上の記事より示唆されることは以下の通りです。

まず、サブスクリプションサービスはあらゆる業種や業界で展開されており、市場は年々増加傾向にあるということで、その中でも最も利用されている定額制サービスは、動画配信のサブスクリプション( SVOD )とのことです。しかし、消費者向け( BtoC )だけでなく、事業者向け( BtoB )のサブスクリプションサービスを支援するシステムも数多く登場しています。

業種、業界問わずでもサブスクリプションサービスという料金形態は顧客から好感を得ていいますが、その背景として、消費者の価値観が変化しており、今までより「心の豊かさ」を重視するものが増えていると考察できます。その結果、カスタマーサクセス、カスタマーサティスファクション、カスタマーエクスペリエンスという言葉が重要視されるようになっているのです。これは、顧客はものを買うのではなく、こと、つまり優れた顧客体験を求めているということに他なりません。

下記の記事も参考になりますのでぜひご覧ください。

あわせて読みたい:今更聞けない サブスクリプションビジネスとは? トレンドや特徴を徹底解説

ベンダー側のメリット

継続的に売上を得られる、長期的な収益を予測できる

サブスクリプション型のサービスをベンダー側のメリットという点で見てみると、ベンダーは解約されない限り売上がたち続けるということがまず挙げられます。つまり、売上が一定の間隔で繰り返されて利益を「回収」できる(ストック型)ため、売上の目処が立ちやすいというメリットがあるでしょう。

この安定して売り上げを立てることができるという点は、投資判断や経営戦略を考える上で非常に重要です。また、株主に対する説明責任という点でも業績のボトムラインをある程度精度を高く伝えられるため非常にメリットがあります。

サブスクリプションサービスの仕組みは、一回の受注で全ての利益が確定するフロー型ではない点が特徴です。例えば、フロー型では一回の受注で 120 万円の売り上げがたちますが、それに対してストック型は一回の受注で 10 万円( 1 年間の継続利用を予想)といった差があります。そのため、 MMR (月次経常収益)という、月ごとに繰り返し得られる収益の計算が求められます。

また、 MMR をその時点での顧客数で割ることで ARPU (平均顧客単価)が計算できるので、一人当たりの期待収益がわかり、分析や営業の効率化、カスタマーサクセスの必要なヘッドカウントを決める際にも参考になるでしょう。

このようにストック型のサブスクリプション型サービスでは、売上の見込みが立ちやすいため、逆算したマーケティング戦略が立てやすくなります。

しかし、メリットばかりではありません。ベンダー側が予想していた期間を満たすことなく、途中で解約されてしまう場合もあるため、よって、あくまで受注によって得られる収益は契約で確定している期間の数字のみに限定し、更新を前提とした楽観的な数字を用いることは避け、過去の更新率を踏まえた期待値で見積もっておくことも重要です。

逆算したマーケティング戦略の例を参考までに列挙すると以下の3つがあります。

  • プロモーションの促進
  • 価格・製品戦略
  • 各チャネルに必要な行動量を加味したリソース配分

これらの戦略はサブスクリプション型のビジネスモデルだけに適用されるだけではありませんが、ストック型の収益モデルを踏まえた上で取ることもできるため、ビジネスモデルに合わせた選択をとっていくと良いでしょう。

顧客の使用状況や顧客情報から、定期的にサービスを改善できる

サブスクリプション型のビジネスの場合、ユーザーが継続利用してくれる場合、顧客情報(例:利用履歴、年齢、性別)を蓄積できる点もメリットの一つと言えます。このようなユーザーの属性上のデータの分析を行い、推定 LTV の高い顧客像を設定することができれば、今後アプローチすべきかどうかを判断することに役立ちます。

推定 LTV の高い顧客像とは、自社のサービスを使うことで価値を感じ、自社に愛着を持つ推定の LTV が高い顧客のことです。この推定の LTV が高い顧客の当たりをつけ、その確度を高めた上で、見込み顧客としてアプローチをかけつつ、かつ、費用対効果の高い戦略を選択して活用することで期待する収益を見込める可能性も高まります。

ユーザー情報が蓄積されていくと、結果として、定期的に商材のアップグレードをどのようにすべきかの参考になりますし、営業やマーケティング、商品開発などに活かすことができます。

ユーザーが利用するソフトウェアは全てプロバイダー側で管理されているため、サービスの改善が行いやすい点も特徴です。サービスの定期的な改善は既存の顧客の満足度を高めて、解約率を下げることに繋がるため、顧客の声を吸い上げ安い点は非常にメリットがあります。

解約率を下げると、どんなメリットがあるかというと、何よりも既存顧客の維持に繋がるため、ベンダー側としては売り上げを継続することができます。既存顧客の維持のメリットにもう少し触れると、既に自社商品やサービスを活用してくれているため、信頼関係ができており、少ないコストで他のサービスの受注につなげることができます。

一般的に営業をする場合、完全に新規の顧客を獲得するより、既存顧客からのアップセルやクロスセルの方が成約率も高く、営業リソースや商談日数も少なくすみます。新規受注は全体のパイを増やすためには必須ですが、既存顧客からの追加受注を優先的に行うという判断も重要です。

業種や業界、年齢層問わず新規参入しやすい

サブスクリプションサービスは、自社が保有する既存の商材でもさまざまな形で取り入れることが可能です。例えば、コロナ禍で衰退している交通事業者が始めたモビリティに関するサブスクリプションサービス( MaaS 推進や交通サービスの DX 化)が挙げられます。

新規事業としてサブスクリプション型のサービスを提供することを困難と思う事業者もいるかもしれません。しかし、既存で展開しているビジネスに少しだけ変化をつけることで、サブスクリプション型のサービスを始めることも十分に可能です。そのためには、サブスクリプション型ビジネスを理解し、自社であればどのような形でサービスとして提供可能かを検討し始めることが重要です。

下記の記事も参考になりますのでぜひご覧ください。

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サブスクリプションサービスの課題

収益化までに時間がかかる

サブスクリプションサービスは顧客にとってコストパフォーマンスが良い一方で、企業側は原価やオペレーションの採算が取れないことが多いのがビジネスモデル上の課題です。採算が取れないとは具体的に何を言っているかについてですが、ユニットエコノミクスが 3 未満の状態のことを指します。

ニットエコノミクス将来の損益分岐点を把握する指標のことで、計算方法は以下の式で算出できます。

ユニットエコノミクス= LTV / CAC

LTV ( Life Time Value ):顧客が自社と取引を始めてから終了するまでの間にもたらされる収益の総量を示す指標のことで、「顧客生涯価値」ともいいます。

CAC ( Customer Acquisition Cost ):ある一定期間において、一顧客を獲得するのに必要な総コストを示す指標のことで「顧客獲得単価」ともいいます。

ユニットエコノミクスが 3 未満の状態が続くと、(下の図)水色の曲線のようになってしまうため、受注にかけたコスト回収が長期化することになり、財務的に不健全な状態が長くなります。その結果、収益が立つのが後回しになってしまい、赤字期間が長期化した状態になってしまいます。つまり、 LTV < CAC の状態となり、顧客獲得単価が高い城田が続き、赤字が増加してしまうのです。

図2:サブスクリプションサービスは収益化に時間がかかる(Magic Moment 作成)

解約を防ぐためにカスタマーサクセスが欠かせない

サブスクリプション型のビジネスを展開する上で取るべき施策として、解約率を低下させることがもとめられます。解約率を最小化するためには、顧客のロイヤルティを高めることが不可欠です。では顧客のロイヤリティを高めるにはどうすべきかについてですが、そのためには「顧客体験( CX )の改善」が必要不可欠になるのです。

XM Institute の調査『ROI of Customer Experience, 2020』 によると、米国 10,000 人の消費者に 20 業界 319 社の米国企業とのカスタマーエクスペリエンスに関する調査・分析を行った結果、〔顧客評価スコア〕と〔追加購入〕の相関係数が 0.91 という強い正の相関関係がありました3)

つまり、優れた顧客体験と顧客ロイヤルティには強い相関があり、特にサブスクリプションのビジネスを広く展開しているソフトウェア業界において、この相関関係はより顕著といえるのです。

ロイヤリティの向上や、優れた顧客体験と表現しましたが、顧客体験の改善とは何か、具体的には下記の2つを実行する必要があります。

  1. 顧客の不満や課題を解消したいというニーズを提供するサービスで満たすこと
  2. 顧客のニーズを満たすためにカスタマーサクセスを置いて伴走支援を行うこと

2のカスタマーサクセスの役割は主に以下の4つです。

成功体験の継続による顧客満足度の向上、心理的ロイヤルティの創出

具体例として、製品・サービスの購入により顧客の課題が解決されると、その企業に対して安心感や愛着を感じるようになります。安心感や愛着を感じたら、顧客満足度が向上し、そのサービスを提供している企業へのロイヤリティ(忠誠心)が向上します。その結果として、既存顧客が自社のサービスをできるだけ長く継続するようになるのです。

企業に対して信頼関係があることによる、他製品やサービスの追加購入

Apple 製品を具体例で挙げると、ユーザーは製品を提供している Apple 社に対し信頼を強めていきます。いわば Apple 製品のファンになった方は、スマートフォン以外の他の商品である、 Apple Watch や Mac Book も Apple 製品で揃えるようになります。そこで優れた顧客体験を通し、企業への信頼関係が高まると、 Apple が発表する新製品に注目し、さらにApple 製品を買い揃えるようになるといった理想的な関係が構築されていくのです。

口コミによる新規顧客の獲得

心理的ロイヤルティが創出され、既存顧客が製品・サービスだけでなく企業のファンになると、他者への紹介や口コミで好意的な意見を発信してくれるようになります。例えば Amazon などの商品レビュー、食べログの口コミアプリ、個人ブログ、電子掲示板、YouTube などの媒体を用いて、ファンが商品・サービスを他者に推薦する場合をイメージしてもらえるとわかりやすいでしょう。

高評価の口コミをみた見込み顧客は、購買意欲をそそられ、購入を検討していた場合、購買をしようとしていた場合、口コミによって背中を押され購買に至ることがあります。結果として、このような口コミが、多かれ少なかれ新規顧客の呼び込みに繋がるのです。

また、『Harris Poll Online』による調査では、 2,000 人のアメリカ人うち、 80 %以上が購入の際に友達や家族からの推奨を求めているという結果が出ています4)

改善施策の PDCA を回す

顧客のデータを分析することで、顧客の満足度やニーズ、改善点を発見することができ、施策改善の PDCA が回せるようになる点もカスタマーサクセスの大きなメリットです。例えばヤクルトスワローズが顧客満足度調査を行った際、地方のファンクラブ会員はメリットを感じている割合が少ないことがわかったのです。その分析結果を踏まえ、地方ファン向けのイベントを積極的に開催するように改善したところ、 2014 年から 2016 年にかけてファンクラブの会員数は約 2.5 倍になったそうです。

このようにデータ分析の結果、改善点を明らかにすることができる場合があります。ただ、明らかになってからが重要で、その改善点を解決するために具体的な方法をいくつか考え、実際に試し、結果が得られるまでの試行錯誤のプロセスを実際に行うことが重要になってくるのです。

カスタマーサクセスは顧客に寄り添い、伴走支援を行っています。伴走支援を行うことによって顧客データが正しく取れるようになり、データから傾向などを導き出し、さらに分析を行うことで、予測や管理や改善ができるようになります。したがって、カスタマーサクセスはサブスクリプションサービスを運営する上で欠かせない役割と言えるのです。

下記の記事も参考になりますのでぜひご覧ください。

あわせて読みたい:カスタマーサクセスが握るサブスクリプションの未来 – Accel by Magic Moment

サブスクリプションサービス戦略

サブスクリプションサービスを取り入れ、サービスとして展開するようになった場合、そのマーケットはさまざまな企業も合わせて参入するようになります。結果としてそのマーケットは加速度的な成長が期待できる場合が多くなる一方で、競争力が上がっていき、サービスを提供する側は継続的な改善が求められるようになるのです。

自由度や利便性を高くする

厳しい競争を勝ち抜くためには、顧客のニーズに合わせたサービスを展開し、柔軟な対応が求められます。さらに、顧客のニーズを満たすだけでなく、環境問題・食料廃棄問題・女性のエンパワーメントなどの社会の流れにも合わせることで、顧客の気づいていない新たな価値を創出することも求められるでしょう。そのような価値創出が差別化戦略にもつながるため、事業者は独自色を出しながら、改善を続けていく必要があるのです。

訳あり野菜や果物のサブスクリプションボックスのサービスが良い例となります。アメリカで興った仕組みですが、訳あり野菜や果物が事業者によって自由に選択され、ボックスに入った状態で届きます。商品として提供できるクオリティでなかったとしても、今まで廃棄されていた野菜が有効活用されることは環境問題や食料廃棄問題の改善に繋がります。

また、完璧でないけど十分に商品として耐えうるレベルの廃棄食料品を安価で購入することができるなら、それらを求める顧客のニーズも同時に満たしています。このようにさまざまな課題を解決しつつ、顧客のニーズを満たすラインを見極めることで、新たなサブスクリプションサービスとして人気が出ているビジネスもあるのです。

ユーザーがロイヤルティを高めるようなブランドストーリーを用意する

Origin and Hill Holiday によると商品や宣伝がストーリーとセットになっている場合、消費者は商品の種類に問わず好意的な反応を示していることが明らかになっています。このようなケースでは、承認だけではなく、ブランドの歴史や在り方、商品の開発秘話などがストーリーとなり、それらを含めて優れた顧客体験につながっているのです。

例えば、今治タオルは公式サイトにて今治タオルの技術者、経営者、使用者のストーリーを公開しており、自社ブランドの技術力やブランド創設の背景などのストーリーがファンの定着、ブランドの価値に繋がっています。これこそがモノ売りではなく、コト売りの真髄でもあり、見えないけれどもその商品に対する思いやストーリーそのものへの共感を呼び込むコトで、ロイヤリティを高めていくことができるのです。

決済や手続きなどの簡略化

著書仲野佑希による『ザ・ダークパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン』では、登録は簡単なのに解約が難しいサブスクリプションサービスは長期的に、企業のブランドや信頼の低下に繋がることを明かしています。

契約までのプロセスや、解約までのプロセスは、優れた顧客体験を提供できる絶好の機会の一つと言えます。企業はできれば解約をして欲しくないという思いはありますが、解約を決めた顧客が、解約までのプロセスに面倒で複雑かつやたら時間がかかったというネガティブな体験をした場合どうなるでしょうか。その場合、口コミでも周囲の人にネガティブな情報を流してしまい、新規顧客となる可能性を下げてしまうかもしれません。また、解約した顧客は、時間を経たとしてももう 2 度と顧客として戻ってこないかもしれないのです。

しかし仮に解約までのプロセスがスムーズにいき、快く解約ができ、また利用してほしいというメッセージがさりげなく、かつ名残惜しく伝えられたらどうでしょうか。その場合、時を経てまたこのサービスを使いたいと少しでも思った時、解約プロセスがスムーズだったポジティブな顧客体験が思い起こされ、もう一度サービスを使っても良いと顧客が思ってくれるかもしれません。

おすすめのコンテンツがレコメンドされる機能をつける

顧客の閲覧履歴や購入履歴などのデータを通して、顧客の購入の可能性が高い商品・サービスをダイレクトにおすすめする機能は効果的に新規顧客の獲得につながる可能性があります。ポップアップなどで新機能や新しく追加された便利な機能をお知らせしたり、一定の画面遷移のロジックに従ってガイダンスをつけることで、顧客の目に止まりやすくなります。顧客が新機能を認知してくれなければ、顧客単価や購入単価のアップに繋がりませんので、このようなレコメンド機能を使って、成約率を少しでも高めることは重要です。

しつこくレコメンドをされると逆効果ですが、効果的に適切な頻度でレコメンドをされることで、サービスを使いたくなるよう促すことができるでしょう。

以上、サブスクリプションサービスの分析と戦略提案を行ってきました。

こちらの資料では、サブスクリプションビジネスにおいて欠かすことのできないデータ経営の考え方について紹介しています。より詳細な情報をご覧になれますのでよろしければお役立てください。

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《引用文献》

1) 株式会社矢野経済研究所. 「サブスクリプションサービス市場に関する調査を実施(2022年)」. 株式会社矢野経済研究所 プレスリリース. 2022-06-08. https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2997, (参照 2023-03-01).

2) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング. 「サブスクリプション・サービスの動向整理」. 2019-12-09. https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/meeting_materials/assets/internet_committee_200205_0002.pdf,(参照 2023-03-01).

3) Moira Dorsey, David Segall, and Bruce Temkin. “ROI of Customer Experience, 2020”. Qualtrics XM Institute Research. 2020-08-18. https://www.xminstitute.com/research/2020-roi-cx/, (参照 2023-03-01).

4) Jay Leonard. “Numbers Don’t Lie: What a 2016 Nielsen Study Revealed About Referrals”. Business2 Community. 2022-11-11. https://www.business2community.com/marketing/numbers-dont-lie-2016-nielsen-study-revealed-referrals-01477256#pGFmQJRjciUVK7qw.97, (参照 2023-03-01)