電機メーカーのサブスクリプションビジネスが見るべき指標

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「所有から利用へ」のトレンドを受け、大手電機メーカーの中でもサブスクリプションビジネスを始める企業が増えています。

しかし、それらのサブスクリプションビジネスを始めた電機メーカーでは、サブスクリプションビジネスと言う少し特殊なビジネスモデルを成功させることや、事業予測をすることに課題を抱えていることがよくあります。

ここではサブスクリプションビジネス/SaaSビジネスに取り組み成長している大手電機メーカーの事例をもとに、どのような指標を用いて成功事例となったかをご紹介致します。

サブスクリプションビジネスとは

サブスクリプションビジネスは、サービスやプロダクトを利用した期間、利用量に対して料金を支払う課金提供型のビジネスモデルです。

今まではサービスやプロダクトを一回ごとに売り切るビジネスモデルが中心でしたが、売り切り型のビジネスモデルの場合、単発の売り上げは発生しますがそれを継続的な売り上げを作る事が困難でした。

 そこで昨今注目を集めているのがサブスクリプションビジネスです。

 売り切りモデルと比較される事が多く、収益の取り方の違いに注目されがちなサブスクリプションビジネスですが、その本質は収益だけではなく取得できるデータが売り切りモデルとは大きく違い、それを用いて徹底的に顧客目線に立ち継続成長する商品サービスを作る事にあります。

売り切りモデルの場合、顧客が本当に提供サービスに満足していなければ、提供企業が知らない内に使われなくなります。

サブスクリプションビジネスの場合、顧客がサービスに満足していなければ解約される事が多く、顧客の満足度が低いサービスは収益性が見込めません。

 サービスの継続的な成長を図るために取得したデータを活用し、明確な指標を立てる必要があります。

顧客との直接的な接点を作ることによりデータを取得、取得したデータを分析し、サービスや戦略のアップデートをするための裏付けとして活用する事で、売り切り型とは違いよりスピーディかつ、顧客目線に立った展開を実現させます。

 サブスクリプションビジネスと相性が良いサービスの一つにSaaS(Software as a Service)があります。従来パッケージなどからインストールが必要だったソフトウェアをインターネット越しに利用提供するサービスです。

電機メーカーの直近のB2Bサブスクリプション / SaaSビジネスの取組み例

事例1  RICOH

最初にご紹介するのはRICOHのRICOH Intelligent WorkCoreです。

こちらのサービスは新世代複合機とクラウドプラットフォーム「EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES」を介して、提供するクラウドサービスを組み合わせ、オフィスワークの自動化や省力化を推進、組織生産性を革新するソリューションです。

従来は複合機のソフトウェアアップデートに対しハードウェアの買い替えで対応していた部分を、ユーザー自身がソフトウェアアップデートする事ができる「RICOH Always Current Technology」を実装する事でサブスクリプションビジネスを構築しています。

事例2 キャノン

キャノンでは、キヤノン複合機 WG7350FM/WG7350F 定額プランを提供しています。

キヤノン複合機WG7350FMを購入しなくても、決まったカウントまで毎月定額でビジネスインクジェット複合機を利用できるサービスです。

初期コストを掛けずに導入する事ができ、プランもユーザーの利用に合わせて二つ用意されています。

事例3 パナソニック

2020年11月4日に様々な開発ニーズに応えるため、顔認証APIエンタープライズエディションと、SaaSプラットフォームの提供を開始するとプレスリリースを発表しています。

SaaSプラットフォームでは、顔認証APIと連動する「点呼・勤怠」向けアプリケーションの提供を開始します。

サブスクリプションビジネスの成功の型

サブスクリプションビジネスにおける、1つの大きな特徴をご存知でしょうか。それは、サブスクリプションには、成功の型があるということです。

 前述の通り、サブスクリプションビジネスでは顧客との接点が従来より密接となり、データを用いてサービスのアップデートが実現できますが、そのために必要な指標があります。

 Customer LifeTime Value(カスタマーライフタイムバリュー、CLV):Lifetime Value(ライフタイムバリュー、LTV)とも呼ばれる。CLVはSaaSなどのサブスクリプションビジネスにおいて1人の顧客がサービスを開始してから、解約するまで通算で見込むことができる収益のことです。CLVを算出する事で、一人の顧客を獲得した時に通算で得られる収益の期待値を指標に置く事が出来ます。

 Monthly Recurring Revenue(MRR):毎月繰り返し得られる収益の事で日本語では「月次経常収益」といいます。創業期の成長フェーズにある企業にとってはビジネスの成長率を判断できるため重要な指標とされています。MRRは以下の4種類があります。

1、New MRR:新規顧客からもたらされるMRR

2、Downgrade MRR:既存顧客で下位サービスへの変更で取引額が減った顧客から得られるMRR

3、Expansion MRR:既存顧客で上位サービスへの変更で取引額が増えた顧客から得られるMRR

4、Churn MRR:解約された顧客から得られていたMRR

 

Quick Ratio:収益構造の健全性、成長性を分析し、収益の損失と増加の比率を示す指標です。Quick Ratioは前述した4種類のMRRを用いて算出され、MRRとチャーンレート(解約率)の比率を表しているSaaS企業にとって最も重要な指標の一つとされています。

 このように、サブスクリプションビジネスでは、成功するための具体的な指標やベンチマークが判明しているため、経営判断を下しやすいという特徴があります。

規模・業界を問わずにBtoBサブスクリプションビジネスを支援してきた弊社では、サブスクリプションビジネスの成長を助けるデータ分析ガイドを公開しています。無料でダウンロードできますのでぜひご活用ください。

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サブスクリプションビジネスの成功を導く指標

前述している指標以外にもサブスクリプションビジネスにとって重要な指標はあります。

 Return On Investment(ROI):「投資収益率」や「投資利益率」の事で、行った投資でどれだけ利益を上げたのか知る指標です。数値が高ければうまく投資ができているといえます。

 Customer Acquisition Cost(CAC):「顧客獲得単価」の事で1顧客獲得に要した営業やマーケティングのトータルコストを指す指標です。なお、デジタル広告やキャンペーンなどの施策における顧客獲得単価はCPA(Cost Per Acquisition)と呼ばれています。

 Customer Churn Rate:顧客数ベースで解約率を見ていく指標です。似た指標にRevenue Churn Rateというものもあり、こちらは『収益』ベースで解約率を見ていく指標です。例えばユーザー数が少ないサービスであってもチャーンレートが低ければそのサービスの成長性は高い、という分析にも繋がります。

 Unit Economics:1人ひとりの体験に着目して事業の健全性を評価する指標です。ユニットエコノミクス自体は管理会計の手法であり、事業の経済性をユニット単位で管理するという考え方です。ユニットは顧客でもアカウントベースでも問題ないです。P/Lのように期間損益で区切るのではなく、長期的な経済性を可視化、評価していくための指標として活用されます。

 CAC Payback:顧客獲得コスト回収期間の事でCACを利益で回収するまでにかかる期間の事を指します。ベンチマークとしてCAC Paybackは12ヶ月間以内が良好と言われています。前述のユニットエコノミクスと共に顧客あたりの収益性を測る重要指標の一つです。

 Sales Velocity:営業チームの生産性を定量化し、一連の営業活動の効率性を測る指標です。営業チームの効率性を把握するだけでなく、営業活動のどこのフェーズがボトルネックとなっているかを分析し、改善策を実行するために用います。

 Net Revenue Retention(NRR):顧客の売上継続率の事で、今月獲得した売上が来年の今頃にはどの位になるのか、を示す指標です。顧客がサービスに対して支払う金額が増えたか減ったかという事を指します。仮にNRRが200%のサービスがあり、MRRが500万円だったとします。その場合、新規顧客を獲得せずとも翌年にはMRRが1000万円になる、という様にNRRが大きいほどに新規顧客を獲得せずとも成長性の見込めるサービスであると言えます。

 このようにサブスクリプションビジネス、SaaSビジネスには今までの売り切りモデルとは違い、様々な指標やベンチマークが存在しています。

成功している企業の要因として、これらの指標を明確にトラックし各KPIを達成している点があります。

指標を算出するために使うデータが、前述しているサブスクリプションビジネスならではの顧客と密接になるために得られるデータを活用しており、顧客がより満足するサービスを作るために指標を算出していきます。

まとめ

BtoC、BtoB ともに身近なビジネスモデルとして浸透しているサブスクリプションビジネス。大手電機メーカーの取り組み、その成功要因である各指標についてご紹介しました。サブスクリプションビジネスは成功事例も多く増えてきたビジネスモデルです。成功のためには明確な指標を用いて適切な戦略を立てることが重要となります。本記事から貴社のサービスやプロダクトをより顧客満足度を高めるヒントとなれば幸いです。

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