営業組織に「多様性(ダイバーシティ)」が求められる理由とは

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要約SUMMARY
  • 日本は世界的に見て生産性が低い国であり、生産性を高めるために多様性(ダイバーシティ)の推進が必要である
  • 営業組織においても多様性(ダイバーシティ)を推進することで、組織全体の考える力を増すことができ、柔軟な組織として世の中へ提供できる価値も増える
  • 営業組織で多様性が進まない理由について、特に女性の社会進出が今の日本において最も大きな課題である
  • 性別関係なく働きやすい環境を整えるために、柔軟な働き方ができる制度を整えることと、スキルアップ・キャリアへのフォローが重要である

今回の記事のテーマは、昨今、日本に求められている「ダイバーシティ」です。

企業においては、多様な人材の就業機会を増やし、積極的に活用していこうとする考え方を推奨することも増えていると思います。

ここでは、企業内、特に「営業組織における多様性」とは何か、多様性が求められる理由とそれを踏まえて企業がとるべき策をご紹介します。

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ビジネス環境や就業環境は激しく変化している

世界全体でのインターネットの登場や技術の進化により、グローバル化の進展、AI、ビッグデータ解析などの技術進歩を背景に、ビジネスを取り巻く環境は激しく変化しています。

こういったビジネス環境や、就業環境の変化が、日本の企業がダイバーシティに取り組まなければならない最大の要因となっています。

1人あたりの GDP は世界的にみても低い

国内総生産を表す GDP について、日本は世界第3位(2022年時点)1)となっていますが、これを国民一人当たりの GDP で見てみると世界第31位(2022年現在)2)と、ランキングを大きく落とすことになります。

つまり、日本は世界的に見て「生産性が低い」ということを示しているのです。今後少子高齢化が加速し、労働人口が減る日本が経済大国としての地位を保つには、非常に厳しい現状が待っています。

多様性(ダイバーシティ)とは?企業にとってなぜ必要なのか

生産性を高め SDGs(持続可能な社会)を実現するために、人々が能力を高め、その能力を存分に発揮できる全員参加の社会と人材の最適配置とを同時に実現し、わが国の経済を量の拡大と質の向上の双方の観点から成長させていくことが重要です。

全員参加の社会実現の為には、多様性を認めた取り組みをしていかなくてはなりません。

ビジネスにおける多様性とは?

自然界にあらゆる生物・生態が存在することを「生物多様性」と言い、近年生態系の破壊が環境の観点から問題となっています。

一方で社会的な文脈での多様性は、国籍・性別・種族などの属性的条件と、文化や価値観、ライフスタイルなど思考的条件があります。
オックスフォード英語辞典によると、多様性は「互いに非常に異なる多くの人や物の集まり」と定義されています。

企業として多様性を身につける必要性に関しては、4年毎に厚生労働省が発表している職業能力開発基本計画の第11次(2021年発表)3)にも記載している内容で、国全体の課題として企業1社1社が取り組んでいかなければならないものであると言えるでしょう。

それでは、具体的に企業が取り組むべき多様性の実現に向けた施策とは、一体どの様なものがあるでしょうか?

営業組織における多様性とは

企業において、まずは営業組織に多様性が求められます。なぜなら消費活動を行う人が多様化しているからです。

お客様のニーズをいろんな角度から考えることが、企業において利益を上げ、生産性を高めるために求められ、その結果より多くの価値が提供できるようになるのです。
※お客様のニーズを考える上で、ぜひ「顧客エンゲージメントについて参考にしてください。

組織全体の考える力を増す

例えば「女性を雇ったので、女性に向けた新商品を作り、利益を上げて企業として成長しよう」「外国人が就職してくれたから、外国人向けの商品を開発できる」というようなことも当然メリットとしてありますが、そういう一面だけでなく、“組織全体の考える力が増す”ことこそが一番のメリットではないでしょうか。

「いろんな違う意見」や「違う状況に置かれている人」が企業内に一緒に存在する事で、組織として少数の人たちにも上手く配慮して共に働くことができるようになると、その先のお客様へ提供できる物も増え、また柔軟な組織として世の中へ提供できる価値も増えます。

その様な企業が増えていく事で消費活動はより活発になり、生産性を高められることに繋がっていくでしょう。

しかし現段階の日本企業において、多様性を受け入れることでうまく稼働している営業組織はどれくらいあるでしょうか。

なぜ営業組織で多様性(ダイバーシティ)が進まないのか

営業組織で多様性が進まない理由について、特に女性の社会進出が今の日本において最も大きな課題だと言えます。

女性の社会進出とは?現状と課題

多様化の一つに前述でもあるように、女性の活躍が求められます。しかし実数値をみても、女性の社会進出が叶っているとはまだ言えないのが現状です。

総務省が行った令和3年「労働力調査」4)によると、雇用者総数(5,973万人)のうち女性雇用者数は2,720万人となり、雇用者総数に占める女性の割合は45.3%と、前年と比較して0.2ポイント上昇した。

その一方で、「男女共同参画白書令和4年版」5)によると非正規雇用労働者の割合が男性21.8%に対して、女性が53.6%と非常に高う数値が報告されており、働く女性は増えているが、その半数以上は非正規雇用という実態が明かされている。


※女性が働きやすい組織の作り方に関しては、こちらの記事もご覧ください。

つまり、働いていない女性が男性に比べ多いだけではなく、働いていたとしても本人が望む、望まない関わらず、非正規雇用形態としての勤務を選択している人が多く、企業内においても男性正社員の割合が多くなっている事が見て取れます。

上記で女性の正社員比率が低い為に、日本の管理職の女性比率が諸外国に比べても非常に低いデータとなっています。

帝国データバンクが行った「女性登用に対する企業の意識調査」6)によると、1989年に2.0%だった女性課長比率は、年々増えてきてはいるものの、2021年の統計を見ても8.6%と、まだ10%を超えることはありませんでした。

年功序列が前提となった昇進制度

日本の女性は結婚や出産を機に退職することがある為、勤続年数が短くなる傾向にあります。女性の労働力率を M 字カーブを描いているとよく言い表しますが、30~34歳という会社内でも中核を担う営業戦力となってきた年齢の女性が最も労働力率が低くなっています。

子育てがひと段落し、再度労働力として戻ってくるには10年程度の時間を要します。その間、男性社員は離職することなく働き続けるため、必然的に男性社員が昇給していきます。

この様に現在の日本の年功的な昇進制度では、管理職に就く前に退職してしまったり、フルタイムでの勤務を続けることができなかったりする為、男性に比べて女性の管理職が増えにくいと考えられます。

子育てやと介護仕事の両立

育児休暇制度を利用し、その後復職したとしても、時短勤務や非正規雇用形態としての勤務を選択する女性は少なくありません。子供が小さいうちはしばらく働かないという選択肢をとる方もいるでしょう。

そういった人たちが復帰した後に、しっかり仕事ができ、活躍できる環境が無ければ、なかなかその先の管理職を目指すことは難しいでしょう。

また育児がひと段落し、バリバリ働こうと思った矢先、親の介護が始まり、やはり希望した通りの働き方を選択できず、退職してしまうこともあるでしょう。

改めて多様性とは何か?働きやすい組織を作り、ビジネスを成長させる

企業努力により「働きたくても働けない」女性社員が生き生きと働くことができるようになる環境が整うことで、離職率も下げられ、延いては企業のビジネスの成長に繋がっていきます。簡単にはいきませんが、その第一歩として、性別関係なく働きやすい組織づくりを行ってみるのはいかがでしょうか。

例えば個人のニーズに応じた雇用形態や働き方の選択肢を用意し、フルタイムやパートタイム、オフィス勤務、在宅勤務など、柔軟な働き方ができるように制度を整えることで、働きやすさが従業員のモチベーションを向上させ、従業員満足度の向上にもつながります。

大切なことは、どの様な働き方をする社員に対しても、スキルアップやキャリアの幅を広げられるよう、連携して背中を押してあげる、制度や風土を企業が持つことです。

また営業組織においては、マネージャーが多様性を理解し、各個人のスキルを見出し、引き上げていくことで営業利益の最大化をどう実現させていくのかを考えていくことです。

そういった意識を雇用者が持つことで、労働者側も多様性ある企業かどうかを見極め始めます。雇用者は、自社が選ばれる企業となり、優秀な人材が自然と集まってくることで、より良いサービスを提供できていくと考えます。

つまり雇用者は、労働者を選ぶのではなく、選ばれる立場であるということです。その意識をもって制度を整えていく必要があるのです。

まとめ

以上を理解し、各企業は女性が働きやすい組織を作っていく必要があります。もちろん女性だけでなく男性も、人にはそれぞれ強みがあります。

労働者全員の強みを引き出すスキルと制度を提供し、さらにフォローしモチベーションを向上させる仕組みを雇用者は提供することで、多様性のある人が、自発的に仕事をする組織に変わることが可能です。

それにより営業組織を強化し、企業の生産性を高め、国全体への良い影響が出ることを望みます。

弊社では、他にも営業組織における様々な側面においてどう言った課題があるのかを診断することができるレベルチェックシートを公開しています。無料でダウンロードできますので、自社の営業組織の改革にぜひご活用ください。

《引用文献》

1)GLOBAL NOTE.名目GDP(IMF統計).GLOBAL NOTE.2023-04.(更新 2023-05-25).https://www.globalnote.jp/p-data-g/?dno=8860&post_no=1409,(参照2020-04-01).

2)GLOBAL NOTE.世界一人当たりの名目GDP国別ランキング推移(IMF).2023-04.(更新 2023-05-25).https://www.globalnote.jp/post-1339.html,(参照2020-04-01).

3)厚生労働省.第一次職業能力開発基本計画.厚生労働省.2021-03.(更新 2023-05-25).https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17632.html,(参照2020-04-01).

4)総務省統計局.働く女性の状況.総務省統計局.2023-05.(更新 2023-05-25).https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/21-01.pdf,(参照2020-04-01).

5)内閣府男女共同参画局.男女共同参画白書令和4年度版.内閣府男女共同参画局.2023-04.(更新 2023-05-25).https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/honpen/b1_s02_01.html,(参照2020-04-01).

6)帝国データバンク.”女性登用に対する企業の意識調査”. 帝国データバンク. 2021-08-16. (更新 2023-05-25). https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p210805.html, (参照 2020-04-01).