
世界的調査機関 Gartner が重要だと位置付ける Sales Engagement Technology とは
- SET という営業支援のテクノロジーがアメリカで広まっています。データの収集・分析・可視化を通じて、数値に基づいた売上予測、営業が次にとるべきアクションのを把握することができます。
- 世界的な調査機関 Gartner はこの SET を広がりをデータとして分析し、市場の拡大を見越しています。
- 従来の CRM ツールとの違いは明白であり、根本的な違いがあります。
アメリカでは Sales Engagement Technology (以下、 SET )と呼ばれる営業支援ツールの存在が注目を浴びています。 データの収集・分析・可視化を通じて、数値に基づいた売上予測や営業が次にとるべきアクションの提案を行うセールステックの市場は徐々に広がりをみせているのです。しかし、 SET はまだ日本での知名度が低く、 SET そのものについてもよく分からない方が多いのではないでしょうか。
今回は Magic Moment の経験や調査機関 Gartner の分析などから SET が果たす役割や登場した背景、 また日本でも導入が進んでいる CRM との違いを詳しく解説します。
SET (Sales Engagement Technology)とは
SET とは端的に表しますと、営業担当者が見込み顧客や既存顧客とのコミュニケーションをより効果的に実行できるようにするテクノロジーのことです。それぞれの顧客への最適なアプローチをデータにもとづき可視化し、結果の分析と改善を自動で担ってくれます。
結果、 SET を活用することで顧客との信頼関係を構築しながら持続的な成果をあげることができるのです。
主にアメリカを中心に活用が広まっており、 GAFA と呼ばれるアメリカの先進企業においてもすでに導入されています。
SET を導入することで何ができるのか
なぜこのようなテクノロジーの導入が進んでいるのでしょうか。 SET を活用することで従来のテクノロジーではなし得なかった大きなメリットがあるからです。また、それらのメリットは汎用的であり、あらゆる企業が抱える課題を解決できるともいえます。
営業担当者の行動がデータをもとに最適化される
営業担当者が商談などで顧客との関係構築をする際に AI がこれまでの活動データをもとに効果的なアプローチを自動で提案してくれます。
従来の CRM を活用したアプローチでは、具体的なアクションを担当者自身で判断する必要があり、顧客へのアプローチやそのタイミングには担当者ごとにバラツキがありました。また、複数のツールやアプリケーションを切り替えることが多く、営業活動のスピードを低下させていました。
これは売上において機会損出をもたらすばかりか、マーケティングからのデータが活かされず、その価値を失うことになります。
営業の活動そのものが自動化される
人の介在なしにメール送信などの日常的な営業活動を行うことができます。これはアプローチ先の担当者の役職や関心などに合わせてカスタマイズが可能なため、複雑なコミュニケーションを最適化された状態で実行してくれます。
この機能がもたらす価値とは営業活動の量と質の双方を底上げできることです。つまり、担当者は商談などの顧客との接点のある業務に集中でき、かつ自動化されたコミュニケーションはデータにもとづき最適化された状態になります。
上の図は1週間のうち、営業担当者が費やす業務の割合を示したものです。
ある統計によると、営業担当者の業務のうち、リストの作成や商談データの入力など売上に直結しない間接的な活動が全体のおよそ6割を占めています。一方、お客様との営業活動に使う時間は半分にも満たないのです。
SET はこの間接業務を削減しながら、かつ自動的に最適化してくれます。
データの統合によるコストダウンとデータにもとづく分析・予測の自動化
CRM などのツールを利用している多くの企業では、人がデータを入力する手間やデータ共有の際のシステムの開発・設計に多額のコストを払うことになります。
そのコストを払わずにいるとデータが不正確になり、データにもとづくマーケティングからカスタマーサポートまでの一貫した活動ができなくなります。これはツールそのものの利用価値がなくなっていることを意味しています。
一方、単一のユーザーインターフェースとして機能する SET は人がデータを入力する手間を省くことができます。自動で既存のシステムや CRM など からデータ収集・分析を行い、データをもとにした最適な活動の提示、トレンドの予測まで担います。
つまり、 SET が実現する未来は顧客との関係性をもとにした持続的な売上拡大、営業担当者のリスト作成やデータ入力の手間などのコストダウンです。これらは特定の企業の課題ではなく、あらゆる企業が抱えるものなのです。
Gartner が示す SET が普及してきた背景
ここでなぜ SET が普及してきたのかについて触れましょう。
SET が登場した背景として、営業担当者、特にインサイドセールスを担う組織において業務が複雑化したことがあげられます。近年、販売プロダクトが製品からソリューションやソフトウェアまで幅広く変化したことに伴い、購買に携わる人数や顧客の要望は複雑化してきました。
結果として、非対面のコミュニケーションを担うインサイドセールスはそれぞれの顧客の役職や関心に合わせたメールや電話による活動が求められるようになり、個別に最適化されたアプローチを精査することに時間がかかるようになったのです。
特に地理的に対面での営業が難しいアメリカにおいてはこの問題は顕著でした。
そこで、1つのユーザーインターフェース上でデータを用いたアプローチが可能な SET の需要が高まっていきました。複数のアプリケーションやソフトウェアを使う手間が省けるのに加えて、複雑化する見込み顧客の要望に対して自動で最適なアプローチをカスタマイズしてくれるのです。
事実、政府機関や投資機関向けに戦略・ IT ・組織などさまざまな分野で調査分析レポートの作成からコンサルティングなどの事業を展開している Gartner 社によりますと、 SET 市場の拡大の要因として SDR ( Sales Development Representative )と呼ばれる見込み顧客の整理・育成を行うインサイドセールス組織において、 SET が重要な役割を果たすようになったといいます。
これらの調査を受けて、 Gartner は SET を CRM に並ぶレベル1のテクノロジーであると位置付けました。
Gartner は市場や組織の成熟度をレベル1から5までの5段階の成熟モデルで表しており、レベル1のテクノロジーとは、あらゆるインサイドセールス組織において SET が必須のツールであることを意味しています。
レベル1に位置付けた根拠は数値として明確になっています。
SDR における SET の重要性を示す3つの指標
SDR における SET の重要性を示すデータには以下の3つのものがあります。
- 見込み顧客の育成を担うインサイドセールス組織の87%が SET を採用している
- SET は ROI がプラスである一流のテクノロジーである
- 見込み顧客の育成を担うインサイドセールス組織が SET を成果の創出に必要なテクノロジーであると位置付けている

Gartner は SET について CRM やデータソリューションなどのセールスエンゲージメントのカテゴリにおいてもっとも成長率の高いテクノロジーであるとの見解を示しており、数十億ドル規模の市場になると考えています。
では、 実際にはインサイドセールス組織において SET のどのような点が支持されているのでしょうか?
SET の有効性を示す3つの実態
① SET は営業担当者に好まれるユーザーインターフェースである
Gartner のアナリストによりますと、 営業担当者は SET といったプラットフォームを従来のソフトウェア・アプリケーションと比較してより多く利用しているというのです。単一のプラットフォームであらゆる営業活動が迅速に行えるからだと考えられます。
事実、これらのプラットフォームのアクティブユーザーは60%を超えると推定しており、従来のソフトウェア・アプリのアクティブユーザーは10%から20%ほどに留まるといいます。
②複雑で手間がかかるコミュニケーションを最適化してくれる
コミュニケーションが複雑化したなかで、多くの見込み顧客にアプローチする手段として電子メールがあげられます。しかし、メールはさまざまな顧客ごとにカスタマイズされたものでなければなりません。 SET はそれぞれに適したパターンを自動で作成し、送信することができます。
③営業のプロセス全体を管理してくれる
顧客ごとに複数のワークフローを作成し、タイミング・チャネルを最適化します。自動で実行されるアプローチは記録され、分析と改善のためのレポートの作成を行います。
SET と CRM の違いとは?
SET がもたらすメリットでも少し触れましたが、ここで改めて SET と CRM との違いを明確にしておきましょう。
根本的な違いが2つあります。
CRM
- データを保管・蓄積することを重視しているツールである。
- マネジメントのために利用されることが多い。
まず、 Salesforce や HubSpotといった CRM はデータを保管・蓄積することを重視しているツールであるということです。
つまり、 CRM を活用するマーケティング担当者からカスタマーサポートまで幅広い利用者は蓄積されたデータをもとにどんな業務オペレーションを構築するかなど、ある程度希望通りに自由度が高い状態で利用できるのです。
しかし、言い換えれば担当者それぞれの動きが属人化しやすいという性質を持っています。
SET
- 商談などの営業フェーズにおいて蓄積されたデータをどう活かすのかに焦点を置いたツールである。
- 営業担当者をサポートすることを重視している。
一方、 SET は蓄積されたデータをどう活かすのかという点に焦点を置いたツールです。
つまり、データをもとに営業担当者が取るべき行動を提案したり、行動をもとにより効果的なアプローチを自動で分析します。これは営業担当者の行動をデータドリブンに実行させ、再現性の持った活動ができることを意味しています。
この根本的な違いは 売上の拡大などを目的とする場合、 CRM の効果が疑問視されることになります。
売上の向上に役立たない CRM の実態
CRM を導入する目的はさまざまですが、「売上を上げたい」、「新規のお客さまを獲得したい」といった目的を達成できているところは少ないという現状があります。データを用いて何をするのかに焦点を当てていない CRM はデータの活用に関して個人のスキルに依存してしまうことが要因です。
事実、 CRM を導入して達成できたことは「顧客管理」といった項目が多く、売上や顧客の獲得といった点で活用は進んでいません。これには、そもそも論ですが、 CRM のデータ入力や連携・分析においてデータそのものの信頼性が揺らいでいるという現実もあります。これは人の手が介在することによって生じます。
CRM 活用の難しさについては以下の記事をご覧ください。
・CRM データを活用し、営業力強化を実現する最先端テクノロジー
営業の本質をサポートする SET
Gartner が示すようにいま、あらゆる営業組織に SET が必須のツールとなっているのは、CRM と異なり、 SET が自動的に営業のリソースを増やすことができるからです。
営業が本来集中してリソースを割くべき「お客さまとの接点」を増やし、効果的な行動をサポートするために現れた SET は、営業組織の成果に直結するテクノロジーといえます。
Magic Moment はお客さまの営業の量と質を向上させる SET 、 Magic Moment Playbook を提供しています。
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