営業DX推進に必要な戦略プロセスとは?経営管理の取り組みを解説

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DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目を集めています。

市場調査とコンサルティング会社の株式会社アイ・ティー・アールが発表した「国内IT投資動向調査報告書2021」によると、「コロナ禍でデジタル化が加速すると考えている企業ほど、IT予算を増額している」ことが明らかになりました。

コロナ禍で加速するDXについて、この記事では、DXの内容、戦略プロセスにおけるDXの取り組みを解説します。

そもそも DX とは?

まずはDXの定義について紹介します。

経済産業省が2018年12月に発表したレポート「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン( DX 推進ガイドライン)」には、DXを以下のように定義されています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

(経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン( DX 推進ガイドライン)」より)

要約すると、「データとデジタル技術を活用することでビジネスや会社を変革し、国内外での競争力優位に立つ」ということです。経済産業省が主導でDXを推進しているのは、世界の有力企業によるDXの進展により、国内企業の競争力喪失を経済産業省が危惧しているからです。

DX推進の例としてJapan Taxiがあります。タクシー業界のビジネスモデルを一変させたUberに触発されて日本の大手タクシー会社、日本交通が提供を開始した配車サービスになります。Uberの利用者は、アプリを利用して自分の行きたい場所をアプリに入力して配車を希望します。Uberに登録しているドライバーは、この情報をキャッチし、顧客を乗せて目的地まで連れて行きます。なお、通常のタクシーとの違いは、Uberに登録しているドライバーは「個人」であり、「個人が自分の自動車を使って隙間時間にタクシー業務を行うことができる」という点です。なお、日本では白タク行為にあたるため自動車配車事業はできませんが、地方での労働力不足や高齢化が進む中で、今後規制が変わる可能性もあります。こうした状況に危機感を感じた日本交通は、顧客の他社への流出や既存の電話配車とのカニバリの可能性もある中で、他社も巻き込んだ配車プラットフォームを構築しました。

このような状況に危機感を抱いた経済産業省は、2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を立ち上げました。そして、同研究会は同年9月に「 DX レポート~ IT システム『2025年の崖』の克服と DX の本格的な展開~」というレポートを発表しました。このレポートでは、「レガシーシステムがDX推進の阻害になる。このため、2025年までにシステムを刷新し、DX を推進しないと、年間最大12兆円の損失が発生する」と警告しています。これは「2025年の崖」と呼ばれています。

営業 DX 推進の取組み:戦略プロセス

営業組織の DXを推進するための取り組みとして、下記の図のように、戦略プロセス、業務プロセス、そして、それを支える人材プロセスの変革が必要です。

(図1:営業戦略 DX の推進プロセス)

これらのプロセスの中で、起点となるのが「戦略プロセス」です。

戦略プロセスは、「経営管理」と「営業戦略」の2つで構成されます。

まずに「経営管理」プロセスについて解説します。

 

経営管理で起点となるのが「デジタルプラットフォームの構築」です。具体的には、営業データを入力・分析するためのITシステムの準備です。代表的なプラットフォームには「CRM(顧客関係管理システム)」や「SFA(営業支援システム)」があります。

日報や Excel シートを利用して営業状況や商談状況を共有するのが一般的です。ただ、この方法では状況を伝えることはできても、データの蓄積・分析は困難でした。また、日々の営業状況や商談状況を手作業で分析・レポートの作成を行う必要があるため、膨大な時間と労力が必要です。デジタルプラットフォームの構築により、日々の営業情報や商談状況の入力することで、これらのデータを様々な角度で分析することができます。このため、データを起点とした経営管理が可能となります。

次に「営業戦略」プロセスについて解説します。

まず必要になるのが「戦略的セグメンテーション」です。顧客ニーズが多様化した現代において、マーケットを俯瞰しながらセグメントを分け、リソースの選択と集中が必要です。このため、男女、年代、業種、職種、役職などでセグメントを分け、ターゲットを絞ります。この時、戦略的セグメンテーションで役に立つのが「デジタルプラットフォーム」です。

そして、「戦略的セグメンテーション」を基に、「カバレッジ最適化」と「チャネルの最適化」を行います。「カバレッジ最適化」とは、分割したセグメントでの目標を最適化することです。「チャネル最適化」とは、費用対効果を測定しながら、販売チャネルを決めることです。そして、選択したカバレッジやチャネルに対して、販売期間(リードタイム)や行動量を考慮しながらリソース(人員・資金等)の投入を行います。

営業 DX 推進の取組み:経営管理

検索エンジンの発達により、現代は企業が収集できるデータが圧倒的に増加しています。また、CRM、MA(マーケティングオートメーション)やWeb分析ツールなどの発展により、データの種類も従来の顧客の属性情報に加え、Webページの訪問履歴、滞在時間、問い合わせ履歴など、収集できるデータの種類も増えています。これらのデータをデジタルプラットフォームに登録し、分析することで、顧客のプロファイルや要望などを深く理解できるようになり、戦略の幅や精度が大きく向上します。一方、正確なデータがそろわないと、正しい意思決定につながりません。特に近年注目を集めているサブスクリプションビジネスではオンラインでの販売比率が高いケースもあり、この傾向が顕著です。

(図2:適切なデータ定義の課題)

このため、これからの経営管理では、営業活動結果や商談状況などのデータをリアルタイムで収集・加工・分析し、データに基づく経営判断が競争力で優位に立つ源泉となっています。そのため、データの収集・加工・分析を支えるデジタルプラットフォームの構築が必要です。デジタルプラットフォームに求められるのは、「顧客起点」、「正確性」、「リアルタイム性」です。これらの3つの要件を満たすデータを可視化することで、ビジネスの「いま」をリアルタイムに見ることができます。そして、可視化された「いま」こそが、正しい戦略策定や意思決定を行うための絶対条件となります。また、様々な切り口でデータを分析し、可視化することで、「インサイト=気づき」を得ることができます。この「分析→気づき→立案→アクション」の繰り返しこそが、成功の鍵を握っています。

(図3:理想的なオペレーションとの比較)

この結果、判断の軸が定まり、戦略策定の精度が高まり、早期に問題の発見と解決に繋がります。また、事業全体を高い解像度で見渡すことができるようになります。特にサブスクリプションビジネスでは具体的な指標やベンチマークが判明しているため、デジタルデータの活用で判断を行いやすいという特徴があります。データ分析の視点としては、売上や収益の視点や営業活動の状況のみならず、顧客のニーズや要望、機能の利用状況など、UX(顧客体験)の視点での分析も必要です。そして、これらの指標をリアルタイムで把握することで、事業を正しくハンドリングすることができます。

まとめ

DXを進めるにおいて、必要となるのが「デジタルプラットフォームの構築」です。そして、構築したデジタルプラットフォームに「顧客起点」、「正確性」、「リアルタイム性」の要件を満たすデータを入力し、「分析→気づき→立案→アクション」の繰り返しを行うことで、精度の高い経営判断と意思決定を行うことができます。

営業組織のDXの取り組みにおいて、経営管理に必要なプラットフォームの構築はDX成功のカギとなります。是非、プラットフォームの構築とデータの活用を進めていきましょう。