インサイドセールスの立ち上げ方 The Modelのファーストステップ【ウェビナーレポート】

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要約SUMMARY
  • The Model を導入する場合、影響度が小さく、効果を出しやすいインサイドセールスから着手すると成果に結びつきやすいです。
  • 業務オペレーションを確立したり、部門間の取り決めを行い、 ツールが最大限効果を発揮できるようにすることが重要です。
  • インサイドセールスは6つのステップを踏むことで最短距離で立ちがります。 組織体制、KPI や ROIの設定、オペレーション構築、データ活用、育成を行うことで、インサイドセールスの立ち上げを成功することができます。

Magic Moment では『インサイドセールスの立ち上げ方 The Modelのファーストステップ』のウェビナーを開催しました。

2019年から2020年にかけて、新型コロナウイルスの影響で営業活動をリモートで実施する企業が増えました。結果としてコロナ以前から注目されていた The Model の導入、それに伴うインサイドセールスの立ち上げが進んでいます。

しかし、実際に導入するにあたり、「どう立ち上げたらいいかわからない」「運用するにあたって注意すべきポイントがわからない」といった声を良く聞きます。

本記事では、インサイドセールスの立ち上げ方に関して、ウェビナー(セミナー)内容の一部を紹介いたします。

インサイドセールスを立ち上げ、営業の成果を10倍にした『Magic Moment Playbook』

インサイドセールスの立ち上げに重要な The Model の概念

The Model とはマーケティング、インサイドセールス、外勤営業、カスタマーサクセス、各4部門の KPI を徹底的に追求していくことで LTV を最大化していく仕組みです。大企業やスタートアップ問わず採用されている考え方です。

図1: The Model の概念(Sales force 社『「The Model 」とは?概念と実践を Sales force がわかりやすく解説よりMagic Moment作成)

大企業をはじめとした、 The Model 導入・立ち上げの難しさ

部門横断プロセス設計の難しさ

特に大企業では、すでに既存の仕組みがあるため、比較的規模の小さい SMB やスタートアップに比べ、導入する難易度が高いと言われています。難しさを突破していくには、スモールスタートで始め、段階を踏みつつ社内の理解を得ていくことが望ましいと言えるでしょう。

大企業が The Model を導入する際、難点となりうる下記4点を紹介します。

難点1:ステークホルダーの多さ

The Model の導入は、企業の顧客接点改革を意味しています。マーケティング、営業、カスタマーサクセスと部門を越えた取り組みになるとステークホルダーの数は多くなり、企業によっては管掌する取締役も異なります。商材、ステークホルダー、各部門の思惑などを踏まえるとプロジェクト化することがそもそも難しいと言われています。

難点2:営業という聖域の改革

今年の実需(=売上)を優先するのか、将来のあるべき姿を優先することにリソースを投下するのかは、プロジェクト化初期の壁もあります。業績が好調な企業は、営業が強い企業ほどいま変化を加える必要はないと判断され、 The Model 導入の取組み難易度はさらに上がります。

難点3:部門横断プロセス設計の難しさ

プロジェクトを組成し、エース人材を投入しても部門横断の全社最適の業務プロセス構築は難しいです。
特に隣の部署の人がが何をしているのかすらよく理解できていないことは大企業では当たり前に起きています。
一方、 The Model は顧客のつながりを軸に部門横断で横櫛の業務プロセスを設計することが必要となり、プロセス設計の勘所がないと、悪い結果につながってしまいます。

難点4:The Model が自社に合うのか確証が持てない

The Model が自社の文化・事業に適合するのか確信が持てないため、プロジェクトの推進力が弱くなる難点もあります。

なぜインサイドセールスの立ち上げから始めるのか

インサイドセールスは事業部の裁量で始めやすいため、スモールスタートで始められます。いきなり The Model を始めるのではなく、商談を創出する領域から KPI を設定し取り組んでいけるので、The Model の中で最初に着手するにはインサイドセールスは向いています。

コロナの影響もありますが、コロナ前からインサイドセールスはリモートで行ってきたので、 The Model を進める上でとりかかりやすいのです。

最近はインサイドセールスの立ち上げをコンサルティングするサービスも増えてきております。

また、HubSpot Japan の「日本の営業に関する意識・実態調査2021」では、買い手が考える好ましい営業スタイルが訪問からリモートに逆転するなど、営業方法に大きな変化が生まれています。1)

図2:買い手が考える「好ましい営業スタイル」(HubSpot Japan『日本の営業に関する意識・実態調査2021』よりMagic Moment作成)

日本でもインサイドセールスの立ち上げが急速に普及している

図:インサイドセールスが普及している(Magic Moment作成)

インサイドセールスが盛んな米国では、業種・業態によらず 7 割の営業活動が非対面で実施されており、手法として確立されています。日本でも1年以内に導入予定を含むと 4 割近くにのぼり、急速に加速することが予測されています。

世界情勢によって急速にリモートでの活動が要求されている背景も重なり、リモートで行えるインサイドセールスの重要性が増してきています。

新しい営業職(インサイドセールス・カスタマーサクセス)の求人数は2年間で7.4倍に増加していることから、雇用が増えてることが言えるでしょう。2)

成果につながらない MA ツール×インサイドセールスの現実

インサイドセールスの立ち上げに伴い、マルケトなど MA ツールの導入を進めている企業様も多いですがMA ツールだけでは、顧客はナーチャリングされません。MA ツールの効果を最大化するためにどういった点に留意すべきか紹介します。

KPI を可視化する

メールマーケ、ステップメール、キャンペーン、エンゲージメントプログラムなどあるが、特に BtoB では、マーケ施策に掛け合わせて営業担当者の接触(架電・メール)がない限り、商談機会を創出することが難しいと言えます。

故に、インサイドセールスとの施策の連携が必要であるができていない、または、施策のフィードバックがない状況です。もしくは、マーケからの一方通行のコミュニケーションとなっています。

定量的な改善プロセスを回すために、 MA ツールでは施策事(キャンペーン事)に ROI を測定できる機能がありますが、そもそも KPI の設定ができておらず、施策の ROI が判断できないため、改善のプロセスを回すことができない傾向があります。 KPI を可視化することで MA ツールは効果測定ができるようになります。

インサイドセールスの属人化

ナーチャリングが上手くいかない要因として、インサイドセールスの属人化があげられます。属人化してしまう要因としては、インサイドセールスの KPI /目的、体制、オペレーションルール、ツール、育成計画が整っていない問題があります。

リードソースに対してどういったスクリプトでどのようなアクションを実施するのか組織として具体的に定まっていないことや、架電、メールによるフォローアップにより、インサイドセールスが個別にお客様の興味関心を高める活動の実施が必要(スクリプト、メールテンプレが必要)な場合があります。

効果を出すためには、適切なタイミングでフォローアップが実施できるようなデータ活用も(ただのテレアポにならないように)行う必要があります。

リサイクルは必須である

E-book やセミナー参加からのすぐに取得できるアポイントは10~20%(多くても)程度であり、実際、10件のリストがあれば9件は断られ、1件アポイントに繋がります。残り9件は、情報を更新しインサイドセールスで時期を改め活動できるようリサイクルすることも重要です。

定量評価の重要性

往々にしてインサイドセールスが属人化してしまうのは、各インサイドセールスに適した KPI が割り振られていないことが原因と言われています。属人化を避けるためには件数などインサイドセールスの定量評価を行い、目標・KPI を設定し、成果創出に繋がっているか明確にトラッキングできるような体制を敷くことが重要です。

インサイドセールス立ち上げの6つのステップと具体的な取り組み

図3:インサイドセールス立ち上げのステップ路取り組み(Magic Moment作成)

1.インサイドセールスチームの立ち上げについて

インサイドセールスのチームは主に3つの種類に分けられます。

①インサイドセールス +外勤営業(代理店): 

  • 案件発掘・育成までインサイドセールスが実施し商談設定し、商談は外勤営業が訪問にて対応します。
  • 分業型を取り、一定の基準によって営業ステージを分解し、決められた基準をクリアした場合にフィールドセールスに引き渡します。比較的商材が限定され、単価が中から高い商材の場合に取られる体制です。

②インサイドセールス +インサイドセールス(クローザー)

  • 全ての営業プロセスをインサイドセールスで実施します。
  • 方法として分業型をとり、一定の基準によって営業ステージを分解し、決められた基準をクリアした場合に案件に引き渡します。これは単価が低い商材(販売先が中小企業)の場合に取られる体制です。

③インサイドセールス +アカウント営業

  • パートナーとの協業モデル商談は、パートナーが商談を実施します。
  • 営業体制として協働型を取り、インサイドセールスとアカウント営業が一つのチームでアカウントプランを立てて協働し、攻略していきます。社内の顧客データ、デジタル経由からのリード情報、アウトバウンドコールでアカウント営業へ商談や情報の連携を実施します。

インサイドセールスのオペレーション全体像

インサイドセールスのチームを定義できたら続いてはインサイドセールスが売り上げを拡大するためにどのようにチームに貢献できるかに焦点を当てています。

その最重要なのは、どの範囲をインサイドセールスが担当するかの明確化です。実際にインサイドセールスが見込み顧客の育成のみを担うのか、その先の商談やクロージング部分に関してもカバーするのか、対応範囲を明確にすることが重要です。

部門間でもインサイドセールスの役割の定義やオペレーションに関わる部分を明確にすることで、売り上げを最大化するための適切な体制を敷くことができるはずです。

図4:インサイドセールスオペレーション全体像(Magic Moment作成)

全体の業務フローの作成

インサイドセールスの役割が決まったら、実際に一枚絵を描き、業務フローを定義しておくことも重要です。

業務フロー間にまで落とし込めれば、部門間で抜け落ちてしまう業務が無くなったり、そもそも関連部門のメンバーの業務理解が進みます。その理解がないと、データが貯まる場所やデータがどのように活用されるかが把握できません。そのようなことを避けるため、業務フローやシステム構成図を描いて、全体の理解を深めていくと良いでしょう。

2. 立ち上げ時の KPI 設定/ ROI 測定

インサイドセールスは商談数を KPI とするが、フィールドセールスが結果的に受注できたかまでを踏まえて設定すると良いと言われます。部門単体ではなく、横串で部門間が有機的に結びついた KPI が設定できることが望ましいと言えます。

発展的には部門間の KPI が ROI 改善にどうつながっているかまで測定できるのが理想です。

図5:インサイドセールスは各部署のKPI設定が容易(Magic Moment作成)

また、マーケティング担当者や企画担当者の領域にはなりますが、 MA を使って ROI を測定できる機能もあります。例えば Marketo のパフォーマンスインサイトのように、 MA ツールの一機能で ROI を測定でき、それを使いこなすことで ROI 測定をして組織を改善する PDCA を回すことができるでしょう。

Hubspot の場合は、 ROI までは取れないですが、商談化率やコンタクトの取得単価など、データの見え方を自動化するのに役に立ちます。また、担当アカウントが決まっている ABM などのアプローチで効果を発揮します。

3.運用 KPI 設定とルール決め

インサイドセールスの人が自身の活動をしやすいような情報の受け取り方やガイダンスを業務プロセスの中でストレスなく確認できるよう、ルール設定をすることが役に立ちます。

Playbook(営業の合意形成を型化) を通し、インサイドセールスが合意すべき事項を設定し、それをクリアできるよう意識すると効率化するでしょう。実際に BANT を確認したり、 BANT 情報を引き出すための質問の仕方など、マニュアル化することで、インサイドセールスが業務を進めやすくする環境を整えることができるでしょう。

4.ツールの選定、案件ステータスの定義

MA 、 CRM に加え、アメリカではデータ分析や周辺の SalesTech のソフトウェアを導入することでインサイドセールスの業務を行いやすくします。

Salesloft や Outreach はインサイドセールスの業務を効率化させ、結果につながるガイダンスをしてくれるツールです。 CRM や MA に限らず、このようなツールを積極的に導入し、活用することが成功につながります。

どうしても日本の企業はこのようなツールへのアレルギーがあり、 CRM や MA は浸透してきましたが、インサイドセールス用のツールや分析系のツールを使うことで業務のパフォーマンスの向上、そしてツール導入への ROI も十分に期待できるのです。

Salesloft や Outreach のデータは CRM や MA とも連携できるので、営業活動のジャーニーを強化できるのです。

図6:セールスエンゲージメントについて(Magic Moment作成)

5.顧客データの精査、データ入力の業務設計

商工リサーチや帝国データバンクであれば、企業の情報を購入することができます。企業の情報を強化するだけでなく、どんなツールを導入しているか等のデータも取れるため、マーケティングをする際にセグメントを切って適切に企業へのアプローチを行えるようになります。

ファーストトークやオファーする文面もカスタマイズできるので、データを掛け合わせることで精度の高いアクションを行えるでしょう。結果的に無駄打ちが減り、届けるべき企業に適切な情報を渡すことができます。

6.セールスイネーブルメントの導入・立ち上げ

オペレーションが適切に走り PDCA を回せるようになると、営業のデータをもとにどういうアプローチをすべきか分かり、顧客の解像度が上がり、育成も正しく行えます。

まとめ

  • 6つのステップを行うことで正しい KPI や目的が設定でき、その上でどういった体制を組むべきかも見えてきます。
  • そして、どのようなオペレーションを組むべきで、どのツールを導入しデータを貯めていくべきか、自社の社員をどのように育成していくべきかも見えてきます。
  • 結果として、インサイドセールスの育成を行い、組織を強くしていけるでしょう。

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《引用文献》

1)HubSpot Japan, 「日本の営業に関する意識・実態調査2021」. 2021-02, https://www.hubspot.jp/company-news/stateofsales-20210208, (参照 2022-03-23)

2)パーソルキャリア株式会社, 「”新しい時代に求められる営業職”に関する調査」を実施「インサイドセールス」「カスタマーサクセス」職の求人が 2年半で約7.4倍に増加~一方、営業職経験者の大半が十分に職種理解をしていないという結果に~. 2021-08. https://www.persol-career.co.jp/pressroom/news/research/2021/20210823_01/, (参照 2022-3-23)