顧客エンゲージメントとは?定義と事例を徹底解説!

世界中で盛り上がりを見せるサブスクリプションビジネスは、日本での市場規模も成長し続けています。株式会社 ICT 総研の調査によると、サブスクリプションビジネスの市場規模は2023年には約1.4兆円まで拡大する見通しです。これは2019年と比較すると126%の成長です。

サブスクリプションビジネスでは、従来のビジネスモデルよりも「顧客との長期的な関係性が大切だ」「顧客体験を最優先に考えるべきだ」と言われています。なぜ関係性・顧客体験が重要で、またそれを改善・向上させるためにはどうしたらいいのでしょうか?

そこで、本記事では、これからのサブスクリプションビジネスに欠かせない「顧客エンゲージメント」の定義を説明した上で、「顧客エンゲージメント」と「ロイヤリティ」の違いや、顧客エンゲージメントの具体的な取り組み事例を紹介します。

顧客エンゲージメントとは

「顧客エンゲージメント」という言葉の一般的な定義はまだ定まっていません。まずは各社の定義をみてみましょう。

さまざまなチャネルを通じた顧客との対話によって、関係性を強化するプロセス

(HubSpot )

友好的な関係性を強化すること

(Forbes)

顧客との関係を深めること

(btrax)

ブランドとユーザーの親密さ、結びつき、絆や共感といったつながり

(イルグルム)

さまざまなチャネルを通じて、企業やブランドと顧客との間につながりを作ること

(ヤプリ)

各企業によって定義の表現に違いはありますが、一貫して顧客との「深い関係性」「友好的なつながり」「親密さ」といった意味合いを感じ取ることができます。

例えば「親密さ」という言葉を使うと、顧客がどれだけ企業やサービスに対して愛着を持っているのかという観点で「ロイヤリティ」と似たニュアンスを持つように捉えられます。しかし、ここで注意が必要なのが、「顧客エンゲージメント」と「ロイヤリティ」では、その測定方法が異なるという点です。

ロイヤリティは、アンケートなどによって算出される NPS の指標によって、顧客の感情を測定します。一方で、顧客エンゲージメントは、顧客の感情ではなく、その顧客と企業の親密さや感情の動きによって生じる「行動」に基づいて評価されます。

顧客エンゲージメントがなぜ重要なのか

 次に、なぜ顧客エンゲージメントがサブスクリプションビジネスにおいて重要視されているのかをご説明します。

サブスクリプションビジネスは、顧客のサービスの利用期間に応じて料金を支払われるビジネスモデルです。そのため、一度受注すれば売上を確定できる売り切り型ビジネスとは異なり、サブスクリプションビジネスは、顧客に総額いくら支払ってもらえるのかが確定していません。もし期待したサービスを提供できず、顧客がサービスに対して不信感を持てば、十分な売上を立てる前にサービスを解約(チャーン)されてしまうリスクがあります。

近年のサブスクリプションビジネスの普及はさらに加速しています。Zuora によると、物理的な製品の所有より、便利なデジタルサービスの利用を求める消費者が増加しており、サブスクリプション・エコノミーのこの7年半での成長率は350% 以上です。

日本でも、スタートアップ・大企業共にサブスクリプションビジネスに参入しようとする中、いつでも解約される危険性と隣り合わせのビジネスモデルをスケールさせるためには、より顧客体験を軸に考えたサービスの提供が必要になります。

急成長する SaaS の組織づくりや、顧客中心の SaaS 経営の考え方については、 Magic Moment 代表取締役 村尾の講演内容をまとめたこちらのレポートで詳しく説明しています。

「数字指向の組織づくりで大切なこと」

実際に IDC の調査によると、世界のトップ企業のうち50%が「2020年までにデジタル化された製品・サービス・顧客体験を生み出すことができるか」に事業の命運がかかっていると予測されています。

また、サブスクリプションビジネスに取り組む際、営業組織の体制として “The Model” という分業方式を組織に導入する企業も増えています。しかし、 マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスと複数部門に渡って顧客獲得・対応を行う The Model を導入すると、かえって組織の分断を招き、顧客体験を悪化させてしまう可能性が高まります。

例えば The Model による組織分断の弊害として、部門同士の対立が挙げられます。営業組織とマーケティングチームは対立しやすいとよく言われますが、組織の分業化を推し進めることでこのような対立の火種を増やすことになりかねないのです。分業制の組織では、それぞれの自分の部門の KPI を達成することに躍起となり、「もっと質の高いリードが欲しい」「マーケティングリードにしっかり営業をかけて欲しい」「契約更新する見込みの薄い顧客はそもそも受注しないで欲しい」と、各部門から様々な不満があがるようになります。このような状況では、顧客がどんな課題を持ち、何を提供することで顧客満足度を高めることができるかを組織一体として考えることは難しいでしょう。

上記の事態を防ぐために、顧客のカスタマージャーニーを組織全体で理解し、それぞれの部門が部分最適になることなく、顧客体験・顧客満足度の向上を目指してアプローチを推し進めることが「顧客エンゲージメント」の考え方です。

より良い顧客エンゲージメント実現の事例

サブスクリプションビジネスの顧客エンゲージメントに関する取り組み成功事例をご紹介します。

HubSpotの成功事例

HubSpot では、顧客がチャーンしている原因を理解することを重要視していました。そこで、CHI(Customer Happiness Index) というスコアを算出し、セグメントごとの顧客エンゲージメントの度合いを把握するシステムを開発しました。

具体的には、この数値を利用して、解約しそうな顧客を特定し、その顧客に対してサポートスタッフが電話でプロダクト利用のサポートを行ったりしました。

また、この指標を用いることで製品のどの機能を使用すればチャーン少なくなるのかということを把握することもできました。顧客の行動に基づいて徹底的に顧客を知ることで、顧客に提供すべき価値が何なのかが分かり、顧客体験をより向上させることができたのです。このように顧客の行動に基づいて顧客との関係性や親密さを測ることが、「顧客エンゲージメント」の考え方です。

EXIDEAの成功事例

 EXIDEAがサブスクリプションビジネスに取り組み始めたのはここ近年のこと。これまで展開していたビジネスとは異なり、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスから構成される組織体制をどう設計すればいいのか、また部門間で対立することなく連携を強化し、一貫した顧客体験を生み出すためにはどうしたらいいのかに課題を抱えていました。

このような課題に対して、部門ごとに施策が最適化されることを防ぐために、SaaS ビジネスを成長させるにあたって全員が追うべき経営指標の可視化やその勉強会などを行いました。また、顧客がチャーンする理由を把握するために、営業担当者やカスタマーサクセス担当者が SFA に顧客データを入力・管理するプロセスを構築しました。

その結果、社員全員のサブスクリプションビジネスや顧客に対する理解が深まり、「LTVの観点では、このようなお客様を受注しにいく必要はないですよね」といったコミュニケーションが生まれるようになりました。言い換えれば、課題を持っていない顧客に対してサービスを売り込まないということであり、顧客にとってより優れた体験を提供できるような組織風土が生まれたということです。

このように同社は顧客エンゲージメントの向上に取り組んだことで、月次平均成長率15% を達成しました。

EXIDEA 様の詳しい事例はこちらでご覧ください。

「月次成長率15%を達成したデータ・ドリブンな SaaS 経営の裏側とは」(株式会EXIDEA)

まとめ

顧客エンゲージメントには、「顧客との深い関係性」「友好的なつながり」「親密さ」といった意味合いがあり、この強化に取り組むことで成長するサブスクリプションビジネスも増えています。

市場のトレンドの変化だけでなく、サービスそのものも常に変化していくサブスクリプションビジネスでは、よりリアルな「顧客の行動」を知った上で顧客の課題を読み取って対応し、より良い顧客体験を提供していくことが企業にも求められます。

そのためには、顧客の行動をデータ化し、分析することができる環境を整えていくことが重要です。どのようなデータ分析を行えば、顧客中心の意思決定ができるのか、学びを深め、PDCA を回しながら確定させていく必要があります。

サブスクリプションビジネスを始めたばかりで、顧客体験を一番に考えたサービスづくりにはどのようなデータが必要なのかわからないという企業様向けに、こちらの資料では顧客中心のデータ分析の仕方を丁寧に解説しています。ぜひご活用ください。

 

サブスクリプションビジネスの売上が伸びる 顧客中心のデータ分析

また、顧客エンゲージメントを強化するための活用できるツールはこちらで紹介しています。

顧客エンゲージメント強化を実現するツール5選を徹底比較