営業パーソンを受注で評価する営業組織への提言

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「受注=営業パーソンのものさし」という通念

多くの営業組織には、受注目標があります。

さらには、メンバー毎に個人目標が振り分けられ、受注件数や金額が個人の評価とひもづいています。

最も結果を残したメンバーを、トップセールスとして表彰する営業組織に属している方も多いのではないでしょうか。

試しに、Twitter で「トップセールス」と検索してみると、「〇〇社の年間売上トップセールス」・「〇年連続トップセールス」といった肩書きを持つアカウントが多数ヒットします。

また、月に1,000万円受注するAさんと、月に200万円受注するBさんが同じチームにいたら、一般的にAさんの方が営業パーソンとして優れているとみなされます。

このように、受注件数や金額は、営業パーソンの実力を評価するものさしになっています。

しかし、この考え方がもうすでに時代にそぐわないものとなっていることにお気づきでしょうか?

なぜこれまで広く受け入れられてきたのか

事業計画で売上目標が決まっているから

多くの事業計画が新規売上目標を設定します。経営層の設定した売上目標が半ばトップダウン的に営業組織に落とし込まれ、営業組織は毎回目標達成に奮闘するという構造になっている企業も多いです。

受注が重視されるビジネスモデルだったから

これまで一般的だった売り切り型モデルというのは基本的に、販売時点で利益が確定します。だからこそ販売金額や販売数が重要でした。

図1:投資回収モデル(Magic Moment作成)

数字にしやすく管理しやすいから

定量化しやすいもので管理するというのはマネジメントの基本とされます。定量化することで推移や成長が客観的に判断できるようになるからです。

つまり、自社にとって都合がよかったからであり、顧客のためではないということです。

受注偏重主義の営業組織の特徴とは

受注に囚われすぎた営業組織は、もはや受注偏重主義といえます。

受注偏重主義になっているかどうかを判断するポイントとして、受注額の推移や受注の仕方、案件の管理状況がわかりやすいです。具体的には、以下のようなことが常習化している営業組織は受注偏重主義といえるでしょう。

駆け込み受注

営業成績が確定する月末や四半期末、年末が近づくと、不連続な受注の伸びを経験したことはないでしょうか。受注目標を達成しようと強引な営業活動がなされていないかチェックするべきです。この伸びによる目標達成を歓迎するムードが社内にあるのだとしたら、さらなる注意が必要です。

不可解な値下げ

当初想定していたよりもぐっと契約金額が安くなる案件はないでしょうか。受注目標を達成するために値引き交渉になっていないかチェックするべきです。価値を提案するのではなく、価格をアピールする営業スタイルは利益率の低下に直結するほか、商材自体の価値を高めていくための開発側へのフィードバックを阻害します。

不透明な受注後の案件の状況

担当した案件が受注した後にどうなったか把握できているでしょうか。担当レベルにとどまらず、マネジメントレベルで受注までしか案件の状況を把握できていないのだとしたら、今すぐにでも把握するように変えるべきです。

なぜ受注偏重主義は思わぬ弊害を招くのか

営業組織が短期的視点で動くようになる

継続やリピートにつながらない案件が続出する

案件の継続のために、営業パーソンやカスタマーサクセスがかなりのリソースを投下し、コストがかかってしまうケースも珍しいことではありません。

結果論と片付けてしまうことはできますが、看過できない事態であることは確かです。

短期的視点で動くため、長期的にメリットがある行動が手薄になる

アクションの実行に遅れが生じやすい

受注・失注といった出来事にフォーカスした営業管理をしていると、数字としては可視化できている感覚にはなるのですが、案件の温度感や顧客の興味関心度合いの変化を見落としがちです。

すでに失注目前となったタイミングで、メンバーから報告があり、既に打つ手はないという思いをした経験はないでしょうか。

営業ノウハウの共有が進まない

”売上金額や受注件数の目標数値さえ達成していれば、やり方はそれぞれの方法に任せる”といった文化になりやすくなります。

織内に再現可能なプラクティスが蓄積されず、育成は属人的になり、新人や経験の浅いメンバーが効率的に成果を出せる要になるまでに多くの時間を必要になります。

CRM/SFA を導入しても、使われない

自分たちの業務を効率化できればいいというニーズが先行して、CRMやSFAの導入・運用をするようになってしまいがちです。

すると、顧客のデータは部門ごとに蓄積されるようになり、本来部門に関係なく存在する顧客体験を最善化することが難しくなります。

長期的な取り組みが進まないので、成長速度が遅くなる

この状態が続くと、出来上がるのは、人材を投入しないと成長が頭打ちになる労働集約型の営業組織です。

営業パーソンが各案件に使う時間は減らず、マネジメントは組織を大きくするためには、人材を増やすしかなくなります。

この先労働力不足が予想される日本で、このような営業組織であり続けることははたして得策といえるでしょうか。

受注偏重主義を克服する新たな営業組織の形

エンゲージメント型営業組織

こうした受注偏重型組織を克服するための営業組織の姿として、Magic Moment が提唱するエンゲージメント型営業組織があります。

獲得主義の組織とエンゲージメント型組織は以下のようなポイントで異なります。

  • 長期的収益の最大化
  •  LTV 重視の案件判断
  • 顧客も気づかない価値提案
  • 受注数ではなく継続案件数を評価
  • 売上に結びつく顧客との関係性を管理する

エンゲージメント型営業組織は成果を出せるのか?

エンゲージメント型営業組織が、どれほど受注偏重型の営業組織を克服した組織の形なのだとしても、成果が出せなければ元も子もありません。

Magic Moment では、受注偏重で凝り固まった営業組織をエンゲージメント型営業組織に変えていくプロダクト Magic Moment Playbook を提供しております。導入事例はこちらをご覧ください。