大企業が陥る、サブスクリプションビジネスの3つの課題と解決策

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要約SUMMARY
  • 新規事業としてサブスクリプションビジネスに取り組む大企業が増えている。
  • 私たちはこれまで多くの企業とお取引をさせて頂く中で、大企業ならではのサブスクリプションビジネス展開時の苦悩があることに気付いてきた。
  • 本記事では大企業が陥りがちなサブスクリプションビジネス展開の苦悩の原因と、その解決策を紹介。

2019 年は Sansan や freee といった BtoB SaaS スタートアップの大型上場を始め、2018 年に日経新聞1)が「SaaS 元年」と題した記事を出して以来、本格的にサブスクリプションビジネスへの注目が集まりました。

2020 年は 5G のサービス開始というインフラ側の整備を機に、各社の DX(デジタルトランスフォーメーション)が進み、サブスクリプションモデルのサービス提供を開始する企業はスタートアップのみならず、大企業にも多く見られるようになりました。2)

しかし、弊社がこれまで多くの企業とお取引をさせて頂く中で、大企業ならではのサブスクリプションビジネス展開時の苦悩も多くお聞きしてきたため、本記事では大企業が陥りがちなサブスクリプションビジネス展開の苦悩と、その解決策を紹介します。

サブスクリプションビジネスにおける重要な10の指標については、下記資料をご参照ください。

無料ダウンロード:サブスクリプションビジネスに欠かせないKPI 10選

大企業がサブスクリプションビジネスを展開する上で陥る課題と解決方法

課題1: 上層部から事業収益によって評価される

多くのサブスクリプションビジネスの事業責任者から聞かれる話が「コストに対してどれくらいのリターンがあったのかで評価される」という話です。

これまでのビジネスモデルの様に、製品を販売し、それ以上の収益は上がらない場合、一定期間にいくらのコスト(マーケティング・営業・カスタマーサポート)をかけ、どれだけの「売上」があったのかという指標で事業を評価することは当然と言えます。

一方、サブスクリプションビジネスの「売上」は多くの場合が「月額」です。顧客を 1 件獲得する為に「売上=月額」以上のコストを使っていれば、数字上は赤字となってしまうのです(図)。

図:サブスクリプションモデルの投資(コスト)の回収は長期化する

DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める中で、サブスクリプションビジネスを新しく始めても、その収益性の測り方が従来と異なるため、事業としていち早い収益化ができないと判断され、適切なマーケティング・営業コストを使うことができなくなるケースが多くあります。その結果、十分な顧客を獲得できずに事業が伸びないということに陥ってしまうのです。

解決方法: サブスクリプションビジネスにおける重要指標を社内共有する

そもそもサブスクリプションビジネスにおいては売上ではなく LTV(顧客が契約してから解約するまでのどれくらいの費用を支払うのか)を軸にして評価をすることが重要です。

ユニコーン企業へと育っていくスタートアップの多くは、ホッケースティック曲線や J カーブとわれる収益曲線を描いて成長しています。3)

サブスクリプションビジネスにおいては「売上=月額」に対してのコストではなく、かけたコストを何か月で回収できるのか(=Payback Period)が重要視される為、多くのスタートアップが大きく投資を行っているのです。

まずは、社内で上層部に対してサブスクリプションビジネスにおける KPI を共通認識として持たせることからはじめましょう。

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課題2: CRM ツールが活用されない

私たちは、CRM ツールを導入したものの活用しきれていないケースを多く見てきました。

これまで通りの売切り型のビジネスモデルにおいては、実力のあるトップセールスが顧客と関係を築き、納品をすればそれで完結していました。(もちろん、サブスクリプションビジネスにおいても顧客との関係性を築くことの重要性はまったく変わりません)

サブスクリプションビジネスにおいて、カスタマーサクセスという職種が非常に注目を浴びているように、契約開始後にさらに顧客との良好な関係を構築し、価値を感じてもらい、継続利用・追加利用をしてもらえるかが重要です。

つまり、ミクロな視点では目の前の顧客が何に価値を感じて契約をしたのかを振り返られなければ、担当がカスタマーサクセスに引き継がれた途端に顧客の満足度が下がり、解約されてしまうという結果になってしまいます。

さらにマクロな視点では、自社の顧客たちが何に価値を感じているのかを分析できる状態にし、マーケティング・営業にフィードバックできなければ、サービスそのものの Go-To-Market 戦略が破綻してしまいます。

解決方法: CRM 導入の意味の理解を進めると共に、面倒を徹底的に排除する

まずは上述の記事内にもある通り、営業メンバーと CRM ツールに入力する意味、価値を共有するところから始めるべきです。

その上で、自動化・ツール間の連携を進めると共に、分析できないデータの持ち方をなくすため、徹底的に入力内容を構造的に保持できる様にしましょう。営業メンバーは商談内容を入力する手間が好きではないことを理解しましょう。

詳しい原因と解決策は、こちらの記事にも記載しています。

課題3: サブスクリプションビジネス型の組織が作れない

サブスクリプションビジネスに適した組織作りとして、「THE MODEL」と呼ばれる組織があります。

これは、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスが最終ゴールを共有しながら、各チームの KPI に落とし込むことで分業をしてゆくフレームワークです。THE MODEL は、近年のサブスクリプションビジネスの成長と共に非常に注目を集めており、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進し、サブスクリプションビジネスを開始する大企業の多くがとにかくこの組織の形を取り入れようと考えています。

しかし、自社のサービス、マーケット、競合の状況など様々な要素が異なる中で、この組織の型だけを導入した結果、顧客体験が悪化し解約の歯止めが効かないというケースも多く見てきました。

「THE MODEL」の最も素晴らしい点は、この組織の型を作り上げるまでの多くの意思決定プロセスにあります。この意思決定プロセスを無視して型だけを導入した場合、多くの顧客が離れていくということに陥りかねません。

解決方法:サブスクリプションビジネス型の組織を模索する

上記課題1. 2. の双方が解決されれば、自ずと自社サービスにとって最適な組織の形への試行錯誤が始まるはずです。

CRM 中心としたデータがどの様に変化したら、重要指標にインパクトがあるのか、そのインパクトを最大化する為には顧客に対してどの様にコミュニケーションを行うのか(顧客体験を提供するのか)、その為に最適な組織体系は何なのか、重要指標とデータが揃っていることが前提条件になります。

The Modelの落とし穴については、こちえあの記事でより詳しく説明しています。

まとめ

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進と共に、サブスクリプションビジネスを開始・拡大するにあたっての指標はこれまでのビジネスと大きく異なります。

とくに既存ビジネスがある場合は、それが社内の上層部・メンバーを含めて理解されにくいことも多いでしょう。

BI ツールを導入してもどんどんダッシュボードが増えていく、CRM を導入していても Excel ファイルが社内に散乱している、などの企業が多いのが現実です。これでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)や、サブスクリプション事業を開始したことにより本来享受できるはずのメリットが損なわれてしまいます。

「いかに指標を最小限に絞り、営業の手間をかけず必要なデータが構造化した状態で揃えられるか」ということが、サブスクリプションビジネスにとっては重要になります。

弊社が提供する Magic Moment Playbookは、社内に蓄積される顧客や営業活動のデータをもとに、テクノロジーによって営業活動の最適化・自動化を図り、お客様の営業組織の生産性を最大限に高めることができます。

自社プロダクトの詳細は、こちらの資料よりご覧いただけます。

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《引用文献》

1)日本経済新聞.”日本は「SaaS元年」、スタートアップが引っ張る”.日本経済新聞.2018-10.(更新2023-06-12).https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36980290W8A021C1FFR000/.(参照2021-09-09).

2)経済産業省.”令和2年度版 情報通信白書”.経済産業省.令和2年度.(更新2023-06-12).https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd112310.html(参照2021-09-09).

3)公正取引委員会.スタートアップの取引慣行に関する実態調査報告書.公正取引委員会.2022-11.(更新2023-06-12).https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2020/nov/201127pressrelease_2.pdf.(参照2021-09-09).