AI・自然言語処理(NLP)が営業活動をどう変えるか

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要約SUMMARY
  • AI・自然言語処理の飛躍的進化により、定型業務の自動化、文書作成の自動化、次の行動の推奨、商談支援、顧客分析など、多くの営業活動で AI 活用が進んでいる
  • さらに将来的には、顧客行動予測、「デジタルヒューマン」活用、AI による業務の完全自動化といった革新技術の実用化が見込まれる
  • 一方で、AI には人間の社会的スキル・共感力の再現が難しく、人間にしか発揮できない価値観が変化するとともに、その価値そのものが高まっていくと考えられる

近年、AI の進化が私たちの日々の生活やビジネス界を劇的に変化させています。さまざまな業務の自動化・効率化が進む中で、営業現場においても、AI を活用し生産性向上を行うことがトレンドになっています。

この記事では、AI に関連する研究分野で中核を成す要素技術の一つである自然言語処理(NLP:Natural language processing)に焦点を当て、営業組織での活用と重要性を探ります。AI が営業組織をどのように変革するのか、人間にしか発揮できない価値と併せてご紹介します。

また、株式会社Magic Moment では、経営・事業において正しい意思決定を行うためのデータ戦略(記録・活用)のフレームワークを開発設計思想とし、AI を生成・分析・示唆に即活用できる AI 営業プラットフォーム「Magic Moment Playbook」を開発・提供しています。

自然言語​​処理とは?

自然言語処理とは

自然言語処理は、日本語や英語のような人間のコミュニケーションに用いられる自然言語をコンピュータで処理する技術です。自然言語には、日常会話ではあまり意識されないかもしれませんが、曖昧な表現や構造が含まれており、同じ言葉が複数の意味を持つことがあります。

たとえば、「このはしわたるべからず」という一休さんのなぞかけは、「橋」と「端」の両方を意味することができ、「黒い目の大きな犬」という表現は、「目が黒い大きな犬」とも「目の大きな黒い犬」とも解釈することができます。これに対し、プログラミング言語などの人工言語にはこのような曖昧性は存在しません。自然言語処理の目的は、このような曖昧性を持つ自然言語を機械学習や AI で処理することにあります。

この分野では、ChatGPT や BERT などの大規模言語モデル(LLM)が近年、特に注目されています。LLM は、文章の要約や作成など、従来は人の手を必要としていた作業を可能にしています。Gartner社の調査※1 によれば、2025年までに大企業で使用されるメッセージの30%が AI によって生成されると予測されており、自然言語処理の重要性はますます高まっています。

※1:Beyond ChatGPT: The Future of Generative AI for Enterprises(Gartner、2023/1/26)

自然言語処理の活用例

私たちの日常生活のさまざまな場面で、自然言語処理は活躍しています。

AI チャットボット

自然言語処理の代表的な活用例として、チャットボットが挙げられます。ユーザーの入力を自然言語として解析し、適切な回答を自然な言葉で返すことができます。自然言語処理の進化により、ChatGPT のような AIチャットボットは人間とのスムーズなコミュニケーションを実現しています。

スマートスピーカー

Siri、Alexa、Google アシスタントといった AIアシスタントは、音声による自然な対話を可能にする自然言語処理を用いたサービスです。天気や時間を尋ねたり、家電を操作したりと、さまざまな要求に応えられます。

音声認識AI

音声認識AIは、発話された内容を自然な文章に変換するために自然言語処理を活用しています。コールセンターの録音データから対話記録を自動生成したり、会議の議事録を作成したりできます。専門用語への対応力を高めれば、より自然な文章生成が可能になります。

機械翻訳

Google翻訳や DeepL は、自然言語処理による文脈解析と意味理解によって、高精度な機械翻訳を実現しています。適切な単語置換だけでなく、発信言語の意味と文調を捉え、受信言語で等価の文章を生成することが重要です。一昔前の翻訳システムとは異なり、近年の機械翻訳は自然で分かりやすい文章を出力できるようになっています。

営業活動における AI・自然言語処理の活用方法とメリット

AI・自然言語処理の進化により、営業現場でも AI を活用した生産性向上は進んでいます。従来から機械学習を用いた定型業務の自動化が行われてきましたが、近年の生成AI の登場により、さらに高度な自動化が可能になってきました。以下は海外のセールステック企業各社から提供されている営業の自動化機能の一例です。

図1. ​​営業の自動化機能の一例

タスクの自動化

従来は手作業が必要だった顧客へのフォローアップメール、問い合わせ対応、新規リスト攻撃など、定型的なタスクを AI が自動実行できます。さらに、顧客とのやり取りから発生するインタラクション(メール返信、商談実施、資料ダウンロードなど)に応じて、最適なコミュニケーション内容をAIが自動生成することが可能になっています。

文書の自動生成

自然言語生成 AI を活用することで、見積書、契約書、営業資料などの文書を AI が自動で作成できるようになりました。営業担当者は必要な情報を入力するだけで、適切な文書形式と内容で AI が自動生成してくれます。さらに法律や会計など、専門知識を持った AI でより正確で信頼性の高い文書作成も実現できます。

次のアクションの推奨

組織内に蓄積された大量の営業データを AI・自然言語処理で分析し、優先すべき案件や最適な次のアクションを提案します。顧客の行動履歴、商談内容、成約確度などを総合的に判断して、「この案件を優先的に取り組むべきです」「この案件は特定の担当者に任せた方が良いです」「次のアクションはこれが適しています」といった対応案をレコメンデーションすることが可能です。

商談アシスト

従来の営業は属人性が高く、商談の場ではどのような会話がなされているのかブラックボックス化していましたが、音声認識と自然言語処理を活用することで、実際の商談での会話内容を文字に起こし、定量的に分析できるようになりました。会話の内容を客観的に評価し、フィードバックや改善案を提示することで、営業の質を着実に高めることができます。

顧客分析

AI で顧客の属性データや行動履歴、購買データなどを分析し、顧客の嗜好、ニーズ、満足度、価値観、感情などを多角的に分析することも可能です。これらの分析結果を活用することで、きめ細かい顧客対応が可能になり、顧客満足度の向上、ロイヤリティの醸成、LTV の最大化に繋がります。また、過去データから購買プロセスの各段階での受注リスクを予測し、リスク回避のための対策を事前に立てられるようにもなります。

このように、営業業務のプロセス全体にわたって自然言語AI の活用が広がり、業務の自動化と最適化が進んでいます。これらの機能の一部は、当社が提供する Magic Moment Playbook の “Next Best Action” “シーケンス”、Outreach の “Sales Execution Intelligence”、Gong の “Gong Assist” として、サービス提供が進んでいます。

AI・自然言語処理の進化で営業はどう変わる?

今後、自然言語処理はさらに高度化し、より複雑な言語の理解と生成を可能にするでしょう。これにより、顧客コミュニケーションは自然な流れを実現し、個別のニーズに的確に応えられるようになります。加えて、AI の分析力向上により、より戦略的な営業アプローチが期待できます。

AI・自然言語処理の進化で起きる営業の変化

顧客の行動予測

AI は莫大なデータと複雑な変数を組み合わせ、因果関係を極めて高い精度で読み解くことができます。こうした力を活用することで、顧客の将来行動を正確にシミュレートし、事前に予測することが可能になるかもしれません。これにより、商品サービスへの関心のピークを事前に捉え的確にアプローチしたり、解約リスクを先手で回避したりと、顧客の行動予測に基づく対応が期待できます。

デジタルヒューマンの活用

営業の現場に、人間と対話を交わせるデジタルヒューマンが登場する日も遠くないでしょう。既に AI は言語コミュニケーションだけでなく、表情や仕草までリアルに再現できるレベルに達しています。Gartner社のレポート※2 では、2026年までにB2B営業の半数がこのデジタルヒューマンとやり取りをするようになるとされています。

※2:Gartner identifies 7 technology disruptions that will impact sales throught 2027(Gartner、2022/10/10)

AI による業務自動化の加速

AI が過去データから現状を正確に把握し、必要な営業行為を自動で判断・遂行する時代が到来するかもしれません。組織の営業データを網羅的に収集・分析することで、AI は最適なアクションを決定し、人間に代わって自動実行に移せるようになります。AI による業務の自動化が進めば、人間は創造性や独創性が問われる仕事に専念できるようになるはずです。

人間にしか発揮できない価値とは

一方で、AI が営業分野で重要な役割を果たす中でも、人間の営業活動を AI が完全に代替することはないと思われます。その理由は、AI が得意とする分野と、人間にしか対応できない分野があるためです。

図2. ​​人間とAIの得意領域

AI は大量のデータ分析や最適解の提示、複雑な変数から示唆を出すことに関しては圧倒的に優れて​​います。しかし、人間の社会的スキルや共感能力を完全に備えているわけではありません。そのため、例外対応や顧客との対話・交渉など、高度な問題解決が必要な場面では、人間が介在することが必要です。また、顧客との深い関係構築や複雑な課題への対処、細かいニーズの把握など、人間の温かみが求められる局面では、売り手としての人間が重要な役割を担います。AI の活用が進ん​​でも、人間ならではの独自の価値は残り続けるでしょう。

企業でAIの利用が当たり前になれば、逆に人間の存在感が高まると思われます。想像力や共感性が求められ、「AI への指示出しとマネジメント」「人間が介在すべき創造的対応」といった役割が重視されるはずです。人間にしか発揮できない価値観が変化するとともに、その価値そのものが高まっていくと考えられます。

また、弊社 Note での記事連載「Future of Sales」では、こうした新時代の営業の姿を発信しています。営業組織に課題感を持つ日本企業の意思決定に寄与する示唆の提供を目的に、2040年頃までの営業活動の未来予測を紹介しています。ご関心ございましたら、併せてご覧ください。

併せて読みたい:Future of Sales 営業活動の未来予測

AI 営業プラットフォーム「Magic Moment Playbook」

株式会社Magic Moment では、経営・事業において正しい意思決定を行うためのデータ戦略(記録・活用)のフレームワークを開発設計思想とし、AI を生成・分析・示唆に即活用できる AI 営業プラットフォーム「Magic Moment Playbook」を開発・提供しています。

自動化を実現するMagic Moment Playbook の機能

Next Best Action 

Next Best Action は、営業担当者に、顧客の行動データや営業の状況をもとに、現在アプローチすべき最適な顧客とアクションの方法を自動で提案する機能です。この提案に従うことで、営業担当者は大量に担当している案件の中から優先すべきものを探したり、適切なアプローチ方法に迷う時間がなくなります。見込みの高い案件だけに集中し、最適なタイミングで確実にアプローチすることで受注率の向上を実現します。

図3. 営業担当者にいまやるべき案件と何をするべきかを自動で提示

シーケンス機能

シーケンス機能は、メールや電話での顧客フォローやタスク管理など、手間がかかるけど重要な業務を自動化および半自動化する機能です。シーケンス機能を活用することで、営業担当者は自動的に顧客とのコミュニケーションを構築し、煩雑な作業から解放され、提案価値を高めるために本来の営業活動に集中できるようになります。

マス向けに一括送信されるメルマガとは異なり、シーケンスの発動と分岐は、Magic Moment Playbook に記録された各個別の顧客との対話・データに基づいて行われるため、顧客に合わせてパーソナライズされたアプローチが可能です。

図4. あらかじめ設定されたトリガーや条件に基づいて、最も成果が出る営業の手順をリアルタイムで提案・自動化

Magic Moment Playbook は、AI の力を最大限に活用し、貴社の営業活動を変革します。圧倒的な営業機会の増大と、卓越した顧客体験の実現を強力にサポートいたします。大手企業からスタートアップまで、幅広い顧客企業において、商談数1.5倍、受注率1.2倍増など、売上拡大に確かな実績を残しております。

さらに、Magic Moment では Magic Moment Playbook を活用する専門人材 収益を最大化する営業 BPaaS もご提供しております。導入から定着まで、貴社の営業組織に合わせた最適な活用方法とサポートをご提供し、成果創出までの過程を丁寧に伴走いたします。営業活動の変革とさらなる飛躍に興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

弊社サービス詳細は下記サービスサイトよりご確認・お問合せください

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