The Model (ザモデル)型営業組織を成功させる3つの必要条件

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要約SUMMARY
  • The Model は分業型の営業組織の概念・体制です。The Model は営業の成果を最大限高める可能性を秘めています。
  • The Model を成功させるためには「導入の目的」「部門間の連携」「データとオペレーション」の3点がポイントであり、3点を常に確認しながら PDCA を回すことが重要です。
  • 最も大事なのは当たり前ですが顧客です。顧客を中心として物事を考えた上で、The Model 型の営業組織を成功させるよう取り組むことが大切です。

最近は The Model(ザモデル) 型の営業組織に関する情報を目にする機会も多く、実際に取り入れる企業も増えています。顧客の購買プロセスが複雑になり、顧客理解が難しくなっているためです。

競合と競い、かつ自社を顧客に選定していただくためには、顧客理解が欠かせません。そうした文脈から The Model 型の営業組織が取り入れられるようになっています。

インサイドセールスを取り入れる企業が増えてきていることからも、コロナ禍をきっかけに The Model の導入が促進され、営業アプローチが変わってきています。(インサイドセールス導入後いちばんの課題は「人材の確保・教育」

本記事では The Model のメリットやデメリット、The Model 導入時に陥りやすい落とし穴や成功するためのポイント、先進ツールの活用について網羅的に解説します。

→ダウンロード:「変革のプロセスがわかる」営業組織のDXチェックリスト

The Model(ザ モデル) とは?

Salesforce が提唱した概念およびフレームワークであり、2019年に発売された福田康隆氏による書籍『The Model』でその手法が一躍日本中で話題になりました。現在では多くの企業が同書で紹介されたビジネススタイルを取り入れています。

セールスフォース・ドットコムでは、The Model を「お客様の成功と共に、売上を拡大する仕組み」と位置づけています。

The Model は分業体制である

The Model とは一言で要約すると、営業活動の分業制です。営業活動をリード創出、ナーチャリングのマーケティングとインサイドセールス、そして提案、交渉、受注はフィールドセールス、受注後の顧客サポートをカスタマーサクセスに分業して行うことを指します。

これまでは営業が4つのプロセスすべてに関わっていましたが、各領域を専門担当者の業務に切り分けることで、それぞれの KPI の達成に注力できるようになります。

高速で PDCA を回せる

分業制を敷き、各分野に目標数字を設定することで、専門性のある担当者が責任を負い数字を追いかけます。

その結果、毎月や四半期ごとに設定された KPI を達成したか定点観測できるようになり、データも溜まってきます。各領域内でのパフォーマンスも測れるため、活動量や成果指標を徹底的に管理し、フィードバックの速度を早めることで、高速で PDCA を回せます。

従来の営業スタイルの限界

従来であれば、営業が顧客の購買プロセスに関われる範囲は広く、できるだけ検討の早いタイミングでリーチすることで高い成約率を維持することができました。

しかしながら現在では、顧客が問い合わせた段階では事前情報をインターネットなどを介しすでに得ており、購買の意思決定にかかる6−7割は済ませていると言われ、その状態から営業がアプローチを仕掛けることになります。

購買プロセスの変化

そのため従来と比べ、営業が顧客の購買プロセスに影響を及ぼせる範囲が狭まっているのです。したがって、情報収集の段階からマーケティング施策を通じ、顧客の認知、興味度合いを自社商品に傾けるようなアプローチをすることが重要です。

また営業も顧客の興味関心を踏まえ、より具体的な提案を差し込むことが成約につながるための条件になっています。

なぜ The Model は効果的とされるのか

上述のような理由から、従来の営業スタイルを変えていく必要性が理解できたかと思います。
では、The Model を導入することでどのような効果が得られるのでしょうか?

顧客の動態に合わせた最適なアクションが打てる

従来に比べ顧客の購買プロセスに変化が起きているため、マーケティングから、営業、カスタマーサクセスと顧客のニーズに合わせた動き方が求められるようになっています。

それぞれのフェーズで顧客へのアプローチ方法も変わってくるため、認知、検討、比較、購入後の顧客の動態に合わせた最適な情報提供や対応が求められます。

したがって、The Model を採用して分業制を敷くことで、競合他社に先んじて的確なアプローチを行い、顧客の中で自社が優先順位の上位に位置できるようになります。

結果的に顧客を理解した上での最適なアクションを打てるようになるため、営業活動において The Model が効果的と言われています。

営業プロセスが標準化される

The Model を採用することで、営業におけるルールが定められます。その結果、営業一人一人がそのルールに則って行動するようになるため、営業個人の知見やセンスに依存した属人的な営業がなくなります。

結果として誰もが同じような正しい顧客アプローチを取ることができるため、再現性が高まります。

可視化され手が打ちやすくなる

営業プロセスが標準化されることで、初めて顧客訪問をするときに確認すべき情報( BANT )などの共通認識ができあがります。その他にも顧客と提案内容を合意するときや、オブジェクションを受けた時も同様です。

The Model であれば自身の営業プロセスが標準通りに行われているか可視化できるため、行き詰まったときに相談しやすく、上司も営業メンバーに対しアドバイスが効果的に行えます。その結果、営業プロセスが修正できるため、受注率の向上にもつながるのです。

営業効率が上がる

The Model に則った行動をとることで、まずマーケティング、インサイドセールスが機能し、リードの創出からナーチャリングを行った上で営業にパスを出してくれます。

営業は自身の担当顧客に対し、提案から受注までのプロセスに注力できるようになり、営業効率が向上します。

営業プロセスにおいても、再現性の高い営業プロセスが定義されているため、営業が自社のソリューションを最も受注しやすい営業活動を最適化できるようになります。

結果として無駄な行動が減り、受注につながる最短距離で、極めて効率的に営業活動を行えるようになるのです。

セールスイネーブルメントにもつながる

従来営業が幅広く業務を担っていましたが、The Model を採用し業務分業制にすることで、各部門にスキルやノウハウが貯まるようになります。その結果、業務上で躓きやすいポイントや顧客の関心ごとなど、踏み込んだレベルで情報共有ができるようになります。

営業が薄く広くカバーしていた業務を狭く深くできるようになるため、データも貯まり、再現性のアプローチが可能になります。結果として過去のデータを踏まえ、業務の最適化につながり、個々人の習熟度が高まります。

つまり The Model を導入することで、営業組織全体の強化や育成にもつながります。営業組織を強化する取り組みをセールスイネーブルメントと言います。詳細は以下記事で解説しております。

The Model(ザモデル)導入企業の成功事例

Sansan:The Model の導入でリード数を3倍に改善

名刺管理アプリを含め営業支援ソリューションを展開する Sansan は The Model を導入し営業組織の改革を行いました。

デジタル化の流れを受け、名刺のデジタル管理のニーズが急速に高まり、営業組織を見直す必要がありました。これまでは主観的に営業を行って受注管理を行っていましたが、営業が急増したことで、組織として再現性のある営業プロセスを確立する必要がありました。

そこで、営業プロセスを分業制にしました。過去の成約事例を参考にそれぞれの部門で KPI を設定し、各部門が自身の役割をこなし、案件創出や受注までの動き、受注後の顧客サポートを最適化することで営業組織の強化を図りました。

結果として、取引先に紐づくリードの数が The Model 導入前に比べ3倍に改善しました。

オリックス:The Model およびインサイドセールスの導入

オリックス社は2005年に SFA を導入し、早くからインサイドセールスを取り入れていました。一人当たりの担当者数も600-700社あり、マニュアルでフォローするには限界がありました。

一人当たりの担当者数も多く、全国をカバーする必要もあり、営業活動の効率化を継続して試行錯誤しつつ、The Model の考え方も取り入れてきました。

基本的に SFA を中心にシステムを組んでいき、データを SFA にため、他のシステムとの連携も行い、インサイドセールスとフィールドセールの役割も分業制を敷き、それぞれがミッションに責任を負うようにしました。

さらにその後 MA を導入し、SFA と MA を活用しつつ、営業活動もアポ取得と提案活動に分け、その前段階のマーケティングも強化しました。リードに対するナーチャリングは MA で積極的に行い、スコアリングをしながら見込み度合いが高いリードへインサイドセールスが優先的にアプローチをかけました。

結果、デジタルアプローチの対象が6万社から26万社へ、メール配信件数も3万から8万社へと増え、The Model 型の営業組織が十分に機能するようになっています。

クボタ:The Modelを導入し、変化に対応できる営業組織を構築

クボタ社は全国に展開している販売拠点の業務効率化を目指し、The Model を採用して改革を行いました。取引先である担い手農家(法人農家)へのサポートを強化するため、各販売拠点が保有する顧客情報やこれまでのノウハウを共有する体制を構築しました。

これまでは全国の販売所の成功体験やノウハウは共有されず、営業担当者は顧客にとって役に立つ情報は何か、探す術がありませんでした。その結果、法人農家に対し価値ある情報を届けられないという課題に直面していました。

そこで The Model および SFA を採用し、顧客情報を各営業所、部門間で共有しはじめ、ノウハウや成功体験を横展開できるようになり、必要な情報や同じ悩みを抱える社員同士が助け合うことができるようになったのです。

結果として営業の課題解決の提案力が向上し、現場で顧客である法人農家へスピーディーなサービス対応が可能となりました。

農業人口の減少や高齢化など農業が抱える問題に対し、The Model 型の営業組織を構築することで変化に対応できる強い組織を構築しています。

The Model(ザモデル) の落とし穴

The Model の体制を導入すれば全てが解決されるわけではない

The Model はこれまでの営業が先発完投型で行うスタイルから、分業体制にすることで、営業活動を効率化し再現性のある組織に変革するものです。

The Model 自体は営業組織を強力にするスタイルの一つではありますが、自社の営業組織に馴染めるよう十分に落とし込んで浸透させなければなりません。

1.部門間の連携強化

The Model は営業組織を分業体制、つまり組織を別々に区切り稼働させます。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサポートが独立し、各部門が自身のミッションに責任を持ち成立します。

部門ごとが KPI を追うことで業務効率が上がりますが、同時に部門間での連携がこれまで以上に必要となります。それぞれの部門が役割を果たしながら、部門間の業務の流れで息の合ったつながりが生まれなければ、部門間の軋轢が生じる可能性があります。

結果として、部門間の意思疎通ができないことでデータやノウハウが部門内で閉じてしまい、チーム間の連携が困難になる可能性があります。

2.提案フェーズの設計・運用の厳格化

営業プロセスの分業制を敷くということは、部門間で業務の足並みを揃えることが重要です。顧客が購買の意思決定をする上でどういった手順を踏むか何パターンも想定し、自社のソリューションの提案フェーズの設計や運用に反映させ、各部門の役割を明確にすることが重要です。

例えば部門間でどちらが担当する業務か明確に線引きをしておかなければ、タスクが宙に浮いてしまう恐れがあります。その結果、責任の所在が不明確になり、業務間連携が悪化します。

したがって The Modelの体制を敷く際には購買フェーズを明らかにして、業務レベルでどの部門が責任を持つかを明確にし、運用体制を厳格化し、共通認識を持っておく必要があるでしょう。

3.データの構造化

The Model の分業制を敷くということは、部門間で積極的に連携をとることが大前提となります。各部門で設定された KPI の達成率や改善点を明確にできるよう、部門間で共有することが必要です。

リード獲得数、商談化率、成約率、解約率の KPI に異常値がある場合、どの部門に改善の余地があるか明確にするためには、データを取り続け共有できるよう、構造化しておく必要があるでしょう。

データは営業プロセスを改善するための手がかりであり、どの部門の担当者もアクセスできるようオープンにする必要があります。それは改善点を建設的に議論するための大切なデータであり、誰がみてもわかるような状態で管理しなければ活用できません。

The Model は各部門が分業制を敷きながら KPI に責任を持ち、改善点があれば高速で PDCA を回せるため価値があります。データが非構造化された状態では効果は発揮できません。

The Model(ザモデル) 導入におけるの3つのチェックポイント

1.The Model 導入の目的は明確か?

目的のない行動は結果につながりません。The Model を導入するためには、現状の営業組織の課題を明確化し、何をどのように変える必要があるか、明らかになっていることが重要です。

The Model は営業組織を強化するための数ある方法の一つであり、導入するだけでは効果は期待できません。また導入することがゴールではないため、導入後の結果を見据え、各営業組織のボトルネックを解決し、最終的に売上や利益の改善につながるための手段の一つであることを理解する必要があるでしょう。

そのためには、The Model を導入した場合、部門だけでなく所属しているメンバーの動きがどのように改善するかまでイメージし、運用体制を明確にし、必要に応じて修正できるよう体制を組んでおくと良いでしょう。

2.部門間の連携はできているか?

前章で触れましたが、分業制を敷く以上、情報共有を定期的に行うプロセスを敷いておくことが成功のポイントです。部門を敢えて分けているにもかかわらず、結果として部門間の断絶が起きてしまっては本末転倒です。

毎日でも毎週でも、定期的に部門間のリーダーが部門間の連携状態について定点観測を行い、いつでも改善できるような開かれた状態であることが望ましいでしょう。

定期的に部門間のメンバーで交流を持つなど、同じ目標に向かって業務を行う仲間という意識を持てるよう、部門を超えたチームビルディングも定期的におこなうと良いかもしれません。

3.データ取得できる業務オペレーションになっているか?

The Model は KPI を分析しながら高速で PDCA を回していくことで精度が高まります。分析を行うためにはデータがなければならず、そのデータを正しくとるためには、日々の業務内容を SFA などのツールにつぶさに記録するようオペレーションを徹底する必要があります。

営業は営業活動、インサイドセールスであれば電話やメールの回数や内容など、振り返ることができる記録の残し方を業務オペレーションに落とし込みます。これを怠ると過去を振り返れず、反省も生まれず、改善ができない組織になってしまいます。反省ができるということは過去の失敗からインサイトを得られ、営業組織がより強くなるチャンスを得られることを意味します。

マーケティングからカスタマーサクセスまでメンバー全員が日々の活動記録を必ず残し、データとして活用できる状態を維持することで The Model は効果を発揮するのです。

→合わせて読みたい:インサイドセールス立ち上げに必要な6ステップ

The Model(ザモデル) 型の営業組織を成功させる解決策

The Model(ザモデル) 型の営業組織を成功させる解決策として、SET(Sales Engagement Technology)の活用が挙げられます。


SET は顧客とのコミュニケーションを効率化させ、営業活動の効果を高めるためのテクノロジーです。米国では利用がごくあたりまえとして一般化しており、日本でも少しずつ注目されてきております。

ここでは、 SET を活用しない場合と活用する場合でどのような違いが現れるか説明します。

SETを活用しない場合

The Model を取り入れている会社は、SFA や CRM、MA などのツールを導入している企業も多いですが、現場の営業担当は、ツールへのデータ入力や各部門における KPI の設定、日々の業務オペレーションなど多くのルールのもとで活動しています。

The Model を通じて営業組織を強くするという目的はあるものの、その実現は容易ではありません。データを貯め、分析し、インサイトを見つけ、各部門の連携がスムーズに行われ、高速で PDCA を回していく必要があります。ただ実際に The Model 型営業組織を機能させるためには、スキルのある人材の確保(Sales Opsやデータサイエンティスト)や、IT 担当者を通し啓蒙活動を行うなど、メンバーへの意識づけを行う必要があります。

機能させるためには相当な時間や人的リソースを要するため、非常に骨が折れる作業となります。結果として The Model を取り入れてもうまく機能せず、なかなか結果につながらない営業組織も存在していました。

SETを取り入れ、活用する場合

SET を取り入れると、部門間でうまく連携されていないデータが有機的に結びつき、活用されるようになります。
既存ツールにはすでにデータが入っており、レポートやダッシュボードでアウトプットすることはできますが、大事なことはその先のインサイトを見つけることです。

それぞれの部門間のデータがどのようにつながり、因果関係を持ち、どこに改善の余地を見つけるか、アクションにつながるインサイトを見つけることは容易ではありません。

SET であればアクションにつながるデータの利活用のサポートを行ってくれるのです。データはあるものの活用されていない組織はたくさんあり、それが営業会議や経営会議で裏付けを持ち、ボトルネックを見つけて改善のアクションに繋げる、という最も重要なことを実行できるようになります。

顧客エンゲージメントも重要

The Model 型の営業組織を成功させるためには SET に加え、顧客エンゲージメントを深めることも重要です。顧客エンゲージメントとは、一言で言うと「顧客と企業との関係値の総量」です。

ツールや仕組みを取り入れた上で今一度、最も重要な顧客目線に立つという考え方に立ち返ってみてください。
顧客の購買行動が変化したことを受け、顧客と向き合い、価値を提供すること、顧客起点で営業をすることが求められる時代背景から、注目を集めています。

まとめ

  • 本記事では取り入れる企業も増えている The Model について触れました。The Model 自体は営業を組織を分業制にし、それぞれの部門がより機能的に稼働し、最大限に営業パフォーマンスを生み出せる可能性を秘めています。
  • 一方、The Model を取り入れてもなかなか効果を発揮できない会社もあります。そうした場合 SET を採用することで、The Model が機能的に効果を発揮する可能性があるため、The Model 型組織を取り入れている企業は検討の余地があります。
  • 以上、組織論や営業プロセスについて触れましたが、忘れてはならないことは顧客です。顧客を中心として物事を考え、組織を配置し、役に立てるアプローチや営業活動を行えるか、その考え方を常に念頭に置きましょう。その上でThe Model 型の営業組織を成功させるよう取り組みましょう。

The Model の導入や、その弊害の克服を目指そうとすること以外に、顧客にとってどういった理想的な営業プロセス、自社のビジネスの特性やフェーズを考慮した上で営業の体制を導き出すことが最も重要だと言えるのではないでしょうか。

The Model に限らず、ツール活用やオペレーション設計などによる営業組織の変革にあたっては、表面的なもの以外に本質的なポイントを把握しておく必要があります。 Magic Moment では、営業組織を変革するにあたって抑えておくべきポイントをチェックリスト化した資料を無料で配布しています。今の組織の状態と照らし合わせて、自己評価するといった形でぜひご活用ください。

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