データを活用した人材育成・営業力強化


営業組織において、メンバーの育成は、競争優位を築くための基礎力となります。営業力が個人のスキル・経験に依存していると、組織としての育成の基準がわからず、事業の継続的な拡大は困難となります。

これは、営業部長が感じている、営業組織が抱える課題に関するアンケート結果です。

営業組織内の担当者の営業スキルのばらつきに課題を感じている営業部長が多いことがわかります。

日本の組織では、入社時の新人研修はしっかり行われるが、その後は現場での経験任せになっており、営業力を上げるための研修が存在しないことが多くあります。また、個々のメンバーのスキル把握すらままらなず、育成計画を立てようにも、何から手をつけたら良いか分からないことも多いのではないでしょうか。

少数精鋭で営業を行っている間は問題になりませんが、組織が拡大する中で、このような状況は、営業の属人化・ブラックボックス化に繋がり、事業拡大のネックになりかねません。

本記事では、データを活用し、効果に繋がる育成計画をたてる方法を解説します。

育成の壁にぶつかる組織の特徴

何故、人材の育成が難しいと感じるのでしょうか。その謎を紐解くため、次の1つのシンプルな問いについて考えてみてください。

Q. 今、チームに必要なのは、どのような営業人材でしょうか?

いかがでしょうか。

この問いに対し、次のような回答を得たとしましょう。


このうち、左側のような回答をする企業が、まさに、育成の壁にぶつかる組織の特徴といえるでしょう。つまり、チームに必要な能力・スキルを把握できていないため、その言語化もできていません。そのため、どのような人材が必要なのか分からず、結果、どのような育成が必要なのかも分からないという状況に陥ってしまいます。

人材育成の5つのステップ

上述の通り、メンバーを育成するためには、現在の組織のケイパビリティと、目標とする組織のケイパビリティを言語化することから始める必要があります。その上で、現実と目標のギャップを、育成という手段で埋めていきます。

具体的には、次の5つのステップで取り組みます。

  • Step 1. 営業オペレーションの可視化
  • Step 2. 各営業担当者の成果の可視化
  • Step 3. 理想的な営業担当者の特徴の抽出
  • Step 4. スキルレベルの可視化
  • Step 5. 採用・育成プロセスの改善

Step 1. 営業オペレーションの可視化

まず、最初のステップは、自社の営業プロセスにおいて、何に対して、どれくらいのリソース(量)を投下し、どの程度の効率性(質)で、どのような時間軸で動いているかを全て見える化することです。

そのためには、組織の営業が標準化されていることが必要となります。標準化されておらず、担当者によって属人化されている場合、組織として目指す姿が分からないため、まずは標準化から取り組みます。

なお、営業の標準化については、「営業組織がスケールするためになぜ「型」が必要なのか」に詳しく解説しておりますので、こちらも合わせてご覧ください。

Step 2. 各営業担当者の成果の可視化

営業オペレーションが可視化できたら、次は、そのプロセスにしたがって、各営業担当者が創出している成果をデータから可視化します。

ここで注意すべきポイントは、何を以って担当者の成果を測るかということです。

評価指標とは、組織が営業担当者に望む営業の在り方の理想を形にしたものです。どのような状態を望ましいと見なすかということは、組織の文化や方向性にも影響します。営業組織にKPIを定めているという企業も多いと思いますが、盲目的に今のKPIにて評価するのではなく、そのKPIについても、本当に組織として求める姿を表しているのか、一度、見直してみてください。

例えば、評価指標として「アクティビティ数」を定めていた企業があったとします。この時、

  • Aさん:40件 / 日の架電・メールをこなすものの、商談化率は5%程度
  • Bさん:20件 / 日しか架電・メールをこなさないものの、商談化率は30%を超える

という2名の営業担当者がいた場合、どちらが組織にとって望ましい営業の姿でしょうか。

また、契約の獲得数についても同じことが言えます。詳しくは、「営業パーソンを受注で評価する営業組織への提言」をご覧ください。

大切なポイントは、組織に本当に高い貢献をしている(新規・継続顧客を合わせて獲得総額が高い)トップセールスの特徴を見つけることです。

Step 3. 理想的な営業担当者の特徴の抽出

トップセールスの特徴が見つけられたら、それを言語化します。例えば、以下のような特徴が見つかるかもしれません。

  • 商談受注率 35%
  • 解約率 5%以下
  • 月当たりに担当可能な商談数 25件

これが、組織として求める営業担当者の理想的な状態です。この条件と照らすことで、トップセールスと低パフォーマンス人材のスキルギャップが見えてくるでしょう。

Step 4. スキルレベルの可視化

理想的な特徴が言語化できたら、営業担当者に求める水準を具体化していきます。例えば、「月当たりに担当可能な商談数」に着目しますと、

  • Lv.1:1 〜 5件
  • Lv.2:6 〜 10件
  • Lv.3:11 〜 20件
  • Lv.4:21 〜

という基準を設け、3年目までにLv.3のスキルを身に着けるというような具合です。

このとき、営業担当者に求める水準は、目標とする組織のケイパビリティと整合性を合わせる必要があります。事業目標から逆算し、1人1人の営業担当者がどの程度の営業を行うことが出来れば良いのかを明確にした上で、目標水準を定めます。

Step 5. 育成プロセスの改善

目標水準が定まり、それぞれの営業担当者の弱点もデータから見えるようになったら、弱点に合わせた育成のためのトレーニングを計画します。

ただし、一律にトレーニングを増やすだけでは効率が悪いため、営業担当者によって差が生まれやすい要素については、平準化のための仕組みづくりがポイントになってきます。

具体的には、以下のようなものが挙げられます。

オペレーションの統一

オペレーションの統一とは、営業活動の標準化であり、どんな顧客とどんな商談をするのか、どんな風にサービスを紹介するのかといったことを揃えていくことです。組織がスケールするためには、必ず達成しなければならない事項です。

詳しくは、「営業の価値を最大化するPlaybook入門ガイド」で解説しておりますので、合わせてご覧ください。

ツール・アセットの統一

ツールやアセットの統一も、すぐに取り組むことができます。例えば、提案書の形式を統一することで、提案書に含める情報を揃え、品質を一定レベル以上に担保することができます。

育成・イネーブルメントの効果

Docurated社のリサーチ「2018-2019 Sales Enablement Trends Report」によると、営業組織の育成・セールスイネーブルメントに取り組んだ企業においては、以下のような効果が生まれています。

* Docurated 2018-2019 Sales Enablement Trends Reportのデータより Magic Moment 作成

いま、営業組織は6つの大きな変化にさらされていると言われています。また、コロナ禍の影響もあり、営業のブラックボックス化がますます進んでいます。この変化をチャンスとして捉え、強い営業組織を作りあげた企業こそ、次の時代をリードしていけるのではないでしょうか。

まとめ

営業組織におけるデータを活用した育成の方法を見てきました。

強い組織をつくるためには、営業員1人1人に依存するのではなく、組織として求める姿を具体化・言語化し、そこに至るまでの道筋を描くことが大切です。

営業組織における育成について、「営業組織の育成ハンドブック」でも解説しておりますので、合わせてご覧ください。

営業組織の育成ハンドブック