オンラインの顧客開拓に強い営業組織に変えるには?

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要約SUMMARY
  • コロナ禍もきっかけに、営業組織を取り巻く環が大きく変化している
  • 対して、昨今では、営業のデジタ化の取組みとして、分業性とデータ活用からなる
  • 「The Model」の導入が進んでる
  • この取り組みにより成果を創出するためには、単に体制を帰るのみではなく、
  • 顧客起点での営業プロセスの構築が必要となり、KPIやツールについても見直す必要がある場合も多い

コロナ禍に伴い、営業を取り巻く環境は大きく変わっています。

コロナ禍以前の商談は営業担当者が顧客に出向き、顧客担当者と対面で進めるのが一般的でした。しかしコロナ禍となり、顧客との対面による営業活動が制限される中、オンライン商談を導入する企業が増えています。オンライン商談システムを提供するベルフェイス株式会社(以下、ベルフェイス)の調査1)によると、52%の企業がオンライン商談を導入していると回答しています。

図1:「オンライン商談」に関する実態調査( bellFace 社『「オンライン商談」に関する実態調査をベルフェイスが実施』よりMagic Moment作成)

また、コロナ禍に伴い働き方も大きく変わり、リモートワークが当たり前となっています。ベルフェイスの調査2)によると、57.8%が「会社として在宅勤務・テレワークを推奨しており、実行している」と回答しています。

図2:「オンライン商談」に関する実態調査( bellFace 社『「オンライン商談」に関する実態調査をベルフェイスが実施』よりMagic Moment作成)

オンライン商談やテレワークが進む中、商談の状況にも変化が生じています。クラウド営業支援ツール「 Senses 」を提供している株式会社マツリカが行った調査3)によると、企業の経営者や営業部門のマネージャー・担当者の84.1%が「新型コロナウイルス対策開始後、商談機会の数は以前と比べて減ってきている」と回答しています。

図3:新型コロナウイルス対策開始後、商談機会の数は以前と比べてどう変化していますか。( Mazrica 社『営業活動のリモートワークに関する調査結果を発表。約8割が「生産性が上がったとはいえない。」ツール導入後は「オンライン商談や社内間の意思疎通」が課題に』よりMagic Moment作成

また、リモートワークやオンラインでの商談が進む中、同調査によると、リモートワークによる営業活動の課題として、以下の結果となっています。

  • オンラインでの商談や社内会議での意思疎通:44.9%
  • 案件情報や営業活動の共有・可視化:39.6%
  • 案件を進める上で必要な他部署との連携:34.8%
図4:リモートワークでの営業活動を行う中で、課題に感じていることは何ですか。( Mazrica 社『営業活動のリモートワークに関する調査結果を発表。約8割が「生産性が上がったとはいえない。」ツール導入後は「オンライン商談や社内間の意思疎通」が課題に』よりMagic Moment作成

この調査結果からも分かるように、回答者の多くがコミュニケーションや情報共有に課題を感じています。

また、自社の営業組織の問題をしたいという方のために営業組織のレベルを自己診断できる、「BtoB 営業組織レベルチェックシート」をご用意しております。本記事を一読されてから、是非ご活用ください。

オンライン顧客開拓の型

顧客の行動にも変化が現れています。

従来は見込み顧客の発掘、育成、商談から受注まで営業担当者が1人で行っていました。また、見込み顧客は営業担当者から情報を得ていました。見込み顧客と営業担当者との間には情報格差があったため、営業担当者はアドバンテージを取りながら商談を進めることができたのです。

しかし、インターネットや検索エンジンの発達に伴い、見込み顧客の行動は変わりました。見込み顧客は事前に製品やサービスの情報を収集し、情報を揃えて比較検討をある程度進めた上で営業担当者と会うようになっています。顧客の購買プロセスは興味を持った製品やサービスに対して「検索」を行って情報を収集し、「比較検討」を行うというプロセスになっています。

図5:顧客の購買行動の変化(Magic Moment 作成)

その一方で、見込み顧客の行動プロセスと従来の営業プロセスの間でギャップが生じます。例えば、「商談フェーズでは営業担当者は見込み顧客に製品やサービスの情報を提供するも、見込み顧客は検索結果をもとに既に情報を把握した上で商談に臨んでいるなど」です。これは、「情報提供型の営業の限界」を表しています。このため、従来の営業方法とのギャップにいかに対応するかが課題となっています。

図6:従来の営業プロセスにおける課題(Magic Moment 作成)

また、営業担当者が1人で見込み客の発掘から商談までこなすとなると、見込み顧客の興味や関心の把握まで手が回らなくなっています。特にリモートワークやオンライン商談が進んだ現在においては、営業プロセスの変化が求められています。

解消のポイントは「顧客起点で一貫した営業プロセスを構築することができるか」にあります。その1つが認知から利活用までの顧客の購買プロセスをカバーするための体制構築と管理方法が必要です。

The Model 型の営業プロセス

営業を取り巻く環境が変化する中で、注目を集めているのが「The Model(ザ・モデル)」です。

The Model とは、元々は Salesforce が提唱した営業手法であり、2019年に発刊された福田康隆氏の著書『 THE MODEL 』で注目を集めました。福田氏はセールスフォース・ドットコムなどで活躍し、自ら作り上げた営業・マーケティング戦略を『 THE MODEL 』で解説しています。

The Model では営業組織を以下の4つの段階に分けて営業活動を進めていきます。

  • マーケティング:見込み顧客の発掘
  • インサイドセールス:見込み個客の育成
  • フィールドセールス:商談
  • カスタマーサクセス:活用支援
図7:The Model による分業制の登場(Magic Moment 作成)

The Model 型の営業プロセスでは「マーケティング活動はマーケティング部門に、インサイドセールスはインサイドセールス部門に」というように分業で営業活動を進めることができます。このため、1人の営業担当者が見込み個客の発掘から商談までを進めるよりも営業活動が効率的になります。

また、見込み顧客の購買プロセスに合わせた営業プロセスを構築することができます。例えば、 Web ページの参照履歴の収集や分析などをマーケティング部門で行います。そして、

条件に合致した見込み顧客に対してインサイドセールス部門でインサイト情報を提供しながら見込み顧客の育成を行います。このように The Model 型の営業プロセスを活用することで 、認知から利活用に至るまで見込み顧客の行動プロセスに対応できます。

図8:顧客の購買プロセスに合わせた営業プロセス(Magic Moment 作成)

オンライン顧客開拓の検討のポイント

オンライン顧客開拓において、インサイドセールスが不可欠です。しかし、インサイドセールスを設けている組織には以下の様々な課題を抱えています。

  1. 商談を創出(=アポイント獲得)することがゴールとなっている
  2. 自社のビジネスにどの程度貢献しているのかが分からない
  3. 成長実感がない

これらの課題は「インサイドセールス組織の体制とKPI設計の課題が顕在化したもの」と言えます。

1つめの課題の起因は「インサイドセールス組織が営業活動全体の中でどのような役割を担っているのかが明確になっていない」ことです。

インサイドセールスの一般的な役割は「見込み顧客にアポイントを取り、獲得したアポイントをフィールドセールスに渡す」ことです。このため、「アポイントを獲得する」ことが目的となってしまいます。

そして1つめの課題は2つめ及び3つめの課題にもつながります。これらは、以下の点が不明瞭になっていることが起因となっています。

  • 獲得したアポイントメントがどの程度受注に貢献しているのかなど効果が不明瞭
  • 見込み顧客獲得から受注まで、一連のプロセスをどのような役割分担で進めるのかが不明瞭

このため、営業プロセスの全体像を示しながら、「インサイドセールス組織が自社のビジネスにどのように貢献しているのか?」を体制と役割分担を明確にすることが大切です。

また、「獲得したアポイントメントがどの程度受注数や成約金額に貢献しているのか?」を KPI として見える化することが大切です。KPI の目標値を達成することで成長を実感することにもにつながります。

これらのことから、「正しい体制と KPI の設定」がオンライン顧客開拓の検討ポイントとなります。

オンライン顧客開拓チーム構築の方法論

ここではオンライン顧客開拓チーム構築の方法論について解説します。

3つの組織形態をオプションとして用いる

オンライン顧客開拓チーム構築の1つめの検討ポイントは「体制」です。

組織形態には主に以下の3つの形態があります。

  • 分業型
  • 独立型
  • 協働型

1つめは「分業型」です。分業型とは「複数の人がそれぞれ違う役割を分担して営業活動を行う組織形態」です。メリットは「組織や担当者毎に役割や作業を分散することで、効率的に営業活動を進めることができる」という点です。デメリットは「役割や機能毎に組織が編成されるため、縦割りになりやすい」という点です。

2つめは「独立型」です。独立型とは「既存組織とは独立して営業活動を行う組織形態」です。メリットは「既存の組織とは独立して行動できるため、見込み顧客の独自の要望に対応しやすい」という点です。デメリットは「既存組織とは独立して営業活動を行うため、ノウハウなどが属人化しやすい」という点です。

3つめは「協働型」です。協業型とは「1つの作業を複数の人が集まって行う」です。メリットは「1の作業を複数の人で行うため、1人当たりの作業量を減らすことができる」という点です。デメリットは「1の作業を複数の人で行うため作業の重複が発生しやすく、効率が悪くなりやすい」という点です。

体制を検討するにあたり、対象顧客やサービスにより、これらの組織形態をオプションとして用います。それにより、対象顧客や商材に柔軟に対応できるメリットが生まれます。

正しいKPIを設定するには?

先に「正しい KPI の設定がオンライン顧客検討のポイント」と述べましたが、正しい KPI を設定するためにはどうすればよいのでしょうか?ここでは、検討のポイントを紹介します。

KPI は事業 LTV の最大化をゴールにする

オンライン顧客開拓チーム構築の2つめの検討ポイントは「KPI」です。KPI は「事業 LTV の最大化」をゴールとし、そこから逆算で KPI を設定します。

LTV とは「 Life Time Value /ライフタイムバリュー」の略称で、日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。事業 LTV とは「顧客が取引開始から取引終了までの間に対象事業に対してどれだけ利益をもたらしたか」を表す指標です。

「事業 LTV の最大化」をゴールとすることで、事業 LTV の拡大とともに事業の成長や成果を実感することができます。

事業 LTV から逆算して KPI を設定する

事業 LTV から逆算する形で KPI を特定し、成果を最大化するレバーにフォーカスして設定します。なお、事業 LTV は以下の式で算出します。

事業 LTV = Rep 数 × 活動量 × アポ数 × 成約率 × 成約金額

このため、事業 LTV の算出に用いられている以下の要素を KPI として設定します。

  • Rep 数
  • 活動量
  • アポ率
  • 成約率
  • 成約金額

KPI 項目の定義と活用例

これらの KPI の定義内容や活用例は以下の通りです。

Rep 数

Rep 数とはインサイドセールスを行うにあたり、対応できる人数を表します。インサイドセールスを5人で行っているのであれば、 Rep 数は5となります。

Rep数 = 5

もし、他の要素をそのままで成約金額を増やしたい場合は Rep 数を増やすことが必要です。具体的には「社員増員」や「BPO の活用」などがあります。

活動量

活動量とはインサイドセールス組織が行った1人当たりの活動数を表します。具体的には以下の通りです。

コール数:見込み顧客に架電した数

メール送付数:見込み顧客に送付したメール数

なお、架電やメール送付数を増やすには「活動の標準化による準備短縮」や「MAの活用」などの改善策があります。

アポ率

アポ率とはインサイドセールス組織の活動量に対してアポを獲得できた数の割合を表します。計算式は以下の通りです。

アポ率 = アポ獲得数 / ( Rep 数 × 活動量 )

アポ率を高めるための改善施策例には架電担当者に対して「受付突破・合意形成のトレーニングを行う」などがあります。

成約率

成約率とはアポ数に対して成約した数を表します。なお、アポ数を分母としているのは、インサイドセールスで獲得したアポをフィールドセールスに商談としてトスアップしているためです。計算式は以下の通りです。

成約率 = 成約数 / アポ数

なお、成約率を高めるためにはフィールドセールスにトスアップしたアポのうち、成約に至った商談の特徴を捉えることが必要です。

成約金額

成約金額は成約した商談の受注金額です。

成約金額 = 成約した商談の受注金額

成約金額の大きさは事業 LTV に大きく影響します。成約金額を高める工夫として、提案先の変更や提案内容の改善などがあります。

図9:インサイドセールスの KPI (Magic Moment 作成)

事業 LTV から逆算の KPI で各部署の役割が明確になる

事業 LTV から逆算して KPI を定めることで各部署の役割や目標値が明確になるメリットがあります。以下に具体例を掲載します。

継続数 =マーケ施策による来訪者数 × 顧客獲得率 × 商談化率 × 受注率 × 更新率

マーケティング :見込み顧客数( MQL ) = マーケ施策による来訪者数 × 顧客獲得率

インサイドセールス:商談数 = 見込み顧客数( MQL ) × 商談化率

フィールドセールス:受注数 = 商談数 × 受注率

カスタマーサクセス:継続数 = 受注数 × 更新率

図10:The Model における KPI 管理(Magic Moment 作成)

例えば、マーケティング部門の目標は「見込み顧客数( MQL )」となります。目標の「見込み顧客数( MQL )」を獲得するためには、「マーケ施策による来訪者数」の目標数を達成する必要があります。このため、「マーケ施策による来訪者数の目標を達成するためにはどうすればよいのか?」ということを施策として検討します。

このように進めることで「部門として何をすべきか」が明確になります。

先端企業では PCR も確認する

営業活動やマーケティング活動で先端を行っている企業では「 PCR ( Pipeline Creation Rate )」に注目しています。

PCR とは「営業パイプラインの創出率を表す指標」です。計算式は以下の通りです。

PCR = {(今月創出した特定条件のパイプラインの総額 / 前月創出した特定条件のパイプラインの総額)- 1 }× 100(%)

PCR のメリットは、「四半期あるいは半年と一定の期間で評価することで将来の売上規模や成長の傾向を予測できること」にあります。PCR の算出結果がプラスであれば将来有望なリードが創出できており、売上増加が期待できることを表します。

また、PCR で売上規模や成長の傾向を予測することで、組織の拡充や投資の拡大などにもつなげることができます。成長著しいる先進企業を中心にPCRの導入が進んでいますが、その背景には「PCR の導入により、将来の成長に向けた必要な意思決定につなげたい」という考えがあるからです。

PCR の精度を高めるためにはツール・オペレーション・イネーブルメントが不可欠です。以下ではツール・オペレーション・イネーブルメントのそれぞれのゴールや施策例について紹介します。

オンライン顧客開拓を高めるための3つのポイント

KPI や体制を整えた上で PCR を実現するためには3つのポイントがあります。

  • ツール
  • オペレーション
  • イネーブルメント

1つめは「ツール」です。ツールには CRM や SFA などがあります。ツール利用のゴールは「リードの状態が把握できている」ことです。見込み顧客の行動・課題・製品利用状況などを全て記録します。そうすることで、営業全体の動きを把握でき、改善につなげることができます。

2つめは「オペレーション」です。体制や KPI を整えたとしても、「どのように運用するのか」が明確になっていなければ担当者の主観でオペレーションが行われることになります。このため、営業プロセスやオペレーションをドキュメント化し、リードの状態に応じてオペレーションやアクションを明確にする必要があります。

3つめは「イネーブルメント」です。イネーブルメントは営業組織の強化や改善の取り組みのことです。いざ運用を行ってみると、当初の想定とは異なる点やうまくいかない点が発生します。その場合、うまくいかない原因を分析し、改善することが必要です。定期的に運用状況を評価し、改善する必要がある場合は改善策を適用します。

弊社ではオンライン顧客開拓を高めるポイントを網羅した営業プロセス構築を支援しています。実際の活用事例などこちらに詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。(無料の会員登録が必要となります。)

まとめ

  • コロナ禍でリモートワークやオンライン商談が進む、顧客行動の変化など、営業を取り巻く環境が大きく変わっている
  • これらの変化の対応方法の1つとして「 The Model 」の導入がある
  • 体制を構築するにあたり、顧客行動を考慮しながら担当部署の分担と役割の明確化が検討ポイントとなる
  • 事業LTVから逆算し、Rep数・活動量・アポ率・成約率・成約金額でKPIを設定する

これらを実際に営業組織に実装していくにあたっては、足元の状況をよく把握して、少しでも成功の確度を上げてから動き出すというのが定石です。弊社では、今を良いチャンスととらえて、自社の営業組織を自己診断したいという方のために、「BtoB 営業組織レベルチェックシート」をご用意いたしました。

弊社がこれまで企業様をご支援してきたノウハウに基づき、今の営業プロセスはどれだけできているといえるのか、部門間の連携はどれくらいできているのかといった、なかなか自社だけでは判断できなかったことを定量的に確認できます。ぜひ、ご活用ください。

《引用文献》

1)bellFace. 「オンライン商談」に関する実態調査をベルフェイスが実施」. 2020-05-18.
https://corp.bell-face.com/news/2935/, (参照 2020-07-03)
2)bellFace. 「オンライン商談」に関する実態調査をベルフェイスが実施」. 2020-05-18
https://corp.bell-face.com/news/2935/, (参照 2020-07-03)
3)Mazrica, 『営業活動のリモートワークに関する調査結果を発表。約8割が「生産性が上がったとはいえない」。ツール導入後は「オンライン商談や社内間の意思疎通」が課題に』. PR TIMES. 2020-04-30.
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000025.000015189.html, (参照 2020-07-03)