営業力を上げる営業人材の育成方法とは

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要約SUMMARY
  • 企業を取り巻く環境が大きく変化し、人材投資への注目も高まる中で、営業組織の人材育成は属人的な要素が多い。営業組織の人材育成に取り組むことで、営業生産性の向上や組織力強化等の効果を期待できる。
  • 市場の成熟やプロダクトの複雑化により、課題解決型の提案が必要となったことで営業担当に求められるスキルや専門性は高くなっているが、OJTで現場に丸投げのスタイルの人材育成や、属人的な教育体制を採用している企業も多いのが実情である。
  • 営業マンの育成を成功させる上では、営業活動の標準化が重要。営業活動の標準化を進めることで、各担当者の営業スキルを底上げし、組織全体の営業成績・生産性の向上も期待できる。
  • 営業活動の標準化を進める上では、営業オペレーションおよび各担当者の成果の可視化および、各担当者のスキルレベルを元にした育成プロセスの設計・運用が重要。担当者の自社サービスの理解や、ロープレ・事前準備等のプロセス改善も効果的である。

急速に進む少子高齢化や人生100年時代の到来、第四次産業革命等に起因する産業構造の変容や2020年以降のコロナ禍によるリモートワークの普及など、企業を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。

企業が事業環境の大きな変化に対応し、持続的な企業価値の向上を推進していく上で、事業ポートフォリオの変化を踏まえた付加価値を生み出す人材の確保・育成、組織の構築などの人材戦略が重要視されています。

2021年6月には東証のコーポレートガバナンスコードが改定され「人的資本」の情報開示について義務化されるなど、人的資本への投資に関して大きな注目が集まっていると言えます。

そのような中で、営業組織の人材育成・人材投資についてはまだまだ属人的な要素が多く、課題を感じている企業が多く存在しています。

例えば、営業スクリプトの自動作成ツールである株式会社 UKABU が2022年3月に実施した「営業組織の課題」に関する調査では、「営業の育成」を課題と感じている経営者・営業職が最も多かったという結果が出ています。

一方で、すでに営業組織の人材育成に取り組んでいる企業においては、下記図表の通り営業生産性の向上やパイプラインの拡充、有効な商談率の向上といった効果が出ています。

つまり、人材育成に正しく取り組むことで、営業の組織力向上に繋がるのです。

本記事では、営業の人材育成が重要視される背景とよくある課題、営業の人材育成において気をつけるべきポイントを解説します。

営業担当者のスキルのばらつきに課題を抱えていたり、営業組織の育成についてより詳しく知りたいと感じている方は、下記資料も合わせてご覧ください

→ダウンロード:営業組織の育成ハンドブック

営業の人材育成が重要視される背景

営業の人材育成が重要視される背景としては、営業組織を取り巻く環境の変化があります。

営業の人材育成が重要視される背景①:市場の成熟・プロダクトの複雑化

モノやサービスが市場に溢れ、特にインターネットの普及により誰でも気軽に情報を入手できる時代になったことで、製品説明的に情報を提供するだけの営業スタイルでは通用しなくなり、自社の製品・サービスを活用して顧客の課題を解決に向けた提案を行う、「課題解決型営業」が求められるようになってきました。

また、BtoB 製品・サービスを提供するビジネスにおいては、契約して終わり、ではなく顧客に継続して製品を利用してもらう SaaS(Software as a Service) の形態を取る企業も増えており、顧客の課題に応じて適切な提案をしながらより多くのお客様の利用を拡大していく必要があります。

グローバル化と生産技術の革新によって製造コストが劇的に低下し、プロダクトは複雑化しています。特に製品からソフトウェア・ソリューション、そしてインサイトへと企業への取り扱い商材も進化し、営業担当者に対しても高い能力が求められるようになっています。

営業の人材育成が重要視される背景②:顧客の購買行動の変化

市場の成熟やプロダクトの複雑化と合わせて、企業の購買行動も変化しています。

具体的には、顧客は事前の情報収集はインターネットで自力で行い、実際に検討するタイミングで初めて営業と接点を持つ、というケースが増えてきています。

こうした事前リサーチの徹底によって購買担当者自身の商品知見も高まってきており、営業担当者に対しては、特に高額の商品を購入する場合ほど、その分野における高い専門性が求められています。

また、コロナ禍を経て非対面(Web 会議など)の接点も増加することで、購買活動に関わることのできる部署・人数が増え、購買プロセス自体も複雑化しています。

上記の通り、営業担当として顧客の課題を把握し、適切な提案を行うスキルや、製品に関する高い専門性が求められており、企業における営業の人材育成は急務となっています。

しかし、そもそもなぜ、営業に関わるメンバーの営業スキルにばらつきが生まれてしまうのでしょうか。

ここでは大きく2つの原因をご紹介します。

営業スキルにばらつきが生まれてしまう原因①:「 OJT(On the Job Training) 」という名の「丸投げ」が恒常化している

日本の多くの企業においては、入社時の新人研修はしっかりと行われるケースが多いですが、実務に関わることは OJT、つまり現場の上司や先輩などのトレーナーが実務を通じて指導し、スキルや知識を学ぶというケースが現在も多い傾向にあります。

OJT を受けるメンバーは早いタイミングで実務に触れながら学ぶことができるため実践的な知識やノウハウを身に付けやすく、また研修のための時間を確保する必要がないため、指導するトレーナーにとっても貴重な時間を有効に使えるというメリットがあります。

一方で、実務ベースでの研修となるため体系的な教育がしづらく、現場のトレーナーの指導能力が低いと、OJT を受けるメンバーの立ち上がりのスピードや習得できるスキルにばらつきが出てしまいます。

また、階層別研修といった入社時以外の研修体制が十分でない企業では、入社時の OJT 以外に営業力を上げるための研修が存在しない、といったケースもあるでしょう。

営業スキルにばらつきが生まれてしまう原因②:営業メンバー間のコミュニケーションの希薄化

終身雇用制度の崩壊や転職市場の活性化などの影響を受け、就労スタイルや雇用形態が変化したことで、上司・部下、先輩・後輩といった従来の関係が希薄化しています。

特にコロナ禍におけるリモートワークの浸透により、社内コミュニケーションは対面ではなくオンラインのビジネスチャット等によるやり取りが増えています。
そのため密なコミュニケーションは取りづらくなっており、例えば「上司・先輩の仕事を見ながら学ぶ」といった属人的なスタイルを維持することは難しくなってきています。

このように、様々な社会情勢の変化によって従業員の働き方、組織のあり方が大きく変容し、従来の OJT /実務ベースの指導方法や、対面での属人的な育成方法には限界が来ていると言えます。

営業マンの育成を成功させるためのポイント

属人的な育成方法から脱し、営業担当者のスキルのばらつきを解消するために、営業マンの育成においては「営業活動の標準化」を目指すことが重要です。

営業活動の標準化とは、属人的になりやすい営業活動に関わる業務プロセスや営業担当者の成果を可視化して、組織としてのノウハウを各営業担当者にも浸透させていくことです。

標準化によって、営業組織全体で統一して育成プログラムの作成等が可能になります。

そのため、営業の OJT で丸投げされて育成の質にばらつきが出たり、コミュニケーション希薄化によって周囲からフィードバックをもらえず成長できなかったりという問題を解決しやすくなります。

営業活動標準化のメリット

標準化の具体的なメリットとしては、下記3点が挙げられます。

標準化の具体的なメリット①:個人スキルの底上げによるチーム全体の営業成績の向上

営業活動が標準化できていない組織においては、個々人のパフォーマンスにばらつきが発生しがちです。

営業担当者の成果を可視化し、理想的な営業担当者の特徴を抽出して「型化」することで、低パフォーマンス人材の営業スキルを底上げし、どの営業担当者もトップセールスが行っているような顧客とのコミュニケーションを実現させることが可能です。

属人性を排した営業に進化させることで、組織全体の営業生産性を向上させることができます。

標準化の具体的なメリット②:モチベーション向上による離職率の低下

営業担当者は組織として、個人として設定された目標をベースに日々の営業活動を進めます。

しかし、短期的な目標達成に追われることで顧客の状況を顧みず自分本意な営業スタイルになってしまった結果、目標を達成できなかったり、成果をなかなか生み出せず自分自身のキャリアに迷ってしまうことで、最悪の場合退職してしまうこともあるでしょう。

営業活動の標準化を進めることで、各担当者がトップセールスのノウハウを習得・利用して成果を生み出しやすい環境作りができるため、個々の営業担当のモチベーション向上、ひいては離職率の低下にも繋がります。

標準化の具体的なメリット③:新卒人材の育成、中途人材のキャッチアップの高速化

現在営業組織に在籍しているメンバーのみならず、営業部門に新たに配属された新卒や中途入社の人材の育成にも力を発揮します。

標準化された営業アプローチが可視化・言語化されていることで、習得すべきノウハウ・スキルや次のステップが明確になり、育成される側(新卒・中途入社の人材)のモチベーション向上にも繋がるでしょう。

キャッチアップの高速化により成果を上げられるまでの所要時間(ランプアップ期間)が短縮されることで、OJT 等と比較した人材育成の大きな効率化も期待できます。

標準化のための方法

営業組織の標準化を進めていくためのプロセスとしては、大きく5つのステップがあります。

①営業オペレーションの可視化

売上増加・拡大に必要な業務に段階(例:受注率・解約率・商談期間等)を設定し、各段階の移行率や移行のスピード(例:受注まで何日かかっているか等)を測定します。

②各営業担当者の成果の可視化

営業オペレーション全体で段階ごとに設定し可視化したデータを、営業担当者の個人ベースでも測定し、各個人の現在の成果を可視化します。

③理想的な営業担当者の特徴の抽出

②のステップで測定した各個人の移行率や移行スピードをもとに、各指標が上位の営業担当者の行動の特徴や、その成果を生み出すために必要な活動量を言語化・明確化します。

ここで抽出した「理想的な営業担当者の特徴」がロールモデルとなり、育成の方針やプロセスを検討する上でのベースとなります。

④スキルレベルの可視化

③のステップで定義した「理想的な営業担当者の特徴」をベースとして、②のステップで可視化した各営業担当者の成果をベースに課題を洗い出し、各担当者に「どのレベルのスキルを求めていくのか」を定めます。

例えば「新入社員であれば”XX”というスキルまで求める」等です。

⑤育成プロセスの改善

上位の営業担当者の行動に近づけるためのトレーニングを設計・運用しながら継続的な改善を加えていきます。

その他の営業人材育成のための方法

ここまでは、営業組織の標準化をベースとした営業人材育成のための方法をご紹介しましたが、他にも様々な効果的なアプローチが考えられます。ここでは2つのアプローチもご紹介します。

自社サービスの理解を深める

営業担当者として自社サービスの理解ができていなければ、顧客との信頼関係を構築することは難しいでしょう。上述の通り顧客の購買行動が変化し、商談前に顧客側でも幅広く情報収集が行われている現状では、営業担当がそのサービスや担当領域についてプロフェッショナルであることが求められます。

自社サービスの機能はもちろんのこと、顧客業界ごと、あるいは課題ごとの活用事例等様々な顧客課題にアプローチし、最適な提案ができるようキャッチアップさせることが必要です。

ロープレ・事前準備の改善

ロールプレイング(ロープレ)は、成約率を高める商談を作り出すためのいわば「リハーサル」的な位置付けであり、ロープレを重ねることで営業担当者の引き出しを増やし本番での対応力が高まったり、顧客からの予期せぬ質問等にも適切に対処することができるようになるため有効であると言えます。

また、商談前の事前準備も非常に重要です。BtoB 企業においてはインサイドセールスを導入している企業も増えてきていますが、インサイドセールスからパスされた情報を元に顧客の理解を深めることで顧客の課題や提案すべき内容の仮説を構築できます。結果として、顧客の解像度が高くなり、より顧客の課題に即した提案をすることで商談率が改善する等の成果にも繋がりやすくなるでしょう。

合わせて、ハイパフォーマーがどのような事前準備をしているか言語化した上で、組織内で横展開することも有効でしょう。

まとめ

市場の成熟やプロダクトの複雑化、顧客の購買行動の変化など、営業組織を取り巻く環境の変容により、営業の人材育成が重要視されています。

社内のコミュニケーションスタイルも変化しており、従来の OJT を中心とした教育では個々人の営業スキルにばらつきが生まれてしまいかねません。

営業の人材育成を成功させるためには、営業活動を標準化することで、組織の現状と目指す方向性を可視化することで個人スキルを底上げ、ひいてはチーム全体の営業プロセスの効率化や営業成績向上に繋がります。

営業担当者のスキルのばらつきに課題を抱えていたり、営業組織の育成についてより詳しく知りたいと感じている方は、下記資料も合わせてご覧ください。

<参考>