新規顧客と既存顧客のどちらを優先すべき?それぞれのポイントについても解説

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要約SUMMARY
  • 新規顧客の開拓は継続的な企業成長のためのリスクヘッジ、既存顧客の維持はコストをかけずに手っ取り早く売上や利益をあげることに繋がり、両方とも企業成長に欠かせない要素である
  • 新規顧客獲得と既存顧客の維持はどちらを優先するべきかは、企業のおかれた状況によって変化する。それぞれのメリットを理解し、自社のおかれた立場を踏まえ、バランスを取る。
  • 新規顧客獲得にはSTP 分析(「 Segmentation (市場の細分化)」「 Targeting (ターゲットの明確化)」「 Positioning (他者との差別化)」、既存顧客の維持はカスタマーエクスペリエンス(CX)を高める取り組みが有効である

「新規顧客獲得」と「既存顧客の維持」、多くの営業責任者がどちらを優先すべきかという判断で頭を悩ませているかと思います。

実はどちらが適しているかというのは、その企業のおかれた状況によって変化します。

そこで本記事では、「新規顧客獲得」と「既存顧客の維持」を重視するべき背景や企業の状況に応じたバランスの取り方、それぞれを実現する具体的な方法について解説します。

「顧客との関係性をどのように育むのか」

「どのように強い事業をつくるのか」

などを知り、顧客のロイヤリティを向上させ、「既存顧客の維持」による継続的企業の成長に関心のある方は、以下を参考にしてみてください。

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新規顧客の獲得とは

新規顧客開拓とは、過去に取引で関わったことのない顧客に対して、新規利用してもらうために行う営業活動のことです。

自社商品やサービスを認知していないユーザーに対して、一からアプローチをしかける必要があるため、難易度が高いと言えます。ハードルの高さに悩む担当者もいるはずです。

既存顧客だけで収益を長期的かつ継続的に得られるのであれば、経営上問題はないですが、すべての既存顧客が永遠に利用してくれる保証はありません。

既存顧客との取引にのみに依存してしまうと、契約数の減少とともに収益も先細りとなり、じわじわと衰退することに繋がります。

既存顧客が離れていくリスクを完全に排除することは不可能ですので、企業を成長させるには、新規顧客へアプローチを行い、サービス展開の幅を広げておきましょう。

新規顧客獲得営業の代表的なアプローチ方法には、プッシュ型営業(アウトバウンド型)とプル型営業(インバウンド型)が存在します。

プッシュ型営業とは、顧客に向けて自社の商品やサービスを積極的にアピールしていく営業手法で、アウトバウンド型営業ともいいます。

プッシュ型営業には、

  • テレアポ
  • ダイレクトメール
  • 飛び込み営業

などのような方法が該当します。

プッシュ型営業は、顧客側ではなくアプローチする側のタイミングで営業活動を行うため、顧客の欲するタイミングと合わなければ十分な効果を発揮できません。

そのため、プッシュ型営業を効率よく行うには、営業活動に時間や労力を割く必要があり、事前にターゲットの絞り込みをしておくことが重要です。

プル型営業とは、プッシュ型とは反対に顧客からのアプローチを待つ営業スタイルです。

何もせずにただ待つのではなく、顧客からの問い合わせや相談等のアクションを喚起するための情報発信等を行う、インバウンド型での営業手法になります。

プッシュ型営業の場合は、顧客リストからの集客になりますが、プル型営業であればインターネットやSNSを通じて地域などの枠を限定せずに、幅広いアプローチが可能です。

具体的な情報発信の方法としては、

  • SNS
  • 広告
  • プレスリリース配信
  • ホームページ運営
  • オウンドメディア運営
  • ウェビナーの実施
  • 展示会の参加

などが該当します。

顧客が興味関心をもちそうな情報を発信し、顧客の理解度や温度感を高めていきます。

顧客側のタイミングで有益な情報をキャッチしてもらえますので、受注確度の高い商談を実現し、営業効率の向上や営業担当者の業務負担軽減にも役立ちます。

新規顧客開拓を成功させるポイントは、以下の記事をご確認ください。

あわせて読みたい:営業が新規顧客開拓を成功させるポイントとは?

既存顧客の維持とは

既存顧客維持とは、既に取引をしている顧客の自社へのロイヤルティを高め、リピート購入を促進することを目標に、既存の顧客とのより良い関係を築くことに重点を置くことです。

既存顧客が重要とされる背景には「1:5の法則」という法則があるためです。

マーケティングにおいては、新規顧客の獲得と既存顧客の維持はどちらも大切ですが、実は新規顧客に販売するコストは既存顧客に販売するコストの5倍かかるとされています。

既存顧客はすでに自社商品やサービスを活用してくれているので、信頼関係ができており、少ないコストで他のサービスの受注に繋げることが可能です。

そのため、手っ取り早く売上や利益をあげるためには、新規顧客の獲得だけでなく、「既存顧客の維持」が有効と言えます。

また、顧客離れを5%防ぐと、利益はその5倍の25%も改善する「5:25の法則」という存在もあり、「既存顧客の維持」はより重要であることがわかるでしょう。

このように新規顧客の獲得ばかりに力を入れていては、売上を伸ばすことはできません。既存顧客を優良顧客にすることで、会社に継続して売上や利益がもたらされることとになります。

特にサブスクリプション型サービス「 SaaS ビジネス」においては、「継続して使用してもらう」ことが何より大切です。

企業が継続的に成長するには既存顧客へ継続的に価値提供を行い、利益率を高める必要があります。そのため、サブスクリプション型のサービスには、LTV を指標とする考え方が必須です。

近年では LTV を高める方法として既存顧客への「クロスセリング」と「アップセリング」というアプローチが注目されています。どちらも顧客単価を上げるためのセールス手法です。

クロスセリングは、顧客が購入しようとしている商品に関連した商品を提案し、合わせ買いを促します。

  • 一緒に購入するほうが得だ
  • もう1品だけ追加で購入しよう

などと感じてもらえるよう、ユーザーニーズを満たした商品を提案するのがポイントです。

ハンバーガーショップを例にあげて考えてみましょう。

顧客がハンバーガーを単品で購入した際に「一緒にポテトはいかがですか?」と一言添えて尋ねること、これがクロスセリングになります。

アップセリングは、顧客が購入を検討している商品よりも、上位モデル・高価格帯の商品を提案する手法です。

  • 少し金額を上げれば、もっと欲しいと思える商品が買える
  • 長い目で見ればこちらの方がお得かな…

顧客へ上位モデルを提案した際、上記のように思ってもらえればアップセルの成功率を高められます。

クロスセリングに合わせて、ハンバーガーショップを例に考えてみましょう。顧客がポテトを注文した際に、「+100円でSサイズからMサイズに変更できますがいかがでしょうか?」という提案がアップセリングです。

他にも、サブスクリプション型の映画配信サービスを購入してくれた方に、「さらにプレミアムな映画見られるお得なプラン」をおすすめすることが該当します。

自社の商品を気に入ってくれた人をさらに取り込みたいときにも効果的で、客単価の向上を期待できます。

サブスクリプションビジネスについては以下の記事をご確認ください。

あわせて読みたい:今更聞けない サブスクリプションビジネスとは? トレンドや特徴を徹底解説

新規顧客開拓営業と既存顧客営業どちらを優先するべきか?

ここまで新規顧客開拓営業と既存顧客営業にそれぞれ焦点をあてて、解説してきました。「結局、どちらが大切なのか?」と疑問に感じた方もいるかもしれません。

前提として、新規顧客開拓営業と既存顧客営業はどちらも重要です。なぜなら自社が属している産業の特徴や自社の規模、フェーズによって優先するべき手法は異なるからです。

自社に適切な戦略を取るためにも、それぞれの特徴を確認しておきましょう。

新規顧客のメリット

新規顧客開拓営業のメリットには

  • 収益の増加
  • ブランド認知度の向上
  • 顧客数の増加

などがあります。

新規顧客開拓営業は、特に急成長を狙うスタートアップ企業や新しい事業領域に参入する場合に優先するべき方法です。

ただし、既存顧客の維持よりもコストがかかる取り組みであるため、自社の予算や現実的かつストレッチな目標値から逆算して取り組むことが大切です。

また、既存顧客を失うリスクは絶対に避けて通れない要素なので、新規顧客開拓は必ず実施する必要があると言えるでしょう。

既存顧客維持のメリット

既存顧客維持のメリットには

  • マーケティングコストを抑えることができる
  • 利益率を高めることができる
  • ブランドに対するロイヤルティを促進することができる
  • リファラルによる新規顧客を獲得できる

などがあります。

既存顧客の維持は、既に市場が成熟しているケースや多くの顧客を抱えている企業が優先して取り組むべき方法であることがわかります。

また、サブスクリプションビジネスに取り組んでいる企業にとっては、既存顧客の継続的な利用が重要となるため、既存顧客の維持により注力するべきです。

一方で、顧客維持に注力する場合、コストの回収が長期化するため、LTV や解約率といった指標を定常的にトラックし、改善策を講じていく必要があります。

LTV を最大化する方法に関しては、以下の記事をご確認ください。

あわせて読みたい:マーケティングの LTV とは?LTV 最大化のマーケティング戦略を紹介

新規顧客獲得のための戦略的アプローチの実践

ここからは新規顧客を獲得するために必要なアプローチ方法に関して、解説します。

マーケティングの発明者と呼ばれるフィリップ・コトラーの理論 STP 理論によると、「どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生み出し、顧客に届け、そこから利益を上げること」が大切と提唱しています。

具体的な手法としては STP 分析が挙げられます。STP 分析とは「 Segmentation (市場の細分化)」「 Targeting (ターゲットの明確化)」「 Positioning (他者との差別化)」の3つの頭文字をとったもので、自分の企業や商品と競合他社との差別化を行うことで、自然と顧客に選ばれることを目指す分析手法です。

それぞれ解説します。

セグメンテーション

セグメンテーションとは、市場において自社が攻めていく領域を決めることです。軸はニーズと自社の提供価値

有名な方法としては、セグメントを地理的・人口統計的・心理的に切り分けることですが、BtoB ビジネスの場合は異なるニーズを持つ顧客をプロファイルし、その特徴を持つ顧客像を決めていくことが有効です。

顧客が解決すべきニーズを解決した時に、自社のブランドや製品への顧客ロイヤルティが高まるか」を確認しましょう。そのためには製品とニーズを照らして確認します。

すでにロイヤルティの高い既存顧客があれば、その特徴となぜロイヤルティが高いのかを割り出していくと、セグメントの確度が高まります。

具体的には以下のステップで進めると良いでしょう

  1. 顧客価値の定量化/指標化(価値基準を決める)
  2. 顧客ロイヤリティを計測するデータの一元管理(例:取引/利用データ、顧客レビュー、需要と供給のデータ、解約率、MRR など)
  3. 顧客ロイヤルティが高いユーザーの特徴を知る
  4. 顧客ロイヤルティがどの変数を変えてLTVにつながるのかを知る(解約率、購買頻度、購買単価など)

正しくセグメンテーションができていれば、下記の図のX/Y軸が顧客ニーズを軸にしているため、ABCDのそれぞれの市場での顧客のニーズは同じになります。

業種や規模などの特徴で複数の市場に分類することでターゲットの優先順位をつけられるようになり、結果的にリソースの投下先を集中させることが可能です。

ターゲティング

セグメンテーションを行った中で、優先して狙うべきターゲットを選定するには「ターゲティング」が必要です。

例えば、GM やCoca-Cola、Microsoft といった巨大な企業であれば、市場を完全に網羅しており、上記図のABCDを包括的に囲い込むアプローチが取れます。しかしながら、それ以外の企業は市場を網羅するほどの資金や体制が整っていないため、優先順位をつけることが必要です。

ターゲティングで考慮すべきは、セグメントのポテンシャルと自社のリソース、獲得チャネルの費用対効果などです。

リソース:どの程度の時間軸で、どのセグメントを、どれほど獲得するかと目標を立てること

セグメントのポテンシャル:各セグメントの課題の傾向/ニーズの成長率・普遍性・ニーズの数/セグメントの推定LTV/セグメントの推定獲得コスト(CAC)など

獲得チャネル:チャネルごとのLTV/CAC/リードタイムなど

上記の3つの軸を掛け合わせ、ABCDのうち、「まずどこを、どうやって、どれほどの期間で、どれほど獲得を目指すのか」がわかる状態がターゲティングができている状態と言えます。

ポジショニング

ポジショニングとは、特定のターゲットセグメントにおいて、自社の製品やブランドへのロイヤルティを競合との差別化のうえ高めていく戦略のことを指します。

ポジショニングには下記の3つのステップを踏むと良いでしょう。

  • 特定のセグメントの競合他社のブランドと自社ブランドの比較

これは単純に「製品を比較すること」ではありません。製品の比較では価格競争を激化させ、自社の提供価値を下げ、コモディティ化を加速させてしまいます。

コトラーの「純顧客価値」の考え方では、顧客が知覚する価値は以下の通りです。

  • 製品価値
  • サービス価値
  • 従業員価値
  • ブランド価値

現在の市場環境では、製品価値での競合他社との差別化を行うのは困難と言えます。

顧客が購買時に得られる体験やサプライヤーからのサポート、ブランドイメージによる差別化を行うことが理想的と言えます。

  • 類似点と違いの特定

ブランドに紐づき、競合他社には見いだせない、顧客が評価する自社の特徴や利点を特定しましょう。

競合他社との違いこそが、自社がターゲットに訴えかけ、提供できる価値(競合優位性)となります。

例えば、Apple で言えば、デザイン性やユーザビリティ性が唯一無二の存在であると言えるでしょう。

  • ブランド・マントラを確立する

ブランド・マントラとは、ブランド・ポジショニングやブランド価値についての本質を追求する短いフレーズのことを指します。

ブランドが示す本質的な価値を示すことです。

たとえば、Nike のブランド・マントラは「Authentic Athletic Performance」であり、これが同社のマーケティング戦略全体の根底にあります。

既存顧客維持のポイント

「既存顧客の維持」を実現するポイントを解説します。

既存顧客へのアプローチも新規獲得のセグメント選定のアプローチと同様に、LTV の高い顧客に集中したロイヤルティ向上の取り組みをしましょう。

例えば、カスタマーエクスペリエンス(CX)を高める取り組みを行います。

顧客ロイヤルティ向上のステップは以下の通りです。

  1. 顧客ロイヤルティの指数化/数値化(NPSなど)
  2. 顧客ロイヤリティを計測するデータの一元管理
  3. 顧客ロイヤルティが高いユーザーの特徴を知る
  4. 顧客ロイヤルティがどのLTVにつながるのかを知る(解約率、購買頻度、購買単価)
  5. 顧客ロイヤルティ改善のためのカスタマーエクスペリエンス(CX)の向上

ロイヤルティ向上の取り組みと成果の相関性を可視化し、改善する必要があります。

また、能動的に顧客の成功体験を創造するには、「CXの向上」も不可欠です。

成功体験とは、先のコトラーの「純顧客価値」理論に基づくもので、カスタマーサクセスの役割が重要になります。

下の図のような取り組みを進めましょう。

具体的にはサービス開始直後の手厚いサポートや、商品に対しての情報を発信していくなどを行います。

例えば、Amazon では、製品のメリットや良さを「サービス利用者自身の言葉」で話せるユーザーコミュニティを作りました。

顧客自身が自分の言葉でサービスの良さを話す機会を設けることで、ロイヤリティの高い顧客への育成につなげる狙いがあります。

また、ユーザーコミュニティは、ユーザー同士による協力が発生するので「オンボーディングの工数削減」に繋がったり、「製品へのフィードバックを無料で得られる」などさまざまなメリットがあります。

「顧客との関係性をどのように育むのか」

「どのように強い事業をつくるのか」

などを知り、顧客のロイヤリティを向上させ、既存顧客の維持による継続的企業の成長を図りたい方は、以下を参考にしてみてください。

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