営業組織の DX の方法論


DXが注目されるようになった背景として、経済産業省が2018年9月7日に公表した「DXレポート」があります。

DXレポートでは、企業におけるDXの必要性と推進にあたっての方針、対応策などが詳しく記されています。 

旧態依然の基幹システムを利用し続けることが結果的に社会全体の損失になりかねないことから、DXレポート内で警鐘を鳴らしているのです。

DXレポート内では、ブラックボックス化した基幹システムを利用し続けることによって、4つの弊害が起きると指摘しています。

1,2025年には、基幹系システムを21年以上稼働している企業の割合が全体の60%を占めるようになる。

2,企業のIT予算の90%以上が、ランザビジネス(保守運用)予算に費やされ、バリューアップ(研究開発、業務効率化など)の予算が捻出できなくなる。 

3,既存システムの保守運用のためのコストがかかり、IT人材もそちらに費やされる。結果、2025年の試算としてIT人材が約43万人も不足する。

4,既存システムの老朽化やブラックボックス化に起因するトラブル、システムリスクが高まり、試算として2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が発生する。

デジタル変革に対応するための予算や人材が不足すると、国際競争力を失い、経済損失が肥大化することとなり、このような最悪のシナリオをDXレポートでは「2025年の壁」と呼んでいます。

そもそも DX とは?

そもそもDXとは、スウェーデンの大学教授エリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した「デジタル技術が人々の生活を、あらゆる面でより良い方向に変化させる」という考え方を起源とする概念です。 

教授が提唱した考えは広義のDXと呼ばれ、狭義のDXに関しては、経産省DXガイドラインが次のように定義しています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジ タル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

また、情報処理推進機構(IPA)が行った調査では、以下のように説明されています。

参照:IPA「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査https://www.ipa.go.jp/files/000073700.pdf 

AI や IoT などの先端的なデジタル技術の活用を通じて、デジタル化が進む高度な将来市場においても新たな付加価値を生み出せるよう従来のビジネスや組織を変革すること 

ビジネスシーンでのDXは、AIやIoT、ビッグデータを活用して、ビジネスモデルや業務プロセスを抜本的に改善し、生産性の工場や競争優位性を確立する効果が期待されています。 

なぜ今営業組織は DX を推進しなければならないのか?

営業組織におけるDXを推進する場合、6つの変化に対応しなければなりません。

 

1,顧客の購買行動の変化

企業の購買行動に関わる部署・人数は増え、購買プロセスが複雑化 

 

2,ビジネスモデルの変化

サブスクリプションビジネスの台頭による、所有から利用への変化 

 

3,プロダクトの複雑化

製品販売からインサイト営業への変化

 

4,販売活動の複雑化

オンライン・オフラインと複数のチャネルをシームレスに組み合わせた販売活動が求められる

 

5,ディスラプターの登場

SalesforceやAdobeなど、強いプロダクトに加えて、卓越した販売戦略を持ったディスラプターが市場を席巻し急激な成長を達成

 

6,労働力不足

これらの変化に対し、日本企業の5割以上が労働力不足を感じており、営業職不足は非常に大きな課題となっています。

昨今では訪問型営業の非効率性に着目し、生産性向上の打手としてインサイドセールスの導入に注目が集まっています。

 

顧客の購買プロセスや販売活動などの変化に対応すべく、営業組織でのDXは推進されています。

営業 DX 推進の取組み:戦略プロセス

営業組織のDXは、戦略プロセス、業務プロセス、それを支える人材プロセス全ての変革が必要となります。

現代のビジネスにおいて、企業が収集できるデータは増加しており、データの多様性も定性、定量の両面で増しています。

データ起点の経営管理は新たな常識となっており、その第一歩として標準化、最適化を行い可視化します。

そのために顧客起点かつ、リアルタイム、正確性の高いデータを適時、手軽に収集することが肝となり、データプラットフォームの構築が必要です。

 

営業戦略策定は第一歩として、戦略的セグメンテーションを行い、狙うべき対象を定めることにあります。

その上でリードタイムや行動量などからチャネルの最適化を行い、カバレッジ最適化を経てリソース配分を行うことで戦略が現場のオペレーションへと繋がっていきます。

 

データを分析することで導き出されるインサイトに基づきアクションを立案することで、ビジネスのいまを可視化し、戦略策定の精度を高めることができます。

営業 DX 推進の取組み:業務プロセス

業務プロセスでは、マーケティングからセールスまで一気通貫で描く営業プロセスとそれを支えるツールやデータが重要です。

成果を最大化する業務の基幹プロセスの構築には、顧客行動や意思決定のプロセスを念頭に置いた顧客起点の営業プロセス、オペレーションの自動化、サポートを行う各種ツールを最大限活用するためのツール最適化、膨大なデータを運用するためのPDCAオペレーション構築が必要です。

 

これらの基幹プロセスを構築することにより、マーケティングとセールスがより強固に連携することができ、総当たり的な営業スタイルから、明確にターゲットを絞り、適切な情報を提供し続け、スムーズに商談へと繋げる営業スタイルへと変革ができます。

 

基幹プロセスをベースに効率的、効果的にリードジェネレーション、ナーチャリングを行う環境を構築し、商談のクロージング、既存顧客のチャーンを防ぎ、アップセル・クロスセルに繋げる顧客体験を提供し、成果創出プロセスの精度を高めていくことが、業務プロセスのDXの根幹と言えます。

営業 DX 推進の取組み:人材プロセス

あらゆる取り組みのベースにはその企業の文化が重要な要素となります。

顧客と信頼関係を構築し、顧客との中長期的な関係性が重要視される昨今において、エンゲージメント型営業組織こそ目指すべき営業組織です。

 

顧客エンゲージメント主義の組織文化へと変革する場合、組織と個人の変革を目標実現手段で推進することが経営に求められます。

 

その組織形成のためには、自社のオペレーションの現状と理想を定め、生じたギャップを埋めるために採用や育成を変革し、新規開拓と既存顧客維持のバランスを意識したインセンティブ設計の最適化が必要です。

 

採用や育成の変革には、現在の組織のケイパビリティと、目標とする組織のケイパビリティを言語化することが重要です。

組織に必要な能力・スキルを把握しないことには、どのような人材が必要かわからず、結果的にどのような育成が必要かもわからなくなるという状況に陥ってしまうケースは少なくありません。

組織の現実と目標を明確化した上で、そのギャップを採用・育成という手段で埋めていく必要があります。

営業 DX 推進のステップ

営業組織のDXを進める上で、企業の状態に合わせた取り組みが必要です。

ただ、必ずしも全てに取り組む必要はありませんが、抑えるべきアプローチの定石は存在しています。

最も重要なのは、「顧客エンゲージメント主義」の組織を作るという経営により意思決定です。

この意思決定の後に、見える化とそのためのツール導入、オペレーション変革を進め、組織変革に取り組みます。

 

その変革のためには、見える化とそのためのツール導入・オペレーション変革が必要となり、取り組む際には正確なデータを収集し、加工し、分析・アクションを行うことが重要です。

 

下記の〜③のステップで、②→③→②→…の流れを繰り返してPDCAを回すことで、よりデータを活用した組織変革を推進できます。

 

ステップ①収集・加工の仕組みを整える

経営管理、顧客把握のために正しいデータの存在は絶対条件ですが、投資と効果の因果関係が測れる情報項目と粒度が必要です。

失敗ケースとして、不正確なデータや欠損しているデータの場合や、複数のシステムからデータ結合が不可、労力が非常にかかるケースがあります。

 

データ加工は、正しい戦略や意思決定、ビジネスの現状を課題の特定に繋がる指標を用いる可視化します。

元となるデータが入力する担当者の自由入力になってしまい加工ができない場合や、古いデータの場合には分析ができないケースもあります。

 

 

ステップ②分析

データを深掘りし、気づきを導きだします。

顧客への価値提供の視点で分析をする必要があり、自社視点での打ち手でしかない場合は改善のためのアクションがプランニングできないケースもあります。

 

ステップ③アクション

分析をして導きだした気づきを元に改善のためのアクションを検討、実行します。

施策実行後の評価が定量的に為されず、正確な施策評価が出来ないケースも多く、施策立案時に仮説と評価軸を定めておくことが重要です。

まとめ

営業組織のDXを進める上で、従来の企業文化を尊重しながらも、顧客エンゲージメント主義の組織を作るという経営による意思決定が必須です。

成功事例も増えている営業組織のDXですが、成功に繋げるための定石があります。

本記事でご紹介した内容が組織変革に取り組む際のご参考になれば幸いです。

また、Magic Moment が描く営業組織の変革の全体像に基づき、チェックリストを作成しています。

「どの領域をどう変えていくべきか」、自社に適した変革の指針を定め、デジタル化が目的化しない変革の実現の助けとなれば幸いです。

営業組織のDXチェックリスト