営業 DX に必要な組織力強化とは?採用・育成の観点から解説


近年新聞やニュースで「DX」という言葉を目や耳にする機会が増えたのではないでしょうか。DXという言葉は2004年にスウェーデンのウメオ大学教授、エリック・ストルターマンが提唱したのがはじめとされていますが、DXが注目され始めたのは2019年ごろといえます。

その背景には、インターネットとスマートフォンの普及により、新しい技術や革新的なビジネスが早い速度で登場するようになったこと、そしてビックデータとAIの発展が挙げられます。

世界中で DX への投資額は年々増加しており、アメリカの情報サービス会社IDCが2019年10月に配信した記事によると、2020年から2023年までの4年間で世界全体での DX への投資は7.4兆ドルに達すると推測されています。

日本はバブル崩壊以降の失われた20年を経て、2013年ごろから景気が回復し始めたものの、2018年終盤から成長が鈍化しています。そのような中で、日本経済の低成長からの脱却の鍵として DX への期待が高まっています。

また日本には、経済産業省が2018年に発表した DX レポートの中で問題提起した「2025年の崖」の問題があります。これは、刷新されない基幹システム、保守運用予算の高額化、IT 人材の不足、システム老朽化に起因する経済損失の4つの視点から、日本企業の間で今後2025年までにデジタル革命のための IT 予算と人材の不足が深刻化し、国際競争力が失われる可能性について指摘されているものです。

これらの課題には多くの日本企業が直面する可能性が高いとされており、国際競争力の低下を回避するためにも官民一体となって DX 推進の導入が進められています。

そもそも DX とは?

そもそも DX とは何を指す言葉なのでしょうか。経産省が2018年に発表したDXガイドラインver1.0では、DXを以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

簡潔に言えば、データやデジタル技術を活用することで、ビジネスモデルや企業活動における様々な業務やプロセスを改革し、国内外での競争優位性を確立することだと言えます。

IT化と混同されがちですが、IT化はITを使って業務の効率化を図ることを目的としているのに対し、DXはIT技術を手段として活用し、ビジネスと企業活動の改革を進めることを目的としている点で異なります。

営業組織のDXについては、以下の記事もご覧ください。

営業組織のDXとは?(経産省DXレポートからの示唆の考察)

営業 DX 推進の取組み:全体像

DXの推進は企業活動やビジネスモデルの様々なプロセスにおいて検討可能ですが、DXを推進する上で第一に着手すべきなのは、売上に直結する営業活動に関連するプロセスだといえます。

しかし、一口に営業活動といっても営業組織のプロセスは幅広く、大きく分けて戦略、業務、人材の3つの分野に分けられます。そのため、営業組織のDXを推進するためには、戦略プロセス、業務プロセス、それを支える人材プロセス全ての変革が必要となります。

(図:営業組織のプロセス)

 

本記事では、その中でも人材プロセスの一部である組織力の強化について解説しています。営業組織のDX推進や、その他トピックスについてはこちらの記事もご覧ください。

営業組織の DX の方法論

営業DX 推進の取り組み:組織力強化

組織の営業力を強化し競争優位性を築くためには、新たな能力やスキルを獲得するための採用や育成と、今社内リソースにある力を最大限に生かすためのインセンティブ設計が重要なテーマとなります。

 

採用や育成に取り組むためには、現在の組織が強みとして持つケイパビリティと、目標とする組織のケイパビリティを言語化することから始める必要があります。組織に必要な能力・スキルを把握できていないと、どのような人材が必要なのかがわからず、結果としてどのよな人を採用し育成する必要があるのかもわからない状況に陥ってしまいます。組織の現実と目標を明確にした上で、そのギャップを採用・育成という手段で埋めていくイメージを持ちましょう。

(図:組織のケイパビリティにおける現実と目標のギャップ)

営業オペレーションと各担当者の成果を可視化する

組織のケイパビリティを見える化するためには、まず営業オペレーションの可視化が前提になります。自社の営業において、何に対してどれぐらいのリソース(量)を投下し、どの程度の効率性(質)で、どのような時間軸で動いているのかを全て数値に落とし込み、見える化します。そうすることで、各営業担当者が創出している成果を同じ基準で比較することができます。

そこから、組織に本当に高い貢献をしている(新規・継続顧客を合わせて獲得総額が高い)トップセールスの特徴を見つけ出し、組織が理想とする営業スキルを定義します。

このとき、営業担当者ごとのパフォーマンスを比較し、相関が強い要素を発見することが重要です。例えば以下の図では、獲得総額にコール数の差はそれほど影響せず、LTVには解約率の差が大きく影響していることがわかります。

したがって、今までは「コールがたくさんできるスキル」をトップセールスとして重要なスキルと定義していたところ、実際には「解約しにくい商談を進められるスキル」を重視すべきだということが明確になります。

(図:成果と各指標の相関イメージ)

 

組織にとって定量的・定性的に理想的な営業担当者を定義して初めて、採用・育成計画の立案に移ります。

(図:理想的な営業担当者の特徴の抽出)

 

以上のように、これまでなんとなくで行われてきた採用・育成計画も、データを用いて科学的にアプローチすることで、組織に必要な営業スキルを客観的に見つけ出すことが可能です。

営業成績の向上と退職率の低下にはインセンティブが重要

各営業担当者の持つ能力やスキルを最大限に生かし、営業成績の向上と退職率の低下を実現するためには、各営業担当者のモチベーションを高めるインセンティブが重要であることが知られています。

営業組織におけるインセンティブとは、営業成果・活動に対して追加報酬を設計することを指します。算定のタイミングや金額、変動率など、制度の設計は非常に自由に高いですが、営業戦略と営業担当者の行動が乖離しないように設計するなど考慮すべきポイントもあります。

インセンティブ設計のポイントとしては、以下の4つが挙げられます。

  • 営業戦略との合理性
  • 成果レベルに応じた動機付け
  • 公平かつ簡素無ルール
  • 報酬総額のコントロール

(図:インセンティブ設計のポイント)

まとめ

組織の営業力を強化し競争優位性を築くためには、新たな能力やスキルを獲得するための採用や育成と、今社内リソースにある力を最大限に生かすためのインセンティブ設計が重要です。

 

採用や育成に取り組むためには、組織の現実のケイパビリティと目標とを言語化し明確にした上で、そのギャップを採用・育成という手段で埋めていくイメージを持ちましょう。このとき、営業担当者ごとのパフォーマンスを比較し、相関が強い要素を発見することで、組織に必要な営業スキルを客観的に見つけ出すことができます。

 

加えて、営業成績の向上と退職率の低下を実現するためには、各営業担当者のモチベーションを高めるインセンティブの設計が有効であることが知られています。

 

組織に必要な力を明確にする客観的なアプローチとインセンティブの設計によって自社の営業組織を強化し、営業DXの成功に繋げましょう。

 

<参考>

経済産業省 DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html

KOTODORI | DXはなぜ注目されているのか、そして、導入するとどうなるのか

https://kotodori.jp/strategy/why-focus-on-dx-2/

IDC | Direct Digital Transformation Investment Spending to Approach $7.4 Trillion Between 2020 and 2023; IDC Reveals 2020 Worldwide Digital Transformation Predictions

https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS45617519