
SaaS とはどのようなサービスなのか?概要から代表的なサービスまで解説
- SaaS(Software as a Service)は、ユーザーがインターネット経由でアクセスできるクラウドベースのソフトウェア
- SaaS には「複数のユーザーがリアルタイムに作業できる」「カスタマイズが容易」といった特徴がある
- SaaS の大きなメリットはコストメリットや組織のスケールに対応しやすいなど7つのメリットが存在する
- セールスエンゲージメントプラットフォームと呼ばれる AI を起点としたデータドリブンな営業活動を実現するテクノロジーが出現している
SaaS とは、多くの人の仕事や生活に幅広く浸透しているサービスです。たとえば、Gmail・Chatwork・Slack・Zoom などはいずれも SaaS と呼ばれるソフトウェアです。
しかし、SaaS の定義をしっかりと知っている人は少なく、PaaS や IaaS などの似た概念があるので混同している人も多いのではないでしょうか。
今回の記事では、SaaS のサービスとは何かということからそのメリット、 SaaS の代表的サービスを解説します。そのほかにも、SaaS の将来性・特徴などについても紹介します。
SaaS はサブスクリプションとして提供されることがほとんどです。サブスクリプションビジネスの最新動向や成長戦略を知りたい人には、以下の記事がおすすめです。
無料ダウンロード:サブスクリプションビジネスのガイドブック~最新動向とその仕組みから導くサブスクリプションの成長戦略~
SaaS サービスとは?
SaaS と聞くと難しく聞こえるかもしれませんが、SaaS は皆さまの身の回りにも溢れいてる身近なサービスです。
SaaS は広く活用されるサービス
SaaS(Software as a Service)は、ユーザーがインターネット経由でアクセスするクラウドベースのソフトウェアです。SaaS は「サース」「サーズ」と呼ばれています。基盤になるインフラやミドルウェア、アプリケーションはサービス提供者で一元管理されていて、自社の環境整備が必要なく導入のハードルが低いため、多くの企業が活用しています。
メールやカレンダー機能などが一般的に企業では使用されていて、Microsoft Office 365 もその1つになります。他にも、Netflix や Youtube Premium などを利用している方もいるのではないでしょうか。
また、Gartner社の「2021 Emerging Technology Product Leader Survey」によると、データとアナリティクスに関連する領域(D&A)に資金を投じるテクノロジープロバイダの約50%が投資分野の上位3つとして SaaS を含むクラウドを選択しています。
また、調査対象となった回答者の40%以上が、プロダクトやサービスの開発、顧客基盤の強化のために投資を進めているといいます。
SaaS サービスの特徴
複数のユーザーがリアルタイムに作業できる
SaaS の大きな特徴の1つとして、複数のユーザーがリアルタイムで作業できることが挙げられます。
SaaSは、基盤となるインフラやデータがプロバイダで一元管理される仕組みです。共有のインフラやコードを使用するため、複数のユーザーが同じサーバー・アプリケーション・データベースといったシステムを共有して利用できます。
たとえば、GoogleドライブのドキュメントやスプレッドシートはGoogle上に保存されており、必要に応じて「複数人での共同編集」「容量の増加」などが可能です。
カスタマイズが容易
SaaS は、ユーザー共有のインフラを変更することなく自社の業務に適したカスタマイズを行えます。ユーザーの行ったカスタマイズは、SaaS がアップデートされた際も維持されます。
一方、プロバイダは顧客データを損なうことなく、常に SaaS をアップデートしてセキュリティ・バグなどのリスクを減少させることが可能です。
SaaS サービスの将来性
冒頭のGartner社の調査例でも示した通り、クラウドベースの SaaS への注目度が高まっていて、それは市場規模や法制度の面でも現れています。
SaaSの市場規模の拡大
富士キメラ総研によると、日本の SaaS 市場の規模は2025年に1兆4,607億円に達すると予想されています。年間平均成長率(CAGR)は国内市場が13%です。2022年時点では SaaS とパッケージ製品は拮抗していますが、今後は SaaS が上回る見込みです。
また、海外機関の調査などでは世界の1社あたりの SaaS 利用数の CAGR も86%となっています。日本ではここ数年にわたって、130%の CAGR となっていて、劇的な伸びを示しています。グローバルトレンドを追いかけて今後も SaaS 利用数の増加が見込まれます。
総務省「令和3年通信利用動向調査」によると、「ファイル保管・データ共有」「電子メール」といったジャンルのサービスが好まれる傾向にあります。理由は、場所や機器を選ばずに利用できるからです。
また、Business Research Company などの調査によると、世界の SaaS 市場の規模は、3,744億ドル(約48兆円)へと拡大しています。SaaS 市場の成長の背景には、使い方が簡単なことや事業者の増加による選択肢の拡大があります。
法改正への対応
「デジタル社会」の形成を目的としたデジタル改革関連法整備の動きも広がっています。
2022年1月に電子帳簿保存法が改正され、電子契約の動きが加速しています。帳簿の電子・スキャナ保存の事前申請が不要になり、電子取引書面の原則電子保存が義務化されるなどして、システムを検討する企業が増えることが見込まれます。
また、2022年5月に宅建業法改正により、宅地建物取引業者が交付する書類において「押印が不要」「電子的な方法による交付が可能」となりました。これにより、不動産業界の DX の加速が見込まれます。
これらの法改正により、バックオフィス系の SaaS 企業の増加が予想されます。
ノーコード・ローコード開発プラットフォームの拡大
ノーコード・ローコードとは、プログラミングの専門知識不要で開発ができる手法です。DX の推進と IT人材不足が背景となり注目度が高まっています。
総務省「令和3年通信利用動向調査」によると、ICT 人材が足りないと回答した企業は53%に上ります。
ノーコードでは、システム開発には欠かせないコーディングが不要であり、小規模かつ単純なアプロケーションであればエンジニアなどを除くチームでも開発が可能となります。
国内 IT 市場調査のコンサルティングを手がける「ITR」が国内の23ベンダーを対象に実施した調査によれば、ノーコード・ローコード開発市場の20年から25年にかけての年間平均成長率(CAGR)は24.4%と予想されています。
DX 化の流れに伴い、1組織がいかにして DX 化を進めるのかの戦略から実践までを網羅した全200ページ以上にもなる完全版資料をいま無料しています。ぜひ、この機会にご活用ください。
無料ダウンロード:組織変革 DX 〜売上拡大を目的とした営業プロセスの型化〜
SaaS サービスのメリット7選
SaaS には、自社の組織に合わせて、採用・展開できる柔軟性やコストメリットなどさまざまなメリットがあります。代表的な7つのメリットを紹介します。
インターネット経由でどこからでも利用可能
SaaS は、インターネットさえつながっていればどこからでも利用可能です。必要なのはブラウザとインターネットだけで、さまざまなデバイスからアクセスできます。
また、データはクラウドに保存されるため仮にデバイスを紛失したとしても、データが消えてしまう心配もありません。
導入コストが安価でサービスを導入が容易
SaaS は、サブスクリプションが基本です。そのため、前払いのライセンス料金は発生しません。SaaS は従来のオンプレミス型のソフトウェアと比べても初期費用や維持コストが抑えられ、比較的容易に導入できます。
従量課金モデルが多く、自社に必要な最低限のサービスだけで利用ができる点も魅力となります。特に中小企業など予算に制約があるケースでは顕著です。
組織のスケールに対応可能
SaaS は幅広いオプションを提供しているケースが多く、組織の規模の拡大に合わせた機能を導入できます。ユーザーアカウント・顧客データ量・必要な機能数などが増加しても、スピーディーな対応が可能です。
予算の柔軟性を担保できる
SaaS は、企業が提供しているサービスをサブスクリプション契約します。そのため、ランニングコストがはっきりしており、適切で予測可能な予算編成を行うことが可能です。くわえて、運用と保守の維持管理費も少なくてすみます。
高度なセキュリティを担保可能
SaaS は常にアップデートされており、サービスが共有されているため高いレベルのセキュリティが約束されています。
また、データのバックアップの自動化やデータの保管場所となるデータセンターも複数の箇所にあるため、セキュリティレベルは高いといえます。
常に最新機能を利用できる
SaaS は、プロバイダによって一元的にアップデートされます。そのため、ユーザーは常に最新の機能を、新しくソフトウェアを購入せずに利用可能です。自社の IT 部門の負担軽減にもつながります。
また、常に最新版を利用できるためエンドユーザー間の互換性が損なわれる心配もありません。
プロバイダはニーズに合わせた展開が容易
SaaS を提供するプロバイダは、ユーザーのニーズをタイムリーに受け取れます。ユーザーのフィードバックを受け取り、スピーディーにアップデートを行えます。
SaaS と PaaS、IaaS との違い
SaaS・PaaS・IaaSの違いについてわかりやすく解説します。
Pass とは
PaaS(Platform as a Service)は、クラウド上でサーバー・OS・ミドルウェアなどのプラットフォームを提供するサービスです。利用者は開発環境を用いてアプリケーションの開発などを行います。
開発環境に必要な OS やミドルウェア・データベースはサービス提供者側が管理/維持するため、基盤となる環境を管理/更新する必要がありません。
PaaS は以下のポイントで利用されることが多いものです。
- クラウドベースのアプリケーション開発/運用等に関わる既成のフレームワークの活用と開発の負担軽減
- ビジネス上の意思決定やプロダクトのデザイン、予測精度の改善に係るデータ分析とインサイトの抽出、結果の予測に活用
Pass に備わる開発ツールを利用することで、利用者は主にコーディングの時間削減などの開発リソースの解消ができたり、アプリケーションの開発からアップデートまでの一連のサイクルを1つの環境で実施できます。
PaaSの代表例は以下の通りです。
- Microsoft Azure
- Amazon Web Services
- SAP Cloud
例えば、Amazon Web Services にはさまざまなカテゴリーがあり、コードデプロイ自動化といった開発用ツールや自動音声認識などの深層学習のカテゴリーを含んでいます。
Iass とは
IaaS(Infrastructure as a Service)とはクラウドコンピューティングの一種で、基盤となるコンピューティング、ネットワークリソースなどを提供するサービスです。
IaaS を利用すると、利用者はハードウェアの調達や保守、サーバー管理などにリソースを割くことがなく、サーバーやストレージ、ネットワークなどのコンピューティングリソースを使って、自由度が高く任意のアプリケーションを構築することができます。
オンプレミス環境で割いていたメンテナンスがなくなり、コスト削減が期待できます。IaaSの例は以下の通りです。
- Amazon Web Service
- Google Cloud Infrastructure
Pass、Iass との違い
後述する図のように、SaaS・PaaS・IaaS の違いは提供するサービス、つまり利用形態によって分けられます。
端的に言えば、SaaS はエンドユーザーが利用するアプリケーションまでを、PaaS はアプリケーションのためのミドルウェアなどの開発環境を、IaaS は柔軟性を持って、開発環境を構築するためのハードウェアの管理/運用をしてくれます。
イメージとしては、IaaS が各ショップが詰まったモール型のECサイト、PaaS が各ショップ、SaaS が各ショップの製品だと感上げるとイメージをつけやすいかと思います。
環境構築などの点から IaaS は最も自由度が高く、すべての機能が提供されている SaaS は自由度が低くなります。
下の図は、クラウド提供者が管理し、運用する範囲を示しています。SaaS は PaaS やIaaS の領域も内包しています。
SaaS サービスの代表例10選
以降は、SaaS で提供されている主なサービス10選を紹介します。
ビジネスチャット
ビジネスチャットとは、ビジネスシーンで利用するチャットツールです。これまでは対面・メール・電話が主流でしたが、以下のようなメリットで導入する企業が増えています。
- リモート環境への対応がしやすい
- 迅速かつ簡潔なコミュニケーションで生産性の向上に寄与する
- 情報共有がスムーズになる。履歴が残る
ビジネスチャットの代表的なツールは以下の通りです。
- Slack
- Chatwork
- Microsoft Teams
- LINE WORKS
Web会議システム
Web会議システムは、オンライン会議ツールやWeb会議ツールとも呼ばれています。
インターネットに接続したデバイスを使って映像と音声を双方向かつリアルタイムに複数人でミーティングをしたり、商談に利用したりできます。
昨今ではリモート環境が整いつつあり、商談や提案も Web会議システムを利用して実施するケースも増えています。特に、インサイドセールスには必須のアイテムといえます。
時間当たりの商談数が増えることによる営業効率化や商談の振り返りに活用することで営業スキルの向上にも活用できます。
Web会議システムの代表的なツールは以下の通りです。
- Zoom
- Microsoft Teams
- Skype Meet Now
プロジェクト・タスク管理
プロジェクト・タスク管理ツールとは、工数管理や進捗状況の管理などを効率化し、目標達成までの流れをスムーズにしてくれるツールです。
複数のプロジェクトやタスクを視覚化して管理できるため、管理作業が効率的に行えます。
代表的なプロジェクト・タスク管理ツールは、以下の通りです。
- Trello
- Notion
- Reforma PSA
- Backlog
オンラインストレージ
オンラインストレージとは、インターネット上にデータを保管するサービスのことでクラウドストレージとも呼ばれています。インターネットに接続して使うことを除けば、パソコン内のストレージと同じように使うことが可能です。
クラウド上にあるため、複数人でデータを変更でき、常に最新の情報で保存されます。社外の人との情報のやり取りにする際にも、アクセス制限を管理することでスムーズなやり取りができます。
代表的なオンラインストレージは以下の通りです。
- Googleドライブ
- Dropbox
- OneDrive
ERP
ERP(Enterprise Resources Planning)とは、日本語に訳すると「企業資源計画」です。営業プロセスなど企業のビジネスプロセス全体に存在するデータを一元的に管理/自動化することで、ビジネスの成長をサポートすることができます。
部門間でシステムやデータがサイロ化しているケースでは、「顧客の体験を向上する取り組みと成果との関係を正しく評価できない」「そもそもどんなデータを計測すれば良いかわからない」「業務改革のボトルネック」などの問題がおきます。
こうしたデータの非構造化・不正確さや古さといったボトルネックを解消し、データドリブン、つまりデータを起点とした意思決定の形成に ERP は寄与します。
ERP の主な機能は以下の通りです。
- 人事・給与管理
- 販売管理
- 生産管理
- 購買管理
- 会計管理
- 営業管理
SFA
SFA(Sales Force Automation)は、日本語で「営業支援システム」と翻訳されます。企業のなかでも特に属人的になりやすい商談などの営業活動の進捗やデータの可視化をし、営業活動の生産性を上げることを目的としています。
SFA の機能には以下のようなものがあります。
- 営業のタスクやスケジュールの管理
- 営業プロセスを進捗させるためのアクション
- 営業活動の KPI分析
- 商談の優先順位の明確化
- 商談の情報から次の最適な活動のレコメンド
下の記事で最新版の SFA の紹介をしています。ぜひ、ご活用ください。
あわせて読みたい:【2022年最新】営業の生産性を上げるおすすめ SFA を徹底比較
CRM
CRM(Customer Relationship Management)は、日本語で「顧客関係管理」と訳されます。CRM は端的に表すと、売上、特に LTV(顧客生涯価値)を上げるために顧客との関係性を強化するツールです。
CRM では、顧客との関係性に着目していて、その関係値を向上するためのマネジメント手法やツールを指しています。CRM ツールは自社の取引先の顧客情報を収集・分析・施策へと転換することでそれぞれの顧客の満足度を高め、LTV(顧客生涯価値)を最大化するためのものです。
顧客の担当者情報や顧客に対する活動履歴といったデータベースを一元的に管理し、分析を通じて自社のターゲティングに活用することもできます。
分析に活用できるさまざまなフレームワークを以下の記事でご覧いただけます。ぜひ、ご活用ください。
あわせて読みたい:CRM 分析とは?分析手法とそのポイントを解説
会計ソフト
会計ソフトは会計に係る活動を記録し、決算に必要な帳簿書類の作成を支援するためのツールです。
業績や財務内容の記録・確認に利用できるだけでなく、社外のステークホルダーに説明するための情報の整理にも活用できます。
導入すると以下のようなメリットがあります。
- 会計処理の効率化/デジタル化への対応が可能
- 会計の専門知識がない人でも利用しやすい
- 企業の財務内容や業績を確認
代表的な会計ソフトは以下の通りです。
- freee会計
- 弥生会計 オンライン
- マネーフォワード クラウド会計
勤怠管理
勤怠管理システムとは、その名の通り従業員の労働状況や給与計算などを管理するためのツールです。昨今のリモートワークへの対応として注目を浴びる領域でもあります。
勤怠管理システムを利用すると、以下のようなメリットがあります。
- 労働時間を正確に測れる
- 割増賃金を自動的に計算
- 法令改正へ対応できる
- コストの削減
- モバイルデバイスで外出先から打刻
- ほかのシステムと連携
勤怠管理ツールには以下のようなものがあります。
- Touch On Time
- ジョブカン勤怠管理
- CLOUZA
Sales Engagement Platform
Sales Engagement Platform とは、営業担当者が見込み顧客・既存顧客とより効果的にコミュニケーションができるテクノロジーです。顧客との関係値を分析し、自動化された予測から営業担当者に最適なアクションを提示するセールスエンゲージメントプラットフォーム(SEP)は、GAFAM などでも活用が進んでいます。
人がこれまで判断していた誰にどんなメールを送るのか、商談で何を聞くべきかなどを AI の判断に委ねるため、組織全体での営業力の底上げやデータドリブンな改善施策の抽出が期待できます。
主に以下の機能を備えています。
- SFA/CRM のデータ分析
- 売上/トレンドの予測の自動化
- 営業が次に取るべき最善のアクションの提示
FACT.MR の調査によると、セールスエンゲージメントソフトウェアの市場規模は、21年の50億ドルから22年には74億に増加すると見込まれていて、22年からの10年間に市場規模はさらに4倍になると見込まれています。日本においても CAGR(年平均成長率) は13.3%と見込まれています。
Magic Moment は提供する日本で唯一の Sales Engagement Platorm「Magic Moment Playbook」を提供しており、多種多様な企業の営業活動の効率化やコスト削減、商談の質の向上をサポートし、売上向上に貢献しています。
「LINE株式会社」「三井物産株式会社」などの企業で導入されており、なかにはリードからの顧客獲得転換率が10.2倍に上昇するなどの成果が出ています。
下記の無料ダウンロード資料で Playbook の概要や活用法を知ることができます。ぜひ、ご活用ください。
無料ダウンロード:営業の価値を最大化するPlaybook入門ガイド
Accel の記事や、セミナーの告知、公開したホワイトペーパーなど、サブスクリプションビジネスの成功に役立つ情報を定期的にお届けします。