インサイドセールスの運用・マネジメント方法に関するポイント【ウェビナーレポート】

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要約SUMMARY
  • インサイドセールスの構築では顧客の段階に応じたコミュニケーションを定義づけるということが先決。
  • マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの役割分担をしっかり定義付けすることが必要。
  • 成功パターンを統計的に抽出するために、データを自動的に収集しておくことが必要。
  • インサイドの分析を自動で行える DX ツールを使うと、成功パターンを導き出せる。
  • リードが枯渇している場合は、プロダクトそのものを見直すことも必要。

Magic Moment では「インサイドセールスの都市伝説<解決編>」と題したウェビナーを開催しました。

前回のウェビナー「インサイドセールスの都市伝説」では、成果創出を阻害するインサイドセールスの誤解されやすいポイントを中心に、中長期的な視野を加味した、『データ活用』と『再現性』を重視した仕組みづくりが大切であることを解説しました。

今回は、データ活用と再現性を重視した仕組みをいかに実現していくのかについて、具体的な運用・マネジメント方法について、ウェビナーの一部を抜粋してご紹介します。

インサイドセールス組織の立ち上げ

顧客視点での仕組みづくり

インサイドセールス組織を立ち上げる際に真っ先に考えなければいけないのは「この段階のお客さまにとって、どのようなコミュニケーションが重要なのか」「潜在ユーザー層へのコミュニケーションはどうすべきか」などを検討することです。

つまり、顧客の段階に応じたコミュニケーションを定義づけるということです。

そこから、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールスの役割ごとに細かいプロセスや運用ルール、KPI などを順に決めていきます。これらの役割ごとの細分化は企業の現状の体制やインサイドセールスに何を期待するのかによって変わってきます。

現状とインサイドセールスを立ち上げる目的、そのギャップを明確に言語化しておくことが大切です。一般的なインサイドセールスの分業体制をそのまま導入しても成果が出ないことはよくあります。

また、この組織づくりで外せないポイントは、あくまで顧客を中心に据えることです。先に仕組みだけを取り入れるのではなく、顧客視点に立って自社にとって最適な仕組みを考えることが重要です。

自社に近い会社の事例を取り入れる

インサイドセールスの仕組み作りで参考になるのが「ターゲットとする顧客が自社と近い会社」の事例です。

SaaS 系の企業であれば、自社のホームページに導入事例を載せていることが多いでしょう。それら導入企業のロゴをよく見てみると、特定の業界の企業に顧客が集中していることが見てとれるでしょう。それがその会社の得意な業界や手がけようとしている領域です。

これらが自社のターゲットと近い場合は、同じようなインサイドセールス組織が機能する可能性も高いと言えます。その場合、その会社の出している記事やウェビナーで紹介されている事例を取り入れることは、自社のインサイドセールス組織づくりをする上で有効な手段となります。

組織の立ち上げ期にあたっては、ノウハウもないため、自社にとってのベンチマークを用意することが好ましいです。

スモールスタートで実績を作る

自社に近い企業の事例を集めていくと、比較的簡単に自社でも取り入れられそうな事例が1つか2つはあるものです。それらの施策を模倣して小さく始めてみることが、投資コストも少なく有効です。いきなり、多大な投資でスタートをすると、組織体制が自社のサービスや顧客にあっていない場合、サンクコストを生じさせる恐れがあります。

また、スモールスタートで実績を作ることで、インサイドセールスの必要性を経営層に示すこともできます。スモールスタートでも、何が実現したら成功なのかという定義づけはしっかりとしておきましょう。

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データの活用

ここからはインサイドセールスで蓄積されたデータの活用方法や、成果を出すための仕組み化について解説します。

インサイドセールス組織において、営業担当者ごとの成果にバラツキがある状態はよくありません。 KPI の達成度のばらつきがある場合、複数の指標に基づいて営業データを見比べることが必要です。具体的には以下のような指標です。

  • リード数
  • リードのフォロー完了率
  • リードの商談成功率
  • 架電数やメール送信数
  • アクション合計数
  • 商談獲得件数
  • 有効商談数
  • 受注数
  • 受注金額

これらの指標と、インサイドセールスの行動や顧客との会話内容を突き合わせることで、KPI を達成できている営業担当とできていない営業担当の差分を明らかにすることができます。

しかし、先に挙げた指標に加えてさらに細かく見ていくと、インサイドセールスの分析指標は20〜30個くらいあります。こうした分析をインサイドセールスひとり一人について、人力で調べていくことは物理的に不可能と言えるでしょう。

そのため、インサイドセールスの分析を自動で行えるツールが必要となります。ツールを活用することで、営業担当者ごとに異なる成功や失敗のパターンを分析することができます。

そこで得た示唆をインサイドセールスへのフィードバックや研修で活かし、取るべき行動や話法などを共通化することでばらつきを抑えることに繋がります。

また設定すべき KPI は企業ごとに異なりますが、例えば電話が前提だとすると「今お時間頂けますか?」といったファーストトークと、セカンドトーク(さらに詳しい説明)を比較・検証することなどもできます。

アポイントは取れるものの成約に繋がらない場合は、KPI として提案化率が問題になることもあります。あらかじめ「こういう項目や基準を満たしたリードだけをセールスチームに渡します」と決めておけば、リードの質が上がり成約率が高まることも考えられます。

KPI をどこまで絞るかは、会社組織によって異なります。成果や行動、時間軸など、どこに着目するのかは千差万別です。

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教育・マネジメント体制

マネージャーをアサインする上でのポイント

マネージャーになる人は営業経験があり、量的活動で成功を収め、さらにその量的活動が質に転換した経験をもつ人が望ましいです。また管理職経験があり、統計処理ができれば一層優位に働きます。

ただ、マネージャーはデータを分析するだけではなく、インサイドセールスのモチベーションを維持させることも必要です。

メンバーのキャリアパスを示したり、インサイドセールス内でキャリアを積める仕組みを構築することも求められます。インサイドセールスに成功している会社では、インサイドセールスが社内で若手の登竜門になっていることが多いことも要因となります。

マネージャー自身もプレイヤーとして動く能力があり、改善や改良を苦としない人を置いた方が良いでしょう。

育成のポイント

これまで説明してきたように、データが分かる人とは、エジソンのように失敗を成功に変えていける人です。失敗の知見を蓄積していくことで、量が質に転換する場面が訪れます。

また、マネージャーとしては営業経験があった方がプレイヤーとしても動けます。そうしたフットワークの軽さと、データを用いて改善を加える文化をメンバーに植え付けることが、育成におけるポイントとなります。そうすれば、インサイドセールス部門で巣立った人材を、他の部門に輩出していくことができます。

例えば、インサイドセールスから巣立ったメンバーが経理に行ったとしても、ロジカルに業務改善について話すことができるでしょう。人は歳を重ねるにつれて、改善改良が苦になってくることもあります。そうならないためにも、若いうちからデータを用いたロジカルな思考ができ、業務に改善が加えられる人材を育成する必要があります。

このように、インサイドセールスのマネージャーにはさまざまなスキルや能力が求められます。ただし、この領域では人材不足を背景として、BPO 会社にインサイドセールスを依頼する企業も増えています。BPO 会社などと肩を並べて競争していくためにも、インサイドセールスのマネージャーには、エース級の人材を配置する必要があります。

データ分析に基づいたインサイドセールスの重要性について、先に説明しました。そうしなければ、根拠無く出だしから質の悪いリードを、全員で追いかけるようなことになりかねないからです。そうならないためにも A/B テストを使い、成果を検証することが有効です。  

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新規顧客獲得の施策

最後に新規顧客を獲得するための施策について解説します。まず、新規リードを獲得するうえで、ターゲット設定が最も重要になります。ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)と言う言葉がよく使われる通り、コンタクトをする顧客を定義する必要があり、獲得したリードのどこにコンタクトをとるべきか優先順位をつけることも必要です。

あるセグメントの顧客に対しては、この文脈で説明すれば行動変容が起きうるということが分かっていれば、確度の高い提案が可能になります。 そこでは、マネージャーが顧客のセグメントの分析に基づき、資料や手順をインサイドセールスに示すことが求められます。

また、日本企業においては、マーケットを定量的に把握していないケースも見受けられます。自社の顧客について、感覚的にしか掴んでいないということです。そこで ABM のツールなどを使い、自社の既存顧客をモデリングで入れると、親和性の高い顧客を可視化することが求められます。

インサイドセールスをめぐっては、リードが枯渇していることもありますが、データ分析に基づかない思い込みの可能性もあります。ただし、ABM のツールによる分析の結果、白地の顧客(いわゆるホワイトリスト)が見つからないのであれば、プロダクトそのものを改変する必要があります。

まとめ

インサイドセールスの構築では顧客の段階に応じて、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの役割分担をしっかり定義づけすることが必要です。そのうえで成約までの成功パターンを統計的に抽出するために、データを自動的に収集しておくことが必要です。経験豊富なマネージャーの下で、インサイドセールスの分析を自動で行えるツールを使うと、成功パターンを導き出すことが可能になります。


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