顧客エンゲージメントとは?定義と事例を徹底解説!

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要約SUMMARY
  • 市場の成熟化により、顧客との長期的な関係性を築くビジネスモデルの導入が進んでおり、既存顧客との関係性が重要になってきている。
  • 長期的な関係性が重要となるビジネスモデルにおいて、顧客エンゲージメントの概念が注目されている。
  • 従来の獲得型営業組織と顧客エンゲージメント型組織では、解約の存在や収益源が異なることから、多くの点で組織のトランスフォーメーションが必要。

市場の成熟化により、顧客との長期的な関係性を築くビジネスモデルの導入が進んでおり、既存顧客との関係性が以前にもまして重要になっています。

長期的な顧客との関係性が必要とされるビジネスモデルとして、企業のIRでは、以下のようなビジネスモデルが語られます。

サブスクリプション

サブスクリプションとは、「料金を支払うことで、製品やサービスを一定期間利用することができる」形式のビジネスモデルのことを指します。「予約購読」や「定期購読」という意味の英語です。

代表的な企業例:Adobe、Spotify、Netflixなど

SaaS

SaaSとは、「Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)」の略で、クラウドで提供されるソフトウェアのことを指します。

ユーザー側にソフトウェアをインストールするのではなく、ベンダー(プロバイダ)側でソフトウェアを稼働させ、ユーザーはネットワーク経由でソフトウェアの機能性を活用します。これまでパッケージ製品として売られていたものが、インターネット経由で利用できるようになったものと考えられます。

代表的な企業例:Gmail、Salesfoce、Freeeなど

リカーリング

リカーリングとは英語で「繰り返される・循環する」という意味の英語です。買い切りモデルとは違い、「継続的に料金を支払う」という点でサブスクリプションモデルと似ていますが、サブスクリプションの料金体系が毎月または毎年一定金額なのに対して、リカーリングビジネスは一定期間内に使用した量によって金額が変わるというところが違います。

代表的な使用例:電話使用料や電気代、水道代、ガス代などの支払いモデル

ストック型

ストック型ビジネスとは、仕組みやインフラを作り、定額サービスを提供することで継続的に収益が入るビジネスモデルのことを指します。

売り切り型ビジネスと比較して、仕組みづくりや顧客獲得に時間や労力がかかる場合が多い一方で、定期的な収益が見込める点が異なります。

代表的な使用例:音楽や動画の配信サービス、スポーツジム代、レンタルオフィスなど

リース / レンタル

リースやレンタルは、物件や設備を一定の契約期間の間ユーザーに貸出し、ユーザーは初期投資を抑えて必要な間だけ利用可能となるビジネスモデルです。

代表的な使用例:不動産賃貸、コピー機・複合機、産業機械、レンタカー、レンタル着物など

フリーミアム

フリーミアムとは、フリー(free)とプレミアム(premium)をかけ合わせた造語です。

基本料金は無料で、料金を支払うことでサービスの継続利用や追加機能が利用できる形のビジネスモデルを指します。

代表的な企業例:Slack、Eight、Google Drive、Dropbox など

サブスクリプションビジネスを例に取ると、株式会社 ICT 総研の調査では、サブスクリプションビジネスの市場規模は2023年には約1.4兆円まで拡大する見通しです。これは2019年と比較すると126%の成長です。

サブスクリプションビジネスは従来のビジネスモデルと比較して投資回収期間が長く、継続的な顧客との関係性が収益に大きなインパクトを与えます。(図参照)

このように、従来のビジネスモデルよりも顧客との長期的な関係性が重要になってきたビジネスモデルにおいて、顧客エンゲージメントの概念が注目されています。

顧客エンゲージメントという概念

こうした中で、近年顧客エンゲージメントという概念が注目を集めています。

1) Google トレンド『Sales Enabelement に関するすべての国の注目度』

様々な企業で、顧客エンゲージメントと類似の概念が重視されています。

HubSpot

  • 企業概要

HubSpot社は、インバウンドマーケティング、セールス、カスタマーサービスのためのソフトウェア製品を開発・販売しているアメリカの企業です。

  • 定義

「さまざまなチャネルを通じた顧客との対話によって、関係性を強化するプロセス」

  • 活用シーン

HubSpot では、顧客が解約する原因を理解することを重要視していました。そこで、CHI(Customer Happiness Index) というスコアを算出し、セグメントごとの顧客エンゲージメントの度合いを把握するシステムを開発しました。

具体的には、この数値を利用して、解約しそうな顧客を特定し、その顧客に対してサポートスタッフが電話でプロダクト利用のサポートを行いました。

また、この指標を用いることで製品のどの機能を使用すれば解約が少なくなるのかを把握できました。顧客の行動に基づいて徹底的に顧客を知ることで、顧客に提供すべき価値が何なのかが分かり、顧客体験をより向上させることが可能になりました。

このように顧客の行動に基づいて顧客との関係性や親密さを測ることが、「顧客エンゲージメント」の考え方です。

Forbes

  • 企業概要

Forbesは、Integrated Whale Media Investmentsとフォーブス・ファミリーが所有するアメリカのビジネス誌です。年に8回発行され、金融、産業、投資、マーケティングに関するオリジナル記事を掲載しています。

  • 定義

「友好的な関係性を強化すること」

btrax

  • 企業概要

btraxは、米国およびアジア市場に特化した異文化コンサルティング、ブランディング、マーケティングのエージェンシーです。完全にバイリンガルでバイカルチャルなチームが、サンフランシスコ、東京、ロサンゼルス、上海、ニューヨークにあるオフィスで、結果を出すための戦略とクリエイティブなソリューションを提供しています。

  • 定義

「顧客との関係を深めること」

イルグルム

  • 企業概要

イルグルムは、インターネット広告、ECサイト関連のパッケージソフトを開発、販売する日本のソフトウェアメーカーです。

  • 定義

「ブランドとユーザーの親密さ、結びつき、絆や共感といったつながり」

ヤプリ

  • 企業概要

Yappli(ヤプリ)はアプリ開発・運用・分析をノーコード(プログラミング不要)で提供するアプリプラットフォームです。

  • 定義

「さまざまなチャネルを通じて、企業やブランドと顧客との間につながりを作ること」

各企業によって定義の文言に違いはありますが、一貫して顧客との「深い関係性」「友好的なつながり」「親密さ」といった意味合いが表現されています。

弊社Magic Momentでは、顧客エンゲージメントを、シンプルに「顧客エンゲージメントとは、顧客と企業との関係値の総量」と定義しています。

Magic Moment では、こちらの資料でさらに詳しく顧客エンゲージメントの概念がどのようなもので、従来の売り切り型営業の思考とどのように異なるのかを解説する資料を公開しています。無料でダウンロードできますのでぜひこの機会にご活用ください。

顧客エンゲージメントを重視することの効用

顧客エンゲージメントを重視する顧客エンゲージメント型組織と、獲得を重視する獲得型組織で比較してみると、両者の異なる価値観について知ることができます。

ビジネスのゴール

顧客獲得型の営業組織では新規獲得を重視し今期の売上を最大化することをゴールとしているのに対し、顧客エンゲージメント型組織では、将来的な売上も見据えたLTVを最大化することをゴールとしています。

手段

顧客獲得型の営業組織では、新規案件の獲得を手段とした単発的な考え方であるのに対し、エンゲージメント型の営業組織では、顧客を知り関係性を構築する継続的な価値観が重視されます。

案件判断

案件を受注する際には、獲得型営業組織の場合、価格交渉などの手段を駆使して受注につなげることを重視するのに対して、エンゲージメント型の営業組織ではLTVを望めない案件は受注しません。

営業姿勢

営業の姿勢としては、獲得型営業組織の場合、顧客の要望に応えるように価値を提案するのに対して、エンゲージメント型営業組織では顧客も気づいていないような価値を提案することを重視しています。

評価される営業担当者・トップセールス

獲得型の営業組織では、新規受注が最も多い営業担当者が評価されるのに対して、エンゲージメント型の営業組織では継続案件が最も多く、リピートや紹介での受注に繋げられる営業担当者が評価されます。

市場の成熟による、顧客エンゲージメント型組織の重要性

日本においては、少子高齢化により今後人口がさらに減少する見込みであることから、多くの企業が所属する市場がすでに成熟し、市場自体が大きく伸びないとされています。

そのような中で、既存顧客と長期的な関係性を構築することの重要性が高まっており、それに伴い顧客エンゲージメント型組織への変換が必要となってきています。

従来の獲得型営業組織と顧客エンゲージメント型組織では、解約の存在や収益源が異なることから、以下の点でのトランスフォーメーションが必要です。

  • オペレーション構築:獲得率の高いオペレーションの追求から、解約率の低いオペレーションの追求へ
  • KPI:受注金額からLTVへ
  • インセンティブ設計:獲得重視のインセンティブ設計から、エンゲージメント重視のインセンティブ設計へ
  • ツールの活用:部門内の業務効率化から、部門間の情報連携へ
  • 人材育成:獲得スキルの重視から、エンゲージメントスキルの重視へ
  • データベース設計:獲得までのデータを参照できる設計から、獲得移行のデータも一元的に参照できる設計へ

長く続いた獲得型営業からのシフトは容易ではなく、経営者層主導で組織全体で変換に取り組む体制が必要です。

国内での事例

国内の事例として、株式会社EXIDEAの取り組みを紹介します。

株式会社EXIDEAは、13年に渡る1,000サイト以上のSEOコンサルティングと数百のWebサイト運営経験に基づいて、SEOライティングツール『EmmaTools™』を開発・提供しています。

課題

同社では新規事業として SaaS ビジネスを立ち上げたものの、社内に事業戦略・組織づくりのノウハウが不足しており、何から手をつけたらいいのかが不明確で、事業面と組織面において以下のような課題を抱えていました。

  • どこにリソースを投下すれば売上を最大化できるか把握したい
  • どんな顧客を獲得すべきなのかを明らかにしたい
  • サブスクリプションビジネス特有の考え方を組織に浸透させたい

1つ目の課題は、狙うべき顧客がわからず、顧客獲得コストをどれだけかけていいかわからなかったことです。

当時から MVP(Minimum Viable Product:実用最小限の製品)を開発し、顧客からフィードバックをもらいながら、どの属性の顧客にサービスがマッチするのか、顧客は生涯どれだけのお金を払ってくれるのかを推定していましたが、感覚的な推定しかできていませんでした。

2つ目の課題は、サブスクリプションビジネス特有の考え方が組織に浸透していなかったことです。立ち上げ当初、 EmmaTools™ には7名のメンバーが関わっていましたが、BtoB SaaS の経験があるメンバーはいませんでした。

サブスクリプションの考え方が浸透していないことから、セールスが中長期的な売上よりも短期的な売上を意識してしまい、サービスにマッチしない顧客ばかりを獲得してしまっていました。その結果、カスタマーサクセス担当者が対応に追われ、疲弊してしまうという事態が起きました。

解決策

同社では以下の3つの取り組みを通じて、売上拡大を目指しました。

  • 定量的に事業状態を可視化することができる基盤づくり
  • マーケティング・セールス・カスタマーサクセスの組織体制づくり
  • サブスクリプションビジネスに関する社内勉強会を実施

1つ目に、SaaS の主要指標の可視化に取り組みました。

感覚値で経営し続けるのではなく、同社にとって、鍵となる指標は何かを明らかにして、改善・検証し続けられる仕組みを構築しました。

まずはユニットエコノミクス・CAC・チャーンレートをはじめ、 SaaS の経営に必要な指標を管理することから取り組みました。自社でそれらの指標を可視化するのはとても大変で、正しいデータを集めて、正しく計算できるよう、エンジニアリソースも必要になります。

2つ目に、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスの再編成に取り組みました。

まず「組織のレベルチェック診断」などを行って、部門の成熟度を評価しました。例えばカスタマーサクセス組織のレベルチェック診断では、カスタマーサクセスの概念をどれだけ理解できているか、ビジネスに必要な指標やツールを導入・設定することができているか、指標の改善に効果的な施策を打つことができているかなど、網羅的に組織を評価できました。

それから、

  • マーケティングオートメーションのシナリオ設計
  • 架電のタイミングやKPIの設計
  • 商談のスクリプトの作成
  • オンボーディングフローの設計 など

に取り組みました。

3つ目に取り組んだのは、サブスクリプションビジネスに対する社内文化の醸成です。

各担当者が部分最適となり、「自分のKPIのためだけに仕事をする」という状態を解消するためには、経営視点でビジネスを捉える必要があります。

そこで、社内のメンバー向けに

  • サブスクリプションビジネスとは何か
  • どのような指標があり、どんな意味を持っているか
  • EmmaTools™ は、どのようなフェーズのビジネスなのか
  • 事業の成長性は、どれだけ優れているのか
  • 今後事業が直面する大きな課題は何か など

を学ぶ勉強会を実施しました。その結果、メンバーの視点がとても高まりました。

効果

上記の取り組みの結果、以下の成長を実現しました。

  • 感覚値だった主要 SaaS 指標を定量的に把握
  • ビジネスや顧客の理解が深まり、月次平均成長率15%を達成
  • 事業への取り組みが変わったことによりメンバーのモチベーションが高まった

メンバーひとりひとりが事業視点を持ち、本質な取り組みに集中できるようになったことで、従来よりも大きな成果が出るようになりました。結果として、MRRの月次平均成長率15%を達成できました。

参考:https://www.magicmoment.jp/case/127/

まとめ

  • 市場の成熟化により、顧客との長期的な関係性を築くビジネスモデルの導入が進んでおり、既存顧客との関係性重要になってきている。
  • 長期的な関係性が重要となるビジネスモデルにおいて、顧客エンゲージメントの概念が注目されている。
  • 従来の獲得型営業組織と顧客エンゲージメント型組織では、解約の存在や収益源が異なることから、多くの点での組織のトランスフォーメーションが必要。

市場のトレンドの変化だけでなく、サービスそのものも常に変化していくサブスクリプションビジネスでは、よりリアルな「顧客の行動」を知った上で顧客の課題を読み取って対応し、より良い顧客体験を提供していくことが企業にも求められます。

顧客エンゲージメントの概念についてさらに理解を深めたい方へ

Magic Moment では、こちらの資料でさらに詳しく顧客エンゲージメントの概念がどのようなもので、従来の売り切り型営業の思考とどのように異なるのかを解説する資料を公開しています。無料でダウンロードできますのでぜひこの機会にご活用ください。