サブスクリプションビジネスにおけるデータ活用の重要性と効能


データ活用の重要性の高まり

現代のビジネスにおいて、企業が収集できるデータは圧倒的に増加しており、その多様性も定量・定性の両面で増しています。この傾向は、製品・サービスの利用データを入手しやすいサブスクリプションビジネスで顕著です。

データを保持することで、顧客のことを解像度高く理解できるようになり、事業成長のための戦略の幅や精度が大きく向上します。つまり、データ活用の有無は、競争力に直結する問題であり、事業の成否を左右する問題といえるでしょう。

一方で、サブスクリプションビジネスを展開する多くの企業では、以下のような課題を抱えています。

  • サブスクリプションビジネスの独自指標がわからず、どうやって事業を評価すれば良いのかわからない
  • 事業が評価できないため、上層部へ状況を正しくレポートできない
  • プライシングやターゲティングをどうすればいいのかわからない
  • 従来の事業と同じく、PLベースで利益・コストを評価され、予算が取れない
  • サービスの解約数が増えてきたが、どこに原因があるかわからない
  • データの収集・加工に多くのリソースがかかっているものの、事業の評価や戦略策定に活用できていない

これらの問題は、サブスクリプションビジネスの特性とデータ活用に対する理解が不足していることに起因しています。

サブスクリプションビジネス成功のメトリクス

サブスクリプションビジネスにおける、1つの大きな特徴をご存知でしょうか。それは、サブスクリプションには、成功の型があるということです。例えば、Magic Number という営業の効率性を測る指標があります。マーケティングや営業への投資に対し、当該四半期で積み上げた収益を表します。

この Magic Number のベンチマークは 0.6 と言われており、世界 No.1 と言われる CRM システム会社で SaaS 企業の先駆けである Salesforce は 0.6 、2019年に上場した SaaS ユニコーン企業である Freeeは 0.7 になるように、投資や販促施策をコントロールしています。

このように、サブスクリプションビジネスでは、成功するための具体的な指標やベンチマークが判明しているため、経営判断を下しやすいという特徴があります。

サブスクリプションビジネスで見るべきメトリクス

サブスクリプションビジネスは総合格闘技です。プロダクトやサービスの強さだけでなく、経営・事業開発・マーケティング・営業・カスタマーサクセスなど、全方位で強くある必要があります。そのため、従来のビジネスのような経営視点だけでなく、ビジネスの状況を多面的に見る必要があります。

それでは、サブスクリプションビジネスで見るべき指標は、どのようなものがあるでしょうか。以下に挙げる指標は、必ず抑えてもらいたいものです。

  • Monthly Recurring Revenue
  • Return On Investment
  • Quick Ratio
  • Customer Acquisition Cost
  • Customer Churn Rate
  • Customer LifeTime Value
  • Unit Economics
  • CAC Payback
  • Sales Velocity
  • Net Revenue Retention

これらの指標については、「サブスクリプションビジネス経営者が見るべきKPI10選」にて解説しておりますで、あわせてご覧ください。

メトリクス活用による効能

メトリクスを活用することで、4つの効能が期待できます。

  1. 現状が把握できる
  2. 予実が作れる
  3. インサイトが得られる
  4. 施策やオペレーションを策定できる

1. 現状が把握できる

メトリクスを活用することで、自社の状況をリアルタイムに把握することができます。

先の Magic Number の例で見てみましょう。

Magic Number が 0.5 を切ってしまうと、投資した金額を今四半期で回収できていないことになります。そのため、このまま投資を続けても狙った効果は期待できないため、施策の有効性や営業のボトルネックを見直すべきです。

逆に、Magic Number の数値が良すぎると、市場ポテンシャルに対して機会損失が生じているということになります。この場合、もっと積極的に投資すべきと言えます。

また、単なる解約率だけでなく、どのような顧客が継続し、どのような顧客が解約に繋がっているかを分析する「コホート分析」という手段があります。この分析を行うことで、マーケティングや営業施策の有効性を検証することができます。

2. 予実が作れる

サブスクリプションビジネスが難しいと感じられる原因の一つは、従来のビジネスと収益構造が異なるという点にあります。

従来の売り切りビジネスの場合、顧客が製品・サービスを購入した時点で、それまで投下したコストが回収でき、利益が発生します。一方、サブスクリプションビジネスでは、契約開始当初は赤字であり、継続利用されることで投資を回収するモデルです。

例えば、成長率 30% の事業の場合、単年のPLベースだとROIが成立せず、マーケティング予算が取れないということも発生しますが、サブスクリプションビジネスの特性を理解していれば、数年後に期待される利益は加速度的に増加するため、大きくアクセル踏むべきタイミングであると言えます。

この収益についても、見込み顧客数や商談化率、解約率等のデータを基にシミュレーションすることができます。また、顧客獲得単価や解約率などの指標が分かると、営業担当者あたりの売上が計算できるので、今後の成長をシミュレーションすることもできます。事業の目標水準に必要となる営業担当者のヘッドカウントが予測できるので、採用計画につなげることができます。

3. インサイトが得られる

ベンチマーク指標からの乖離を見ることで、どこに問題があるのか、気づきを得ることができます。例えば、新規契約数は伸びているものの解約率が高い場合、顧客の課題やニーズとサービス・製品が適合していない可能性あります。または、サービス・製品の価値を体験する前に解約してしまっている可能性もあります。顧客の利用データを詳しく分析することで、真偽を確かめることが出来るでしょう。このような場合、商談において、顧客へどのような説明をしているか、価値を訴求できているかを検証することができます。

ここで重要なのは、単一の数字や側面を見るのではなく、いろいろな数字を複合的に見て分析することです。

例えば、Unit Economics の数値が悪い場合、マーケティングを大々的に実施したが故の一時的な現象なのか、新規顧客を獲得できていないことに依るものなのかによって、その後のアクションが大きく変わってきます。

この複合的な視点や気づき=インサイトには、サブスクリプションビジネスに対する深い知識と経験が必要であり、事業の立ち上げ当初は外部の知見に頼ることも一案です。

4. 施策やオペレーションを策定できる

データによりインサイトが得られたら、インサイトに応じた施策やオペレーションに落とし込んでいきます。サブスクリプションビジネスは総合格闘技であるため、オペレーションに落とすためには、全ての部署が連動し、整合性の取れた対応をとることが重要です。メトリクスを共通言語化することで、全ての部署が同じ課題意識を持ち、同じ方向を向いて進むことができます。

ビジネスのフェーズに応じたメトリクスの適用

ビジネスを「立ち上げフェーズ」、「拡大フェーズ」、「安定フェーズ」の3つのフェーズに分けたとき、各フェーズでのメトリクスの活用方法を解説します。

立ち上げフェーズ

顧客数が少ないビジネスの立ち上げフェーズにおいては、メトリクスによる評価は、うまく機能しないことが多いです。分析対象とする母数が少ないため、1顧客によるブレが大きくなり、全体的な傾向なのか、例外的な傾向なのかの判断が困難になります。そのため、立ち上げフェーズにおいては、1人1人の顧客や事象に向き合い、課題などを深堀りしていくことが良いでしょう。

ただし、立ち上げフェーズの段階で、拡大フェーズを見据えてデータ収集・加工の仕組みを作っておくことが、その先の成長スピードを大きく左右します。ほぼ全ての企業で、データ活用の元となる収集・加工に苦労していますので、データ収集の仕組みが構築できていることは、後々の大きなアドバンテージとなります。必要となるデータを理解しておくことで、散乱しがちな営業データもきれいになり、営業担当者にかかる過剰な負担を避けることができます。

拡大フェーズ

メトリクス活用による効用を最も得ることができるのが、ビジネスの拡大フェーズです。具体的には、顧客数が 50 〜 100 程度に増えてくると、大きな価値を得ることができます。

注力すべきポイントを見極めることができるので、成長のためのアクセルが踏めるようになります。また、ボトルネックが分かるので、投資や施策の無駄打ちを避けることができます。

安定フェーズ

事業が安定してきたフェーズでのメトリクスの活用方法は、はずれ値の把握です。はずれ値がなく、これまでと同じ傾向を描いていれば、安心して事業を継続することができます。一方で、はずれ値が生じた場合、その原因を分析し、対策を講じることができます。

まとめ

サブスクリプションビジネスにおけるデータ活用の重要性と効能について解説しました。

成功のためのメトリクスが判明している以上、データ活用による経営管理は事業成長の絶対条件であり、データを活用できないことは、事業の死活問題につながります。

Magic Moment では、SaaS に特化した指標が見れるツール「Insigt Board」を、国内で唯一提供しています。データを活用した経営管理に興味がある方は、こちらのサービスページからお問い合わせください。

本記事で紹介したサブスクリプションビジネスにおけるデータ活用の具体的なイメージについては、「サブスクリプションビジネスにおけるデータ活用の要諦」にまとめていますので、あわせてご覧ください。

サブスクリプションビジネスにおけるデータ活用の要諦