
成果を上げる営業ノウハウとチームに浸透させる方法
- 一部の営業員にスキルに頼った「属人化」した体制が続くと、売上につながるデータやトークスクリプトなどの定量定性のノウハウが蓄積されず、事業成長が鈍化してしまう
- 各営業員が所有するノウハウを社内で共有する仕組みを構築することで属人化の解消と営業組織の生産性向上に繋がる
- 共有すべき営業ノウハウは「見込み客を定義する方法」「顧客の課題を明確にする方法」「顧客にインサイトを提供する方法」「顧客のフォローアップをする方法」などがある
- 営業ノウハウを共有できる体制を実現するには「各営業担当者の営業成果の可視化」「トップセールスパーソンの特徴の抽出・定義」「営業方法の標準化」の3ステップですすめる
企業が安定的に成長するには「売上を作り出し、利益を出すため」に効果的な営業活動を行う必要があります。
ただし、一部の営業員にスキルに頼った「属人化」した体制が続くと、売上につながるデータやノウハウが蓄積されず、事業成長の鈍化や不安定化に繋がってしまいます。
そこで属人化を解消するために営業ノウハウを共有し、浸透させる仕組みを構築することが必要です。
本記事では営業ノウハウが必要な理由から成果を上げるノウハウの特徴、そしてそれをチームに浸透させる方法を解説します。
営業力が個人のスキル・経験に依存していると、組織としての育成の基準がわからず、事業の継続的な拡大は困難となります。組織の営業力を強化して競争優位を築くためには、営業ノウハウを共有し、各営業員の育成が重要です。
下記では、データを用いることで科学的にアプローチする人材育成への変革を解説しています。営業担当者のスキルのばらつきに課題を感じている方はぜひ確認してみてください。
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営業ノウハウが重要な理由
企業が継続的に事業成長するには、「いかに効果的な営業活動をするか」にかかっていると言っても過言ではありません。
人を雇って教育し、営業人員を揃え、PDCA を回していく…営業員1人1人のパフォーマンスを高め、強い営業組織を作る必要があります。
一方で長く営業組織を運営していると、営業員によって売上成果に差が出てきます。
合同会社 Initiatives の「営業部長300人が現在課題に感じている事」という調査によると、約48%の営業責任者が「営業担当者の能力がバラツいている」 と感じていました。
しかしながら、
- 一部の優秀な営業員が大きな売上をあげることにデメリットを感じない
- 競争力が生じ、各営業員が切磋琢磨する
- 次の営業責任者を育てたいからわかりやすい売上成果の差が合った方が良い
などと、なかには営業担当者の能力がバラツいている状況をネガティブに感じない方もいらっしゃるかと思います。
実はこの状況を放っておくことは大きな企業リスクと言えます。
例えば、一部の営業員のスキルに頼った「属人化」した体制が続くと、売上につながるデータやトークスクリプトなどの定量定性のノウハウが蓄積されません。いつまでもスキルの高い営業員に頼った状況が続きます。
また、優秀な営業担当者は社内外からの需要が大きいため、転職や異動する可能性があります。そのため、大幅な売上ダウンや生産性の低下などが発生してしまいます。
上記のような事例は起こりがちですが、緊急度が見えにくいため優先度が低いです。抜本的な対策を取らない企業も多いです。
しかし、このような状況を放置すると、企業としての安定的な売上の伸長や将来の売上予測を立てることが難しくなるため、事業成長の鈍化や不安定化に繋がってしまいます。つまり、いくら投資すれば、いくらのリターンを得られるのかを予測することも難しくなります。
そのため、「営業組織の属人化」を防ぐ必要があります。解決策としては、各営業員が所有するノウハウを社内で共有する仕組みを構築することです。
営業実績のある社員が積極的にノウハウを共有するようになれば、属人化が回避されるだけでなく、営業部門全体の成績が底上げされます。目標に対してのギャップを埋めるために、それぞれの KPI に対して貢献度の高い営業担当者の特徴を抽出すると良いでしょう。
どの営業担当者でも下限の成果を担保でき、営業の属人化の解消と組織の生産性向上に繋がります。
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4つの営業ノウハウ
本章では、売上に繋がる営業ノウハウを4つ紹介します。
見込み客を定義する
まずは「どんな顧客にアプローチするのか」を設定しましょう。
営業担当者は自社の商品やサービスに興味を抱いている顧客や自社の商品・サービスが適合する顧客を選定することで、その顧客の関心をひきつける、効果的な商談を実施することができます。
ターゲットを決める際は、企業規模や単価、業界などで市場を細かく設定する「セグメンテーション」をしましょう。
セグメンテーションを通じて自社にあった市場を把握すれば、集中的にリソースを投下することが可能となり、最小のリソースで最大の成果を得ることができます。
自社のサービスにマッチするかに加えて、各セグメントの数や課題の傾向、予算、成長率、シェアなどの要素を整理して考えてみましょう。
下の図は、セグメントの1例です。この例では、サービスと相性を顧客層ごとの成約率や継続率から導き、大企業かつ BtoB を攻めると決めています。
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顧客の課題を明確にする
セグメントを明確にし、アプローチ先を決めた後は、顧客が「どんな課題を抱えているか」を考えましょう。
顧客が抱える課題、解決策、顧客にとって自社サービスを導入する理由など顧客のペインやゲインに合わせた提案をイメージできます。
課題を明確にするには顧客の目標や計画を確認し、
- それは実現できそうなのか?
- 課題は明確なのか?本当にその課題を解決すれば目標を達成できるのか?
- 予算はあるのか
などを考えます。
また、ターゲット企業の競合会社は同様の課題を抱えている場合が多いので、事前に業界や規模ごとにその課題の傾向や市場の今後の動向などの外的環境を仮説立てまとめておくと良いでしょう。
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顧客にインサイトを提供する
ただ、顧客の課題を聞いて、それにあった提案をするのみでは選ばれる提案とはなりません。見込み顧客の多くは、複数のサプライヤーから提案を受け、コストを見て受注を決める傾向にあるからです。
また、インターネットの発達により、顧客は問い合わせをする前にあらゆる情報収集を行うことができるようになりました。
現在では、営業に接触する前に67%の購買プロセスが終了していると言われています。そのため、営業担当者は業界の最新状況から顧客が抱えている課題を分析し、売上・利益のアップ、コスト削減の方法など、顧客が気づいていないインサイトを提供することが必要不可欠です。
つまり、営業員側から課題に気付いていない顧客に対して、何が課題なのかを提示する。または、最も目標を達成できるベストプラクティスを提示することで、自社サービスを使って解決する未来を見せることができます。
顧客を解決策に導く「ソリューション営業」に関しては以下の記事で解説しています。
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顧客のフォローアップをする
顧客と接触した後は、商談でヒアリングした課題に対する解決策の提示や他の悩みごとへのアプローチなど、定期的なフォローを続けましょう。
HubSpot の調査によると、売上につながった営業活動のうち、約80%が5回以上のフォローアップをしています。
- 商談で次に提案する内容を決める
- 商談中に顕在化した顧客の課題の内容をまとめ、メールを送付する
- ネクストアプローチはなるべく商談が好ましいが、先方の状況に併せてオンラインツールも活用する
などのフォローアップを行い、一度の商談で関係性を終えるのではなく、継続的なアプローチを行うことで商品やサービスの購入に繋げます。
あわせて読みたい:限られたリードから最大の収益を引き出す「リードナーチャリング」
営業ノウハウを身につけるためには
ここからは「売上に繋がる営業ノウハウ」を組織に浸透させる方法を解説します。
各営業担当者の営業成果の可視化
まずは、各営業担当の営業成果を可視化できる体制を作りましょう。
成果を可視化することで、
- トップセールスパーソンはどのような営業活動をしているのか
- どのような営業活動が成果に結びついているのか
などの売上につながるデータやトークスクリプトなどの定量定性のノウハウがわかります。
また、成果が上がらない営業担当者の特徴とのギャップが明確となり、自社の営業組織が抱える課題の把握や理想の営業の型の理解に繋がります。
可視化する際は営業成果のような「結果のデータ」だけでなく、
- 使用している提案資料
- 商談やネクストアクションをまとめたメモ
- 顧客とのメールやり取り
- 顧客の業界や競合に関する調査データ
- 問題が発生した際の具体的なアクション
などの定性的なノウハウもデータ化しましょう。目標から逆算して必要な KPI を数値化しておくと、どれだけの成果があれば目標達成になるのかの目安を立てることができます。
あわせて読みたい:営業の成約率を高める方法とは?営業成約率が平均から上がらない原因まで徹底解説
トップセールスパーソンの特徴の抽出・定義
営業成果を可視化した後は、次にトップセールスパーソンの成果に関して分析を行いましょう。
- 架電している量
- 月間商談数
- 解約率
- 受注率
などの定量的なデータと商談で話している内容の録画データや活用している提案資料などの定性的なノウハウ、2つの観点からトップセールスパーソンの特徴を抽出します。
トップセールスパーソンの特徴を抽出する際は、営業の過程を「アポイント」「アプローチ」「商談」「クロージング」の4段階に分けましょう。
- ファーストアプローチをどのように行い、商談に繋げているのか
- 商談ではどのように顧客の課題をヒアリングしているのか
- 自社の理想な状態に持っていくために、どのように商談をコントロールしているのか
- 売上確定まで落とし込むためにどのようなフォローアップを行っているのか
営業の過程に合わせて特徴を抽出することで、営業組織が統一すべき基準や目標、取り組まなければいけない課題が明文化されます。
トップセールスパーソンの特徴が分かれば、営業担当者は目指す目標や役割を認識し、効率的な営業活動に繋がります。
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営業方法の標準化
トップセールスパーソンの特徴を抽出しただけでは効果的な営業活動の持続にはつながりません。成果に繋がるノウハウをどのように営業組織の統一基準にするのかを考え、最適な営業方法を設定することで、効果的な営業活動に繋がります。
営業活動の標準化には営業プロセスの見える化が有効です。
- 顧客体験仮説設定
- ビジネスプロセス設計
- データ設計
- オペレーション構築
- 成果の評価とオペレーションの改善
の5ステップで営業プロセスを設計し、KPI に併せてそれぞれの達成目標を設定しましょう。
そして、それぞれのフェーズで必ず PDCA を回します。検証を重ね、最適な営業活動の型を作ります。
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営業活動の型を作ることで、成績の奮わなかった営業員の成果が上がることはもちろん、次のアクションで何をすれば良いかが明確化されるので、離職率の低下にもつながります。
また、新卒人材の育成や中途人材のキャッチアップなどにかかる時間も短縮可能です。
最適化された営業の活動の型があれば、組織全体の生産性の向上を実現できます。営業ノウハウを共有し、標準化する方法は下記で詳細に解説しています。
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まとめ
本記事では、営業ノウハウが必要な理由から成果を上げる営業ノウハウの特徴、そしてそれをチームに浸透させる方法を解説しました。
営業力が個人のスキル・経験に依存していると、組織としての育成の基準がわからず、事業の継続的な拡大は困難となります。
組織の営業力を強化し競争優位を築くためには、営業ノウハウを共有し、各営業員の育成が重要なテーマです。
下記では、データを用いることで科学的にアプローチする人材育成への変革を解説しています。営業担当者のスキルのばらつきに課題を感じている方はぜひ確認してみてください。
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