数字指向の組織づくりで大切なこと(株式会社 Magic Moment 村尾 祐弥/セミナーレポート )

この度、1月30日(木)に Magic Moment 初のセミナーとなる『数字指向の SaaS 経営 – 爆発的に成長する BtoB SaaS の裏側 – 』を株式会社才流と共催いたしました。

昨今、SaaS ビジネスの普及に伴い、経営者の考え方や重視すべき指標、組織の文化も変化が求められるようになりました。

本セミナーでは、SaaS ビジネスの経営者やセールス部長が見るべき指標やその改善策について、事例やノウハウを交えご紹介しました。

先日公開した株式会社才流 代表取締役 栗原 康太氏による「経営指標とマーケティング戦略の関係」に続き、第二部の内容をお伝えします。

登壇者プロフィール

株式会社Magic Moment
代表取締役 村尾 祐弥

中央大学法学部卒。毎日コムネット、マイナビを経て、Googleでは営業統括部長として代理店営業・モバイル・ダイレクトセールスを次々と立ち上げ、そのすべてのオペレーションは、グローバルへ展開・標準化される。2015年にクラウド会計ソフトfreeeに参画。インサイドセールスを参画1ヶ月で倍、設立初の予算達成、パートナーセールスの垂直立ち上げなど執行役員営業統括兼パートナー事業本部長として成長を牽引。2017年からRapyuta Robotics 執行役員ビジネス統括を経て会社経営を本格化。

営業の主語は営業担当者ではなく「顧客」になった

 私の最初のキャリアは、旅行会社で大学生向けの合宿営業でした。学生に会うために学園祭の出店を右から左まで隅々まで回ったり、名簿を見つけては電話を手に縛り付け、合宿の提案をする日々。この頃は、データやテクノロジーなんて全く無縁な営業をしていたんです。

 その後、メディア企業を経て、運よく Google に入社することができました。英語も全くできなかった私ですが、営業の期待値だけで入れてくれたんだと思います。

 入社できた喜びと、新しい広告の仕組みを提案する面白さ。これに取り憑かれたように営業していたのですが、ここで営業に対する考え方がまるっきり変わってしまいます。まさに、私にとっての過去と未来の結節点が Google でした。

 少し話は逸れますが、みなさん Google 翻訳、使ってますよね?Google 翻訳って怖いツールだと社内にいた時ずっと思っていました。悪口ではなく、本当に良い意味で怖いです。

 翻訳の精度を徹底的に高め、英語をコアとして世界中の言語を繋ぐことで、人々が何兆回も検索窓にぶつける検索クエリをビッグデータ化することができるからです。 そして Google は、全世界の夢・希望・欲をひとまとまりにして、未来を教えてくれました。

 今人々が何を求めているか、企業が何を提供したらいいのか。それらの解を導き出すことができる Google は、自社の営業手法も一般的な手法とは大きく異なっていました。人間が苦手な領域は、データや AI の力を活かそう、ということです。

 私はこの体験を通じて、これから人間に要求されることと要求されないことも、はっきりと気づいてしまいました。私が最初に入った旅行会社時代にやっていたような、名簿からしらみつぶしにアプローチしたり、増え続ける案件の管理に追われたりすることは、もはや必要ない時代になったんです。今まで自分がやってきた営業の経験が否定されたような感覚になり、怖さすら覚えていました。

 そんなある日、かつてお世話になっていた上司の誘いを受けて、クラウド会計ソフトを提供する freee に転職しました。 freee の考え方は Google ととても似ていて、ユーザーの本質的な課題は何か、それに対して何を提供できるのかを考え抜く文化がありました。

 その文化をデータが支えています。例えば freee のユーザーが使っている機能は何か、いつログインしているのか、いつ解約したのかなど、顧客を知り尽くすために必要なデータがきちんと揃っています。

 加えて、 freee の営業組織では CRM/SFA を徹底して使っています。あらゆる営業活動がデータ化されていました。先ほど述べたユーザーデータと営業活動データを繋ぐことで、どんな営業活動が顧客にとって価値となるのかがわかります。

 もはや「営業担当者がいくら売るか、何件決めるか」という企業視点で考えるのではなく、「顧客にどのような体験をしてもらうか」、そのために何をすべきなのか、ということを第一に考えることが大切なんです。そうすることで、サブスクリプションビジネスで重視すべき顧客との関係性を深めることができるようになります。

顧客の喜怒哀楽まで全てを知る

 「売り切り型からサブスク型に変わってきました」と簡単に言うこともできますが、これは実は恐ろしい流れでもあると思っています。今、お客様が何をしているのか、何が起きているのかがわかっていないと、私たちは何をすればいいのかわからず、気づけばお客様は解約しているという結果を招きます。

 データがあることは営業やマーケティングを考える前提条件ではありますが、単に CRM/SFA を導入すればいいということではありません。データから顧客のすべてを知り尽くしていないといけないんです。顧客の喜怒哀楽まで全て把握するつもりで顧客に接していく、ということですね。

 例えば、 freee には、請求書の機能がありますが、当時は支持されているかというとそうではなかった。データから、「これは使わないよ」と、顧客の意思を感じました。データが表すその顧客の声に向き合い、価値の向上に務めてきたからこそ、今では多くの顧客に使われる機能になっていると思います。

 SaaS ビジネスをスケールさせるためには、サービスに対する忠誠心をもち、継続的に購買してくれるロイヤルカスタマーを獲得し続けなければなりません。そのためには、ロイヤルカスタマーのカスタマージャーニーを分析して、それをどのように人為的に作り出せるのかを見つけ出すこと、またそれを実行できる組織を作る必要があります。

 さらにそれを、ただリソースをかけて個別対応をしてやっていくのではなく、テックタッチ、ロータッチで実現することが SaaS ビジネスをスケールさせることに繋がります。

もちろん、ビジネスによって違いはありますが。

SaaS を爆発的に伸ばすのは「戦力の集中」と「角度と確度の計算」

 私は、これまでの経験上、「 SaaS を爆発的に伸ばすには何が必要か?」という問いの答えは、「戦力の集中」と「角度と確度の計算」だと考えています。

 限られた資金や戦力で市場での競争に勝つためには、どこにどのような戦力を投入して攻めるのか、を考え抜いて勝ち筋を探さなければなりません。それが「戦力の集中」です。

 どのような角度でどのセグメントに切り込むと、リスクがどれくらい生じるのかを分析し、顧客の体験を軸に置きつつ、自分たちの戦力をどう配分するのかを決定していくのが「角度と確度の計算」になります。顧客の理想の状況から逆算して、自分たちの経験などから何が提供できるかを考えます。

 しかし、これらは現状把握があってこそのプロセスで、正確な現状把握がなければ何が提供できるのかもわかりません。現状の正確な把握と、そのための客観的評価を受け入れるオープンネスが、このような組織づくりのためには、重要だと言えます。

経営は時間軸と組織能力で考える

 これらを踏まえ、事業運営全体を考えるのには時間軸と組織能力という2つの観点が必要になります。

 時間軸は、目標に対してどのようなルートとスピードで達成を目指すかということです。例えば山があって、山頂がゴールだとします。山頂に行くまでの道のりは、直線では短く見えますが、実際に直線で行こうとすると急だし、獣道もあるでしょう。

 一方で、通り易い道を行こうとすると迂回路になって道のりは長くなってしまいます。この時、どのルートを通ってどれくらいのスピードで山頂に辿りつくか、と考えることが時間軸の意味するところです。これは事業計画においても、全く同じことが言えます。

 組織能力は、組織オペレーションと人の掛け算で考えることができます。これはどれだけのものを生み出すことができるオペレーションを、どんな能力を持った人が、何人で動かしているのかを考えるということですね。

今ある組織能力でその山を登り切れるか

 さらに具体的には、「この時間軸でこれを達成したい」という目標があるとすると、それは今ある組織能力で実現可能か、と考えるんです。この時間軸(ルートとスピード)で、その山の頂上に辿りつけるのか?メンバーは頂上にたどり着くのに十分な能力を持っているか?と。

 この問いの答えを出すには、組織能力を分解する必要があります。そのために把握するべき変数はふたつあり、ひとつはKPIで、もうひとつは組織の戦闘能力です。

 オペレーション上の変数を把握することをまずやりましょう。全ての変数を把握するために、全 KPI を要素分解することが大事です。例えば、インサイドセールスが商談数を増やすためのオペレーション上のKPIとしては、リード数・架電率・通電率・トスアップ率などが挙げられます。

 そして、組織全体の戦闘能力は、各メンバーの戦闘力と人数の掛け算で捉えることができます。この時、各メンバーの戦闘力は、スキルを定性・定量の両方の観点で評価する仕組みを作ると、把握しやすくなります。

 このように組織能力を徹底的に可視化することで、「この時間軸でこれを達成したい」という目標は、今ある組織能力で実現可能か、をより具体的に考えることができます。

 どの数字がコントロールできるのか、コントロールできる状態なのか、どうすれば目標の数値を達成できるのか、というふうに抽象度を下げながら分解していくと、目標達成のために何をすべきかが具体的に見えてきます。

 これらはデータがきちんと揃っている前提の話ですが、大半の会社はデータを揃えることができていません。一般的な会社では、組織も各ツールも分断されており、データには入力時点から抜け漏れがあることがほとんどだからです。

組織・人が変わらないと本当の変革は成し遂げられない

 HubSpot の調査によると、88%の CRM ユーザーが不正確な情報を入力し、約7割の人の CRM ユーザーが CRM 以外で情報管理しています。

 このような状況で、データサイエンティストは結局社内のデータクレンジングに時間を取られてしまいます。アメリカのデータサイエンティスト協会によると、データサイエンティストが実際にデータ分析に充てられる時間は20%しかないことが明らかになっています。 1000万の給与でサイエンティストを雇っても、200万円分しか分析してくれないんですね。バカげています。

 データから分かるように、ただ CRM/SFA を導入しても意味がありません。 CRM/SFA を導入したからと言って、費用対効果の高いデータ管理ができない。営業担当者は、目的意識が低いまま、データを入力するようマネージャーに指示されることが多いのが現状です。営業担当者からしてみれば、ひたすらにめんどくさいだけなんですね、CRM/SFA の入力なんて。

 データ入力ができず、顧客データが不正確なことも、データを突合できていないことも、全て人に起因しています。だから、組織と人が変わらないと本当の変革は成し遂げられないんです。

 そこで、変革の鍵を握るのが、人に「期待すること・しないこと」の切り分けです。

 例えばデータ入力。そもそも人がデータ入力することに期待するのではなく、ツールが自動でデータの収集・分析する仕組みを整えるほうが建設的です。実際 Sales Tech の発展によって、そういったプロセスはどんどん自動化され、どんなお客様が何を求めていて、企業は何を提供したらいいのかは AI がサジェストする時代になっています。

 では、人に期待することは何か。それは、組織のコアバリューに基づいて、顧客体験の向上を願い、 AI やツールを自分のために働かせながら一心に顧客にアプローチすることです。

 ロボットやソフトウェアのために人が動くなんて本当に本末転倒です。そうなってしまわないようにするためにも、自分たちが本質的に何をしたいのかをしっかり考えていくことが大事です。

 まずは、AI やツールの力を引き出すためにも、収集・可視化すべきデータが何かを把握することからはじめ、本質的な組織の現状把握をしていきましょう。

 


サブスクリプションビジネスの収益を拡大するためには、経営者が正しい意思決定を行えるように、適切な KPI を可視化することが大切です。

では、一体どのような KPI を設定すべきなのでしょうか?

弊社が制作した資料『サブスクリプションビジネス経営者が見るべきKPI10選』をご覧いただくことで、サブスクリプションビジネスの主要な KPI や計算式・活用方法などを学ぶことができます。ぜひご活用ください。