SaaS事業でLTVを改善する鍵となる「顧客ライフサイクル」とは?

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顧客ライフサイクルとは、企業と特定の顧客との最初の接触からその関係性が継続する限りの期間のことです。その期間の中で、どれだけの利益をあげることができたかという指標を LTV(Life Time Value)と呼びます。

近年、テクノロジーの発展によって顧客がセールスの介在なしにプロダクトに接することができる機会が増えたため、最初の接触の時期は早まっていると言えます。加えて、「所有」ではなく「利用」型のビジネスモデルである SaaS ビジネスでは、顧客との関係は購買によって終わらずに長い期間継続するものとなってきています。

このような背景から、顧客ライフサイクルに寄り添い、長期にわたって顧客との信頼関係を構築することが、LTVを向上するための鍵となっているのです。

LTV の改善に不可欠なのが顧客のブラインドに対する”ロイヤルティー”

機能や性能単体を見れば他のブランドや企業を選んでもおかしくないのに、ついついこのブランドや企業には愛着が湧き、利用し続けてしまう、という経験を誰もがしたことがあるでしょう。

例えば、新商品の発売日にアップルショプに並ぶ顧客は、製品そのものにはもちろんのこと、競合他社ではない「アップル」という会社のブランドに愛着を持って並んでいる人がたくさんいるのではないでしょうか。この、行列に並ぶ人たちが持っている親しみや信頼感といった気持ちが「ロイヤルティー」です。

LTVを改善するためには、顧客ライフサイクルをできる限り長く保つ必要があります。各ステージにおいて目指すべきなのは顧客の企業に対する愛着である「ロイヤルティー」を確保することです。

ライフサイクルステージと LTV 改善

顧客ライフサイクルは、顧客と企業の接触が始まってから関係性が終わるまでの期間のことですが、当然、その期間の中では顧客の行動・企業やサービスに対する認識なども変わってきます。

LTV の最大化のためには、それぞれのステージにおいて顧客に集中し、適切な施策によって顧客のロイヤルティーを獲得していく必要があります。

認知 

まず、ブランドの認知が最初のステージです。ただし、単に多数のオーディエンスにリーチすればいいというものではなく、自社のターゲットを明確に定義し、そのターゲットグループに対して効果的にブランドを発信していかなければなりません。

ソーシャルリスニングやマーケット調査を行えば、ターゲットグループのトレンドを察知した発信内容にすることができ、ターゲットグループの見込み顧客からの検索数増加が期待できます。そして、それらの発信内容を確実に狙っている層にリーチさせるためにはコミュニケーションチャンネルを選定し、できるだけターゲットグループに自社のオンラインコンテンツがマッチするよう意識しなければなりません。

ブランド戦略は長期戦略となるため、成果が目に見えづらくなっていますが、オーガニックサーチ数(Google Search Console)、ウェブサイトやソースへのオーガニックトラフィック(Analytics)、オンラインチャネルへのエンゲージメントなどの指標から施策が適切であったかどうかを判断することができます。

顧客獲得 

顧客獲得活動は、認知活動と異なり、コンバージョンのためにオーディエンスを最適化することに注力します。

顧客獲得には、コンテンツマーケティングをマスターすることが効果的です。バイヤージャーニの各段階においてライフサイクル戦略に乗っ取った特定のコンテンツを用意し、提供することが顧客との関係構築に繋がるのです。

また、ウェブセミナーや、カンファレンスワークショップを開くことで、学習を目的とした見込み顧客の顧客情報を入手することができ、コンタクトチャンネルを得ることができます。最終的には有料の顧客獲得キャンペーンを目指すべきですが、それらは全て顧客第一に考えられたものでなければなりません。

これらの考え抜いたキャンペーンを顧客の元に届けるには、協力できる会社を見つけ、他のブランドとのアフィリエイトプログラムを設定することも有用です。アフィリエイトを試みる際には、トラッキングの準備をしておき、トラフィックがどこからきているのかを確認できるようにしましょう。

顧客エンゲージメント 

動画でのデモを行なったり、サイト上での行動喚起が顧客の商品に対する信頼度である顧客エンゲージメントの際に重要となります。

また、自社の提供しているサービスの分野に関して教育的なサイクルを供給すれば、サイクルの中にエンゲージされた顧客との関係性がより長くなる可能性が高まります。この教育サイクルの提供の際には、オーディエンスの信条や価値観を見定め、彼らに自社のプロダクトが与えられる利益を見つけることに役立てましょう。

しかし、誰もがプロダクトを一目見ただけで必要性を感じられる訳ではありません。そのため、自社のウェブサイトを訪れたことがある人にコンタクトをとってみましょう。Google Ads などのリターでティング支援ツールを利用して、お客様がサイトにアクセスして直後に数日間広告を表示し、少し時間を置いてから数週間後にもう一度試してみましょう。

これらの施策が適切であったかどうかもきちんと測定し、最適化していきましょう。]

セールス 

社会的な評判を利用することはセールスたの際の信頼度を高めるために非常に効果的です。例えば、他のクライアントのインタビューや事例や、ブログの読者数を示したり、その業界において影響力のある有名人や専門家と協力して事業を行なっていることを示したりすることで、自社に対する信頼度は格段に上がります。

また、セールスのフォームの形式を最適化しましょう。そのフォームの形式はユーザーにとって使いやすいものであるかどうかをテストし、改善しなければ、サービスを買ってもらう以前に顧客が関心を失ってしまうという本質的でない部分で顧客との関係性が絶たれてしまうかもしれません。ほとんど契約ができそうであった案件が失注してしまってもそれをそのまま受け入れるだけではそれまでの計画的な戦略が無駄になってしまいます。

失注率を下げるためのお勧め施策には、サイト上でのチャット相談サービス、再び顧客として獲得するためのメール配信、別のターゲットへのキャンペーン実施、サイトを離れる前のポップアップの活用があります。

最終的なセールスのテクニックとしては、無料トライアルや無料サンプルの提供が挙げられます。サービスの無料提供は購入の可能性を低くしてしまうリスクがありますが、顧客にサービスの価値を実感してもらうことに重点を置きましょう。この部分では、マーケティング・プロダクト・セールス・カスタマーサポートの全てが互いに協力的に連携しなければなりません。

関係保持 

ロイヤルティーを持った顧客は新規顧客よりもまたサービスを購入してくれる可能性がはるかに高くなります。

まず、顧客を囲い込むために、ユーザーのセグメンテーションを行い、パーソナライズされたコミュニケーションを用意しましょう。

他には、サービス利用に対する感謝を示し、こちら側のロイヤルティーを見せることも信頼関係醸成に繋がります。さらなるサービス向上のため、満足度調査を行うことで顧客の価値を観察することも重要になります。

そしてクライアントに対し、彼らのフィードバックが自社にとって貴重であり、それらは直接自社のプロダクトに実際に影響を与えるということを伝えて顧客の意見を聞きましょう。

まとめ

以上のように、LTV 改善には、様々な部門が関わって顧客との関係性の維持・改善に務めることが重要となります。各ステージで顧客に集中した施策をとって、顧客のロイヤルティーを高めていきましょう。

今回はファネル全体に関わる LTV を向上させるための施策を紹介しましたが、他にも、サブスクリプションビジネスの成功のために見るべき指標はたくさんあります。こちらの ebook では、LTV を含めたサブスクリプションビジネスで重要となる KPI を詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

サブスクリプションビジネス経営者が見るべきKPI10選

<参考>

”Focus on the customer 25 key tactics for customer lifecycle marketing”, senti one,

https://sentione.com/resources/whitepapers/25-key-tactics-for-customer-lifecycle-marketing